英雄の死因
if三国志




はじめての三国志

menu

三国志の雑学

関羽がもらった爵位「漢寿亭侯」の深イイ話




曹操からプレゼントを貰う関羽

 

西暦200年、劉備(りゅうび)曹操(そうそう)との戦いに敗れて逃走した際、

弟分の関羽(かんう)劉備と離ればなれになってしまい、曹操に降伏しました。

曹操に厚遇されて一将として取り立てられた関羽

曹操と袁紹(えんしょう)との戦いにおいて先鋒となって戦い、

袁紹軍の大将・顔良(がんりょう)を斬りました。

 

曹操はこの功を賞して関羽漢寿亭侯(かんじゅていこう)に奉じました。

関羽が曹操からのご褒美(ほうび)を何気なく受け取ったようなこのエピソード、

三国志演義の古い版本では、

関羽が曹操からのご褒美を拒絶した美談に仕立てられています。

 

はじめての三国志全記事一覧はこちら

関連記事:関羽もメロメロ(死語)武神の心を掴んだ杜夫人は人妻!

関連記事:関羽のエア息子?関索が大活躍した理由とは

 

 

吉川英治『三国志』にもある美談

吉川英治『三国志』にもある美談

 

正史三国志でも、三国志演義のメジャーな版本のものでも、

関羽は何の抵抗もなく漢寿亭侯の爵位を受けています。

三国志演義の古い版本のものと、吉川英治さんの『三国志』では、

関羽は官印を受けるのをいったん拒んでいます。

吉川英治さんの『三国志』にどう書いてあるか見てみましょう。

 

関羽が、顔良を討ってから、曹操が彼を重んじることも、また昨日の比ではない。

「何としても、関羽の身をわが帷幕(いばく)から離すことはできない」

いよいよ誓って、彼の勲功を帝に奏し、わざわざ朝廷の鋳工(ちゅうこう)

封侯(ほうこう)の印を()させた。

それが出来上ると、彼は張遼(ちょうりょう)を使いとして、特に、関羽の手許へ持たせてやった。

「……これを、それがしに賜わるのですか」

関羽は一応、恩誼を謝したが、受けるともなく、印面の文を見ていた。

寿亭侯之印(じゅていこうのいん)と、ある。

すなわち寿亭侯に封ずという辞令である。

「お返しいたそう。お持ち帰りください」

「お受けにならんのか」

「芳誼(ほうぎ)はかたじけのうござるが」

「どうして?」

「ともあれ、これは……」

なんと説いても、関羽は受け取らない。張遼はぜひなく持ち帰って、ありのまま復命した。

曹操は、考えこんでいたが、

「印を見ぬうちに断ったか。印文を見てから辞退したのか」

「見ておりました。印の五文字をじっと……」

「では、予のあやまりであった」

曹操は、何か気づいたらしく、早速、鋳工を呼んで、印を改鋳させた。

改めてできてきた印面には、漢の一字がふえていた。

――漢寿亭侯之印(かんじゅていこうのいん)――と六文字になっていた。

ふたたびそれを張遼に持たせてやると、関羽は見て、呵々(かか)と笑った。

丞相は実によくそれがしの心事を知っておられる。

もしそれがし風情(ふぜい)の如く、ともに臣道の実を践む人だったら、

われらとも、よい義兄弟になれたろうに」

そういって、こんどは快く、印綬を受けた。

 

 

関羽は心は劉備のもとにありながらやむを得ず曹操に降伏したのであって、

曹操からのご褒美を喜々として受けるわけにはいかない。

でも官印の最初に「漢の」と書いてあれば、それは曹操からのご褒美ではなく

漢王室からのご褒美であるから心置きなく受け取れる。

こういう関羽流の筋の通し方が美談となっております。

 

また、そんな関羽の考え方を察して

「漢」の一文字を加えてあげた曹操もナイス!ということで、

ますます美談なわけであります。

 

kawa註

 

漢寿亭侯の史実の話については、こちらもどうぞ!

吉川三国志にも劣らない!曹操が関羽を漢寿亭侯に任命した理由が粋すぎる!

 

 

 

メジャーな版本・毛宗崗本でカットされた

 

この美談は、吉川英治さんが参照していた『通俗三国志(つうぞくさんごくし)』には入っていますが、

現在メジャーな三国志演義の版本である毛宗崗本(もうそうこうぼん)にはありません。

『通俗三国志』は三国志演義の古い版本のうちの李卓吾本(りたくごぼん)というものの日本語訳で、

毛宗崗本は、その李卓吾本よりも新しい版本です。

毛宗崗本を作った毛さんは、古い版本にある「漢の寿亭侯」の話をカットしたのです。

 

最強の戦略教科書『はじめての孫子の兵法』
はじめての孫子の兵法

 

美談がカットされた理由

 

「寿亭侯」の印はもらえないけど「漢の寿亭侯」ならもらえる、という態度は

関羽の一途(いちず)さが表れている素敵なエピソードだと思うのですが、

なぜカットされたのでしょうか。

毛宗崗本には下記のような注釈がついています。

 

漢寿地名、亭侯爵名。俗本此処多訛。今依古本削去。

(漢寿は地名、亭侯は爵名。俗本はこのところ多く(あやま)る。いま古本によりて削り去る)

 

なるほどー、漢寿は地名ですか。「寿亭侯」じゃないんですね。漢寿の亭侯!

ううむ、毛宗崗本、正確さはアップしているが面白さがダウンしてしまっている……。

 

虚構から生まれたニセ官印の話

玉璽

 

コーエーが出版している『三国志平話

(二階堂義弘/中川諭 訳注 1999年3月5日)を読んでいたら、

121ページ~の脚注に面白い情報が載っていました。

洪邁(こうまい)の『容斎四筆』巻八に、「寿亭侯」のニセ官印の話が書かれているそうです。

そこで紹介されている官印は四つ。

 

1.荊門の玉泉の関帝廟にある大きな寿亭侯印。

漁師が拾って、関羽の印に違いないと考えて廟に奉納したもの。

2.復州の宝相院で木を伐った時に土の中から出てきて、左蔵庫に保管されているもの。

「漢建安二十年寿亭侯印」と刻まれている。

3.邵州の黄沃という人が郡の張氏から購入したもの。「漢建安二十年寿亭侯印」と刻まれている。

4.嘉興の王仲言が持っているもの

 

これについて、洪邁は「漢寿は地名なんだから漢の文字が削られているのはおかしい」

「漢代の印にしてはサイズが大きすぎる」「侯印は一つしかないはずなのに四つもあるのはおかしい」

「関羽が漢寿亭侯に奉じられたのは建安二十年ではない」と指摘し、このように言っています。

 

後人(これ)(つく)りて以て廟に奉じて祭り、其の数必ず多し。

人間(じんかん)に流落するは()くの如きなり。

 

クスッと笑ってしまうエッセーのようにも見えますが、

『容斎四筆』は真面目な本のようなので、

洪邁さんは真面目に嘆いていたのでしょうね。

 

三国志ライター よかミカンの独り言

三国志ライター よかミカンの独り言

 

漢の寿亭侯、というのは地名を勘違いした荒唐無稽(こうとうむけい)エピソードなのですが、

それを元にしてニセ官印がいくつも作られているところを見ると、

このエピソードが人々に愛されていた様子がよく分かります。

考証的には間違いでも、お話として面白ければ残しておいてくれても

よかったんじゃないかな、という気がいたします。

 

三国志演義に考証を持ち込んだらきりがありませんからねぇ。

荒唐無稽要素を徹底的にカットしようと思ったら、

三国志演義の作品世界はきっと崩壊しますよ……。

 

はじめての三国志:全記事一覧はこちら

関連記事:【兄者を尋ねて一千里】五つの関所を破るウォンテッド関羽

関連記事:于禁と共に関羽に降伏した浩周と東里袞のその後とは?

 

赤壁の戦いを斬る!赤壁の戦いの真実
赤壁の戦い

 

よかミカン

よかミカン

投稿者の記事一覧

三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。

個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。

三国志小説『ショッケンひにほゆ』

【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】

何か一言:
皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。

妄想は妄想、偏見は偏見、とはっきり分かるように書くことが私の良心です。

読んで下さった方が こんなわけないだろうと思ってつい三国志を読み返してしまうような記事を書きたいです!

関連記事

  1. 亡くなる周瑜 周瑜の死後、その一族はどうなったの?陸遜の下で活躍する周峻や息子…
  2. 鮑信(ほうしん)とはどんな人?自らの命を犠牲にして曹操を助けた曹…
  3. 蜀 武運を誇る馬超 潼関の戦いの原因と目的と経緯について簡単に解説するよ
  4. すぐに使いたくなる!新三国志用語の意味と使い方まとめ13選
  5. 問題を解決する楊脩 楊脩(ようしゅう)は何故、曹操に殺されたの?曹植と禰衡にも愛され…
  6. 周瑜 【出身州別】三国志キャラの性格診断 第五回:荊州(けいしゅう)、…
  7. 孔明は劉備の嫁?「水魚の交わり」にはけっこう深い意味があった!
  8. 泣く子も張遼 【鬼は溺死!】容赦ない三国志の節分臘日(ろうじつ)

google検索フォーム

過去記事を検索できます

ピックアップ記事

  1. 典韋にボコボコにされる成廉
  2. 張遼 カカロットーーーー!
  3. 魯粛と周瑜が詐欺を決行
  4. 対立する西郷隆盛と大久保利通
  5. 井伊直政
  6. 陸遜
  7. 蜀の姜維

おすすめ記事

  1. 三国志補完計画・どちらが本当の三国志?正史と演義
  2. 【週間まとめ】はじめての三国志ニュース19記事【11/14〜11/20】
  3. 34話:女好きの英雄曹操、危機一髪の大失敗 悪来と呼ばれた典韋
  4. 孫堅時代に陸遜がタイムスリップをしたら孫堅にどんな助言をする?【if三国志】
  5. 名推理!三国志時代にも名裁判官が存在した!?
  6. 徐庶ってもしかしたらヤンデレだった!三国志演義でのヤンデレぶりを紹介 徐庶

三國志雑学

  1. 孔明による出師の表
  2. 山頂に陣を敷いた馬謖
“はじめての三国志150万PV" はじめての三国志コミュニティ総合トピック
“広告募集"

はじめての三国志 書籍情報


著:kawauso 価格480円
※Kindle読み放題対応

ピックアップ記事

  1. 孔子の弟子であり文学が得意な子夏
  2. 曹休
  3. チャーチル
  4. 劉備妻つかまる

おすすめ記事

【転職面接を攻略】呂布、陳琳、孔明に学ぶ面接必勝法 曹操 耳で聞いて覚える三国志 「耳で聞いて覚える三国志」をはじめました 孫権は何であれほど合肥城を狙い続けたの?理由をわかりやすく解説(後半) 陳登と劉備 劉備が徐州を譲り受けるきっかけとなったのは陳登と孔融のエピソードがあった! 三国志の時代も「人は見た目が100パーセント」だった!? 契丹小字七言絶句銅鏡 wikipedia 契丹文字ってどんな文字?遼の太祖の発案から日本人研究者による解読を紹介 武田軍の西上作戦はなぜ失敗してしまったのか?武田信玄の病が関係していた? 曹爽討伐に成功後の司馬懿の対応が神ってる

はじさん企画

“if三国志" 英雄の死因 “三国志とお金" “はじめての漢王朝" “はじめての列子" “はじめての諸子百家" “龍の少年" “読者の声" 袁術祭り
李傕祭り
帝政ローマ
広告募集
まだ漢王朝で消耗してるの?
HMR
ライフハック
君主論

ビジネス三国志
春秋戦国時代
日常生活
曹操vs信長
架空戦記
ライセンシー
北伐
呂布vs項羽
英雄の武器 編集長日記
はじめての三国志TV
“曹操孟徳" “黄巾賊" “赤壁の戦い" “THE一騎打ち" “夷陵の戦い" “kawausoのぼやき記事" “よかミカンのブラック三国志" 英雄の墓特集
“西遊記"

“三国志人物事典"

PAGE TOP