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忘年会の語源は?忘年会の雑学で使える禰衡と孔融の忘年の交わり


 

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酒を飲む曹操、劉備、孫権

 

大台風と改元(かいげん)、色々あった2019年も、はや終わろうとしていますね。そろそろ、繁華街(はんかがい)のあちこちで焼き鳥やビール片手に忘年会というシーズンになってきました。でも、忘年会って奇妙な言葉ですよね?どうして年末に年を忘れないといけないのでしょう。人によっては、忘年会どころか忘月会でもいいという人もいそうです。

 

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そんなわけで、はじめての三国志では忘年会について調べてみました。忘年会を何件も掛け持ちしている人も、自宅で家飲みの人もちょっと忘年会について勉強してみましょう。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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忘年会とは自分の年を忘れる事だった!

老荘思想(ろうそうしそう)

 

忘年会の語源とは、古く春秋戦国時代の中国へと(さかのぼ)ります。キングダムの時代の宋に生まれた思想家である荘子は、斉物論(さいぶつろん)

 

忘年忘義(ぼうねんぼうぎ) 振於無意(しんおむい)と書き記しています。

 

この意味は老いた事も忘れ、長幼の別もなく人と対等に付き合うという事です。古代の中国は儒教の時代であり、年齢が一歳違えば年長者は先生であり、世代が一つ上なら、例え年下でも叔父さんとして敬わないといけない社会でした。

 

 

それは、それで社会を円滑に動かすには必要な事ですが、こればかりでは肩が凝って仕方がないので、自分の老いも忘れ、周囲の人々と対等に付き合えば、どんなに善いだろうという意味です。自分の年齢を忘れて、俗世を忘れて、気の合う仲間と時を忘れて付き合うとは、飲み会で言えば、参加者全員のテンションが最高潮の時に近いかもです。

kawauso編集長、おとぼけさん、コーノさん、廉さん

 

忘年忘義 振於無意をこれに当てはめると確かに桃源郷ですね。この忘年亡義が日本に輸入されると、自分の老いを忘れるという意味が嫌な事があった一年を忘れるという意味に換骨奪胎される事になります。

 

三国志の嫌われ者?孔融と禰衡が結んだ忘年(ぼうねん)の交わり

孔融と禰衡

 

荘子(そうし)の時代から500年程後の紀元3世紀、世に名高い三国志の動乱時代には忘年の交わりを結んだ二人の嫌われ者?が登場します。

 

孔融と禰衡

 

それが、孔子の子孫として有名な孔融(こうゆう)、そして、この孔融に認められた禰衡(でいこう)です。

 

腐れ儒者気質な孔融

 

二人は出会った当時、孔融が五十代、禰衡は三十代と親子ほどの差がありました。しかしながら、二人は対等の呼び名である(うぬ)で呼び合っていたそうです。これは今なら、二十歳も年が離れた二人が、hey you!で呼び合うようなもの現代日本では、儒教の影響はかなり弱いとはいえ、さすがに二十歳も年が違う二人が対等な呼称で呼び合っていたら、奇異な感じを受けるでしょう。

孔融と禰衡

 

それを儒教の体現者である孔融がやってみせているというのが過激ですね。また、孔融が買っていた禰衡は確かに天才ではありますが、頭のネジが飛んでいるか、そもそも存在しないと思われる程にパンクな人物です。

曹操や許褚、荀彧の悪口を言う禰衡

 

彼は、当時飛ぶ鳥を落とす勢いの曹操(そうそう)に招かれても、バカにした態度を取り続け曹操の部下も散々にこき下ろした挙句に、全裸で太鼓を叩くような奇行を繰り返し、もてあました曹操によって荊州に飛ばされ、そこでも荊州牧の劉表(りゅうひょう)に散々に悪態をついて使ってもらえなくなります。禰衡は、最後には黄祖(こうそ)という群雄に仕えて、また罵詈雑言を吐いて処刑されました。

 

また、禰衡を忘年の友にした孔融も、曹操に仕えながら盾突きまくり、やはり、最後には(うと)まれて処刑されてしまいました。二人は命がけで権力者に抗い、共に処刑の()き目を見たバディ、まさに忘年の友でした。

 

【豆知識】後漢の時代にはビールがあった?

酒におぼれてしまった曹植

 

忘年会と言えば、乾杯(かんぱい)の音頭でとりあえずビールというのが定番です。黄酒(ホアンチュウ)が出現した事で20世紀まで姿を消していましたが、後漢の末頃までは中国にもビール風飲料があったようで醪醴(ろうれい)と呼ばれていました。5000年前の遺跡から出現した陶器の内壁に付着していた残留物を分析すると、大麦などの穀物を発酵させてビールを製造していたようです。

 

製造法は、麦、粟・大麦種子などの穀物を水洗いして発芽させて「麦芽醸造(ばくがじょうぞう)」を行い発芽した穀物と砕いた大麦種子を水に浸します。後は、穀物と水を入れた容器をオーブンで65℃で1時間過熱して糖化し、容器をラップして一週間発酵させて完成です。

 

酔っ払う関羽

 

当時は濾過(ろか)していなかったようで、粥のような半固形で、飲むときは藁のようなもので上澄みを吸っていたようですが、やや酸っぱいもののビールの味がするようです。先祖崇拝や葬式の、その他の行事で飲まれたそうなので、孔融や禰衡も飲んだかも知れません。

 

忘年会の価値

 

無礼講は本当は無礼ではない?

宴会好きな豊臣秀吉

 

さて、忘年会と言えば無礼講の一言がつきものです。宴会場では一番地位の高い上司が「今日は無礼講」と言えば、一定の羽目は外しても大目に見られるとされます。しかし、歴史を遡ると本来の無礼講とは羽目を外してもいいという意味ではないようです。

 

スサノオが草薙の剣でヤマタノオロチを倒す(古事記)

 

日本における宴会は、神事(しんじ)が起源で神と人が共に食事を摂る神人共食(しんじんきょうしょく)が始まりでした。これを直会(じきかい)と言い、神に捧げた神酒を参列者が授かる事を意味します。また、直会は礼講(れいこう)とも言い、礼講が終った後に人間だけでやる二次会のような宴会を無礼講(ぶれいこう)と区別して呼んだとも言われています。

 

平安時代頃まで貴族の宴会では、非常に細かく作法が決められていて、なかなか寛いで楽しめるというような雰囲気ではありませんでした。そこで、武家の時代になると、このような格式ばった作法を撤廃(てっぱい)したのです。

 

これが無礼講で、本来は羽目を外すのではなく煩雑な作法をなくして、(くつろ)いで宴会を楽しむという意味だったわけです。ここから考えると、無礼講と言われても無礼が許されるという意味ではなく堅くならずに、寛いで酒を飲みなさいという意味が近いとも考えられるのです。

 

kawausoの独り言

 

解説したように、日本の忘年は中国の忘年の意味を換骨奪胎(かんこつだったい)したものです。日本の忘年会は、嫌な事があった今年は騒いで忘れてしまおうという意味ですが、羽目を外しすぎて、周囲やお店に迷惑を掛けてしまう事もしばしばです。

 

朝まで三国志2017-77 kawauso

 

そこで今年は、中国式に忘年亡義してみてはいかがでしょうか?

 

kawauso編集長とおとぼけ

 

酒を飲んで食べて騒ぐのではなく、忘年会に参加している全員が自分の肩書を忘れて年齢も忘れ、全員が対等の立場になって仲良くお酒を注ぎ合い、親睦(しんぼく)を深めるのです。これなら、お酒を強要したり、記憶を無くすほどに飲む事なく、(なご)やかに一日を楽しめるのではないかと思うのですが?

 

参考文献:後漢書禰衡伝

 

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【忘年会に秘められた価値】

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kawauso編集長

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