キングダムにおいて、秦の中華統一の鍵を握ると思われる制度が六大将軍制です。
漫画においては、秦の昭襄王が生み出し、司馬錯、王騎、王齕、摎、公孫胡傷。
白起の六名が任命され他の六国にとって恐怖の対象になり、秦王政の時代には蒙武が提言して復活する事が決定しました。「でも、それは漫画の話でしょ?」と侮るなかれ、史実においても大将軍とは並みの将軍には持ちえない強大な五つの権力を持つ存在でした。
今回は、六国が思わずのけぞるほどの大将軍の五つの権力について徹底解説致します。
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この記事の目次
大将軍の権力1!独断で処刑できる
大将軍には、節鉞が皇帝や王から与えられます。
節鉞は節と鉞に別れ、節とは割符で指揮の象徴。鉞はマサカリの事で人間の首を切り落とす刑罰の象徴です。これは何を意味するかというと、皇帝を代理して自分の部下を独断で処刑できる権限を有しているのです。
この仮節越は3種類あり、使持節、持節、仮節となり使持節が最強であり、使持節を保有していると石高二千石以下の官職の部下を独断で処刑できます。二千石というのは、九卿と呼ばれる高級官僚で、万石の高給を受ける丞相などの下です。
具体的には、昌平君や昌文君のような丞相は無理ですが、その下の地位の例えば、李斯や壁将軍あたりなら部下として戦場にいた場合、独断で処刑できる事になります。
そういえば、王翦が鄴を攻略する時に、楊端和や桓騎や信や蒙恬に対し「命令に違反したら処刑する」と断言していますが、漫画では言及されていないものの、使持節鉞が秦王政から王翦に与えられているのかも知れません。王翦は大将軍ではありませんが・・・
大将軍の権力2!自分の幕僚を登用できる
大将軍は、将軍府というものを開く事が出来ます。将軍府とは何かというと、大将軍の仕事を行うスタッフの事で
①軍師、長史、司馬、従事中郎、主簿、参軍等幕僚が15名。
②占領地の行政を司る曹掾と呼ばれる役場のスタッフが10名。
③警察と憲兵の役割をする督が4名。
④雑用を司る舎人が14名。
このようにスタッフは合計で43名いますが、雑用の舎人以外は、それぞれ属官がつくので総数では100名以上になる巨大な組織になります。また、これらのスタッフは大将軍が私的に任命できるので、お気に入りの人をその地位に就ける事も可能です。
ちなみに将軍府は幕府とも言い、日本の征夷大将軍も同じ理屈で京都の天皇から権力を委譲してもらい江戸や京都、鎌倉に幕府を開いています。
大将軍府とは、小さな国と言う事も出来るでしょう。
大将軍の権力3!戦場では皇帝の命令でも無視できる
大将軍は多くの部下の将軍を従え、100名以上のスタッフを従えて敵地の奥深くまで進みます。当時は無線も電話もありませんから、一度、交戦状態になると母国との連絡が滞りなく繋がるかどうか分かりません。
それなのに実情を知らない王から、無茶な命令が次々と飛んで来たら、とても戦争どころではなくなるので、大将軍は戦場では主君の命令でも無視する事が出来るとされています。これは軍法で決まっているわけではないのですが、春秋戦国時代の斉の将軍、司馬穰苴が「将、軍に在っては、君令も受けざる所有り」という言葉を残し、それが司馬法という兵法書に記載された事から広まって不文律になりました。
実際に、キングダムから400年後の三国志の時代、魏の鄧艾が蜀を征服した後、主君の命令を待たずに、さらに呉を攻めようとして注意されると、司馬法を持ち出して将軍は君主の命令を受けない事もあると反論しています。
もちろん、これはケースbyケースで法律で保障されているわけではないので、実行しても必ず免罪されるとは決まっていません。
大将軍の権力4!最大60万人を率いる
大将軍の権限として最も大きな特徴は、最大級の兵力を率いる事が出来る点でしょう。史実でも秦王政から全権を任された王翦は60万人という秦のほぼ全ての兵力を率いて楚を滅ぼすべく出陣する事になります。主人公の信も楚に攻めこむ時には、副将の蒙恬と十万ずつで二十万の大軍を率いて攻め込んでいるので、この頃には大将軍という事です。
因みに、史実における秦のリアルな軍の役職名と引き入れる兵数は、
①屯長・・・・50人
②百長・・・・100人
③五百主・・・500人
④二五百主・・1000人
⑤曲・軍侯・・数千
⑥部・校尉・・1万人
⑦将軍/尉裨将・・数万
⑧大将軍・・・数十万
このようになっていて、やはり大将軍が最大の兵力を率いれる事が分かります。現在の信は、史実で考えると⑤の曲か軍侯という地位にある事になります。そこから⑥と⑦を経ないと⑨大将軍になれない事になっているので、今回の鄴攻めで龐煖を斬り、岳嬰を斬り、趙峩龍も斬っている信でも、まだ大将軍までは到達しないのかも知れませんね。
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