2020年のNHK大河ドラマは、3年ぶりの戦国時代劇「麒麟がくる」です。
初回の視聴率も19.1%と好調で、戦国モノの変わらぬ人気が窺えますが、時代劇初心者は、でも難しいんでしょ?と敬遠しがちかも知れません。そこで、今回は自称麒麟がくるマニアkawausoが、決して難しくない麒麟がくるの見どころを紹介します。
この記事の目次
「麒麟がくる」は和風RPGとして楽しめる
麒麟がくるは戦国時代の後期物語ですが、そんな小難しい知識がなくても楽しめます。例えば、第一話は、主人公の明智光秀が、野盗に攻めこまれた自分の郷を守る為に派手なチャンバラをした後、そこで野盗の首領が持っていた鉄砲という新兵器に興味を持ち、自分のボスである斎藤利政に、見聞を広めたいから京都に旅に出させて下さいと頼み込みますが、ドケチな利政は「お前が見聞を広めてワシになんの得がある?」と断ります。
しかし、諦めきれない光秀は、新兵器の鉄砲を手に入れる事と、利政の正室の小見の方の病気を治せる名医を探してくると追加条件を出すと利政は笑って旅に出る事を許すというシナリオになっています。
①村が野盗に襲われる
②野盗が新兵器鉄砲を使う
③鉄砲で野盗を撃退できないかと思いつく
④旅に行かせて欲しいと王に頼む
⑤条件付きで旅のOKをもらう
⑥旅先で様々な出来事を経験し成長
このように並べてみると、このストーリー仕立てはRPGと同じなのです。なので、麒麟がくるを和風RPGとして見ても、違和感なく理解できますよ。
「麒麟がくる」はホームドラマとして楽しめる
戦国時代に興味がない人でも、麒麟がくるはホームドラマの話としても成立します。例えば麒麟がくるでは、主人公の明智光秀は早くに父を亡くしシングルマザーの家庭で育ち、父は立派な武士だったという記憶の中の存在で偉大な目標です。逆に、光秀の学友の斎藤高政の父は、美濃のマムシとして極悪非道なやり方で成り上がった人物で、高政が愚鈍に見える事から父子の関係は上手く行っていません。
最終的に高政は父殺しをして美濃国主となるので、父は憧れどころか憎悪し倒すべき相手です。かと思えば、高政の異母妹である帰蝶は、マムシの父を尊敬し父と対立する高政には悪感情を持っています。
また、光秀を慕う庶民の女性である駒は、戦災孤児で両親ともに戦乱の最中で失っています。しかし、赤の他人である医師の望月東庵や、周囲の人々の助けで今は東庵の助手として、明るさを失わずに傷ついた人々を治療する事に生きがいを見出しているのです。父と子、そして母の関係、人間の普遍的な愛憎を麒麟がくるでは扱っているので、歴史が分からなくてもホームドラマとして楽しめるのです。
「麒麟がくる」は企業ドラマとしても楽しめる
一方、光秀が所属する美濃国を企業に例えると、一代で大企業を打ち立てた斎藤利政と、利政に媚びへつらいつつ会社の存続だけをひたすら願う零細明智荘の主、明智光安と光安の甥で、言いたい事は利政相手でも平然と言う新卒で有能な光秀という図式も出来上がります。
上司と甥の間で板挟みになって苦しむ光安や、上司の横暴な無茶ぶりで、毎回無理難題を押し付けられる光秀。自信満々のようでいて、実は、社内重役の派閥争いやライバル会社の尾張の織田家との対立で神経をとがらせ、消耗している社長利政など、サラリーマンの経験がある人なら身につまされるドラマが出来上がっています。
麒麟がくるは歴史マニアでも楽しめる
最近の時代劇には、現代の価値観で時代劇を撮るものが多く見受けられます。血しぶきはグロ表現だから規制とか、遊女が客を取るシーンは女性差別だからダメとか、奴隷を映してはいけないとか、中には、戦国時代の登場人物が21世紀の価値観で「人を殺すのは嫌だ」と言い出すものまであり、さすがに見る気が失せます。
もちろん、当時の人間が好んで人を殺していたわけではありませんが、殺さなければ殺される冷酷な現実の前には、可哀想なんて言ってられないというのが本音だったのです。しかし、麒麟がくるでは、出来る限り戦国時代の雰囲気を再現しようと務めています。光秀が人を斬れば血がはねますし、当時は当たり前だった人身売買や、売春婦である遊女、薄汚れた街並みなどを、史料で分かる範囲で再現しています。
それから、これまでの定番だった分かりやすい草原での合戦ではなく、実際には最も多かった市街地での戦いや、掻楯で矢を防いだり、えい!えいと掛け声を出しながら歩調を合わせて進む槍隊の姿。城内からは投石機や、油を染み込ませて火をつけた俵を敵陣に転がすなど、多種多様な当時の戦い方を表現しています。
光秀が獲った敵の首を白い布に包んで腰に下げている描写もちゃんと再現されており、ただの綺麗で派手なチャンバラではない、生々しさを残しています。歴史マニアとしては、昨今の予算不足とポリコレで温くなった時代劇ではない、歴史マニアも満足できる尖った戦国時代劇になっていると思います。
麒麟がくるは、多面的な楽しみ方が出来る
このように麒麟がくるは、とっつきにくい時代劇である事を考慮し、RPG要素、ホームドラマ要素、企業ドラマ要素、正確な歴史考証など、戦国マニアもそうでない人も、楽しめる内容になっていますので、おススメです。