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貂蝉の扱い
孔子の言葉に「女子と小人は養い難し」とあるように「女子と小人とは扱いにくいものである。大事にすればつけあがるし、よそよそしくすれば恨みに思う」という一文があります。このため古代中国の思想の中では「女性がでしゃばるのは良くない」という思想があったと思われます。
このため貂蝉は董卓暗殺のキーパーソンとして出てくるも、その後は描かれないまま……つまりそれ以上出しゃばらないようにされてしまったのでは?と思います。
羅貫中がそう思ったかもしれませんし、そうした方が読者の反感をかわないと判断したのかは難しいところですが、そういった影響から貂蝉があんな消化不良な最期を迎えたのではないかと想像しますね。
吉川三国志の貂蝉
しかし読者の方には「あれ?貂蝉って自害しなかった?」と思っている人もいるでしょう。ここで少し日本の三国志演義、吉川三国志の話をしましょう。吉川三国志では本家三国志演義とは違い、董卓暗殺が叶った貂蝉は自害します。
これに関しては董卓と呂布を仲違いさせて暗殺させた後、そのまま呂布の愛妾になるようでは美女としてのイメージが悪いと思って自害する演出にしたのでは?と思っています。
実際に董卓から呂布、曹操と相手を変えて生き永らえる貂蝉を関羽が成敗する講談話などもあるように、悪女としてではなく、あくまで賢い女性として描くならば最期は……というイメージの問題でしょうね。四大美女としてのイメージを悪くしないようにするための措置だと思うのですが、個人的には悪女としての貂蝉ももっと見てみたい……。
貂蝉の良さ
あくまで筆者の個人的な感想ですが、貂蝉という存在が人気があるのは「架空の人物」であるからだと思います。実在の人物はイメージがあり、そのイメージから脱却するのは難しい所です。
しかし貂蝉などはあくまで架空、伝承も数多くあり、どこに本質があるかはその作者次第。だからこそ呂布との愛に生きる貂蝉がいても良いし、悪女として男たちを手玉に取り続ける貂蝉もまたいても良いでしょう。そういった面こそ貂蝉の良さであり、魅力であると思います。
三国志ライター センのひとりごと
さて最初に戻りますが、個人的には呂布と貂蝉が愛に芽生えたストーリーがあっても良いと思います。しかしそれならその一方で、呂布の妻である厳氏の立場はどうなるんだと思う気持ちもあるんですよね。この感情は自分でもおかしなこととは思いますが、それもまた三国志の面白さ。
色んな解釈があっても良いし、色んな数の三国志があっても良い。その結果受け入れられるものもあり、受け入れにくいものもある。三国志、面白いなぁ。
文:セン
参考文献:魏書呂布伝 三国志演義 三国志平話
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