貞観政要は唐の太宗と四十五名の重臣との政治についての問答を記録した書物です。
唐の太宗李世民は即位後、政治を安定させる為、厳しく自分を律し質素倹約に努め多くの賢人を集めて配下とし「貞観の治」と呼ばれる理想的な治世を実現しました。
貞観政要は、そんな哲人太宗と、太宗に選ばれた重臣45人による対話集であり、人の上に立つ人間の必須教材として1300年以上も読み継がれてきたのです。では、今回は、そんな貞観政要の具体的な内容を紹介しましょう。
この記事の目次
上司は人間として偉いわけではない
貞観政要では、上司も部下も組織を運営するための機能のひとつにすぎないと説きます。皇帝には皇帝の役割、家臣には家臣の役割があるだけで、皇帝が家臣より人間的に優れているわけではありません。
人間には頭や手足がありますが、必ずしも頭が偉いわけではなく、頭には頭、手足には手足の役割があり、それぞれが十分に機能する事で、より良く生きていく事が出来ます。これは組織も同じです。
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上司の役割とは?
では、上司の役割とは何でしょうか?
ひとことで言えば上司の役割は組織をまとめ、方向性を示すという事です。
社会の変化を見極め、その変化の中で組織が繁栄していくにはどうすべきかを考え、適材適所に人材を配置して、権限を与えて分業し組織のパフォーマンスを上げる。それが上司の機能であると言えます。
そしてここは大事な事ですが、一度権限を与えたら、上司は部下を信頼して任せきるというのが重要です。多くの上司は、権限を与えてみたものの、部下の仕事が危なっかしく見え、思わず、ここはこうしなさいとアドバイスしたくなるものです。
しかし、それはやっていては、部下は育たないし責任を自覚する事も出来ません。結局、全ての業務を上司が1人でやってしまい、組織はワンマン化するか上司が疲れ果てて疲弊し、それ以上業績を伸ばせないでしょう。
部下も最初は失敗したり、うまく出来ないかも知れませんが、それを飲み込んで部下を育成し、組織を大きくするのが上司の役割なのです。
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上司は我慢しないといけない
上司は人事権に象徴される強い権限を持っています。そんな上司の最上位である皇帝ともなれば、その気になれば欲しいモノはなんでも手に入れる事が出来ました。しかし、上司が人事権を盾にわがまま放題したら組織はどうなるでしょうか?
太宗李世民は貞観政要で「皇帝が、わがまま放題に振る舞えば、まともな人材は次々に辞めていき、上司におべっかを使う無能な部下ばかりが残り、最期には王朝が崩壊する」として、君主は、第一に欲望を抑えるべきだと力説します。
つまり、上司になったらわがままを言わず、部下よりも我慢しないといけません。人間は大きな権力を持てば、それを振り回したくなるものですが、それをグッと堪えてすべてにおいて節度を保ち、強い権限を正しく使わないといけないのです。
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まず自分に厳しくし、その上でアドバイスを受ける
世の中には自身の謙虚さをアピールして「私に間違いがあったら遠慮なく言ってほしい」という上司は多いですが、そんな上司に限って、実際、間違いを部下に指摘されると反抗されたと思って感情的な対応をする人が多いものです。このような上司は太宗の言葉を正しく理解していないかも知れません。
太宗は、自分が間違っていたら指摘してくれ、ではなく、自分も間違いがないように努力するが、それでも間違いがあれば遠慮なく指摘してくれと言っているのです。
まず、自分に厳しくする事を忘れると、俺が間違えるわけがないと思い込んで仕事する事になり、部下に間違いを指摘されると俺が間違えるもんか!と感情的になってしまうのです。気をつけましょう。
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