無能?有能?
そんなこんななエピソード、どうでしたでしょうか。特に名士ということでもなく、周囲に信頼されて慕われているということもなく、軍略や政策に明るかった訳でもない呉質。しかし曹丕に的確なアドバイスをして、一説にはあの楊脩を出し抜いたともいえる話も残されています。
確かに陳羣に嫌がらせをしたエピソードなどはあまりに小物が過ぎますが……もしかしたらこれは、ある種の才能であったとも思うのです。
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始皇帝と王翦
嘗て、始皇帝の配下に王センという人物がいました。王翦は楚との戦いに秦のほぼ全軍を任されて戦いに赴きます。
そこで度々王センから手紙が届きました。
「勝ったらあれを下さい」
「ご褒美にあれも下さい」
「あ、あのご褒美忘れないで下さいね!」
褒美自体は容易いことでしたが、流石に「欲が過ぎる」と部下がこれを嗜めます。しかし王センは「今、自分は疑われている。その疑いを晴らすためにも、こうやって褒美のことで頭が一杯であると示している」
敢えて小物臭漂う人物を装うことで、王センは天寿を全うできたと言われています。呉質の全てが演技だったとは言いませんが、そういう一面が曹丕からすれば信頼できて、付き合いやすかったのかもしれませんね。
三国志ライター センのひとりごと
曹丕の四友、司馬懿や陳羣は野心のあるなしはともかく、呉質とは色々な面で「色が違う」のです。そういうところが、気の置けない友人として優れていたのでしょう。
呉質はどこまで考えていたかは分かりません。それでもこういう人物も一人は傍に置いておきたい……そう考えると、皇帝って大変なんだな……と思った筆者でした。
どぼん。
参考文献:魏書王粲伝付属呉質伝 晋書宣帝紀 世語
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