西遊記の目的は、西に、つまりインドまで行って経典を持って帰ること。もちろん距離だけでも凄まじいもので、しかも合間合間に妖怪たちも襲ってくるという苦難の旅です。
人間である三蔵法師には大変すぎるということで、お供に孫悟空たちが付けられました。今回はこの孫悟空の主とも言える三蔵法師、彼の西遊記における人格形成についてちょっと考えたいと思います。
この記事の目次
父を船頭に殺され生まれてすぐ生母に河に流される
西遊記における三蔵法師は、実は出生がかなり悲しいものとなっています。
元々、三蔵法師である玄奘の父親は若くして科挙に受かるほどの才覚の持ち主でした。そのため江州長官に抜擢され、妻と共に船で任地に向かう最中、悪心を起こした船頭に殺されてしまいます。その後、船頭は玄奘の父に成り代わり、妻を無理やり自分のものとして任地に向かいました。
その後、身重だった妻は夫の子を産みます。しかしこのままでは殺されてしまうと思った彼女は、我が子の運命を神仏に託して木片に乗せて川に流します。この赤ん坊が、成長して玄奘、三蔵法師となるのでした。
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真実を知り皇帝に直訴!船頭を生贄にして父の仇を討つ
成長した玄奘は自身の生い立ちを知り、母親を救い出して父親の敵を討とうと決意。そして色々あって皇帝に直訴!行動力!
かくして犯人一味は捕まって処刑、そして何と父への慰めとして生贄にまでしてしまいます。その後、何だかんだあって父親は生き返り、そして母親は今までのことを恥じて自殺……そして玄奘はその後も仏道修行を続けるのでした。
何とも……何とも波瀾万丈というか、西遊記始まる前に濃いストーリーがお出しされているものですね。
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一転して皇帝の命令で天竺に向かう旅へ
その後、皇帝は一度死んで生き返るという不思議な体験をします。身代わりに死んでしまった妹、そして冥途の道で世話になった夫婦、彼らへの返礼のためにお寺の建立などを行いますが、これがきっかけで仏道にのめり込むようになります。
そして妹の初七日の法会に菩薩様が現れ、死者を苦難から救う唯一の大乗仏教三蔵についての教えを受けた皇帝は、天竺に誰かを使いにやって三蔵真経を入手することを決意。これに志願した玄奘は、以後三蔵と名乗り、旅へと繰り出すのでした。
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果敢な性格だった三蔵法師様
さて、西遊記の旅に至るまでの三蔵法師。見て頂ければ分かるように、幼い頃から割と壮絶な運命を背負っています。また行動力もあり、父の敵を討つべく動いたり、母親を取り戻そうと一念発起したり、中々に雄々しい性格。そして危険がつきものである天竺の旅へと至る決意も、また剛胆さを感じさせますね。
ですが、これが不思議なことに西へ至る旅が始まると形を潜めます。
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