三国志の英雄の一人にして人気も高いキャラクターが、曹操。皆さんは、その曹操の後継者候補といえば、誰を思い出しますか?
「そりゃまず、誰でも思い出すのは、史実で曹操の後を継いだ曹丕」というのが、ごもっともなご意見。では、その次、といえば?
三国志ファンとなると、次に浮かぶ名前は、おそらく曹植でしょう。
というのも曹植は史実でも、曹操の寵愛を受けていたという理由で、曹丕から警戒された「後継争いライバル」。けっきょく曹植本人が曹丕に恭順の姿勢を見せ収まりましたが、それまでは周囲からも、曹丕に対抗し得る有力候補と認識されていたようです。
では・・・三番目は?三国志ファンならばこの辺りで、あの人物を思い出すのではないでしょうか?そうです。曹操の四男の、曹彰です。
この曹彰、実際には曹操の後継者を名乗れる可能性は、どれくらいあったのでしょうか?そこで今回は、まさかの「曹彰が継承者」展開があり得たかを、妄想してみましょう!
この記事の目次
曹彰とはどんな人物だったの?
とはいえ、三国志全体の中では出番が少なめの曹彰。イフ世界を考える前に、どんな人物だったのか、『正史三国志』をもとにおさらいしてみましょう!
まず曹彰は、父である曹操に対しても「自分は学問よりも、野で軍を指揮する能力を高めたい!」と意気盛んなことを言う息子だったようです。そんな話を聞いていた曹操も、力試しをさせようと思ったのか、北方の異民族が魏国を脅かした際、曹彰を討伐軍の指揮官に任命しています。
ここでの曹彰の抜擢は、結果としては、大成功でした。曹彰は自ら先頭に立って戦う姿勢を見せ、猛将タイプとしてのリーダーシップをとり、さらに兵士たちへの褒美も実に気前が良かった模様。討伐作戦は成功した上に、兵士たちからも大人気だったようです。「やはり曹彰は軍人が向いているな」と、父の曹操も良好な結果に満足したことでしょう。
ただしこの曹彰、その後の人生はあまり幸せなものではありませんでした。
曹操が亡くなった時、彼も当然、葬儀に駆けつけたのですが、なぜか十万もの手勢を率いて参上し、しかも何を思ったのか、到着するや否や「(曹操の後継者の証となる)印綬というのは、どこにあるんだ?」と、まるで自身が後継者であると決まっているかのような、素っ頓狂な質問をして、大顰蹙を買っています。
曹操の後継者は、先述した通り、曹丕になるわけですが、曹丕はこの時の曹彰の言動に不信感を抱き、以後、曹彰を辺境の地に追いやり、重要な仕事も役職も与えずに放置しました。そんな不遇も影響してか、三十代という若さで、曹彰は病死してしまうのです。
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曹操の後継者になるにはどうにも心配ないくつかの理由
このように整理してみると、どうしても、気になる点がありますよね。曹操が死んだ際、曹彰はなるほど、十万の手勢を率いて現れたり、王の印綬の場所を確認しようとしたり、まるで後継者になる気まんまんのように見えます。ですが曹丕が後継者に決まったと知ると、あっけなく引き連れてきた軍勢も引っ込めています。
このあっけない態度は一体?曹彰はどうやら本気で自分が後継者になれると(勝手に)思っていただけの天然君なのか?あるいは、単に空気が読めない言動を思い付きでしてしまう世間知らず君だったのか?ともかく、言ってはなんですが「軽率」な印象を受けてしまいます。この辺りを見ると、とうてい王や、まして皇帝となって、劉備や孫権と対抗できる深謀があるとは思えません。
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曹彰大出世のためにはトップクラスの軍師が必要!となると?
しかし、せっかく今回は曹彰の為のイフ世界を妄想する回と決めているわけなので、もう少し、がんばってみましょう。そんな曹彰が曹操の後継として、魏王になることは、絶対に不可能なのでしょうか?
古代中国史を見ると、そうでもない、と思います。古代中国には、本人の能力はいまいちだが、その人柄の良さで民衆を味方にした上に、片腕に超有能な軍師をアドバイザーとして控えさせたことで、王や皇帝の地位に上り詰めたケースもあり得るからです。
兵士や民衆の人気を取る点でいえば、異民族討伐の際に兵士の人気を得ていた曹彰、そういうのはけっこう得意そうですよね。となると必要なのは、優秀な軍師です。候補が一人います。
曹操時代に魏の陣営に加わっていながらも、いろいろな理由で才能を発揮できなくなっていた名軍師が。かつて劉備に仕えたこともある、徐庶元直です!ただし、いくら人材として埋もれていたとはいえ、
曹彰がこの徐庶を「三顧の礼」で迎え、軍師として雇いたいなら、絶対に必要な条件があります。
徐庶が心の底でずっと敬慕しているのは、劉備。となると「劉備との良き同盟者になる」という条件を出さないと、徐庶の心は動かないでしょう!
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まとめ:曹彰と徐庶のコンビが魏を引き裂く!
曹彰が曹操の後継者になる方法を考えているうちに、途方もない話に膨れ上がってきました。曹彰が徐庶の忠誠心を手に入れ片腕として働かせるためには、劉備に有利になる勢力として独立する必要がある、つまり、魏を分裂させ劉備と結び、曹丕と対峙するしかない!
そのシナリオは、こうなります。
・曹彰は、曹丕よりも自分こそが曹操の後継者にふさわしいと宣言し、徐庶を軍師に、手飼いの兵士を連れて大反乱を起こす
・徐庶から連絡を入れさせ、早々に劉備と同盟
・イデオロギーとしては、漢王朝の復興を掲げる。この目的のために曹丕から献帝を奪取する!
・あとはとことん蜀と連携を取りつつ行動する
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まさかの、魏の大分裂!ここまでやれば、まさかまさかの逆転、曹丕を辺境に押し出し、曹彰が正式な魏王を名乗ることも可能かもしれません。そのあとは?
当然、漢王朝復興を掲げていた以上、劉備の蜀に何らかの形で合併されてしまう運命でしょう。ですが、史実ではどうせ曹丕に憤死にまで追いやられた曹彰、そんな史実の運命を吹き飛ばす、これほどの大暴れをするイフシナリオがあってもよいと思ったのですが、いかがでしょうか?
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