皆様、二年ほど前の朝ドラ、「虎に翼」は覚えていらっしゃるでしょうか。こちらは慣用句で、意味は「鬼に金棒」と同じく、強いものが更に強くなることを表しているのだとか。とは言えこちらのタイトルを初めて聞いた時には筆者などは
「ええ!?水滸伝を朝ドラで!!」
とか思ったのはいい思い出……ではないですけど、今回は虎に翼の例えもあります水滸伝壱百八星が一人、挿翅虎こと雷横のお話をしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
この記事の目次
- 梁山泊第二十五位「挿翅虎」雷横とは何者か?
- 「挿翅虎(そうしこ)」のあだ名の由来と意味
- 役人時代の活躍:都頭としての実力と性格
- 梁山泊における序列と歩兵軍頭領としての役割
- 雷横の武勇と武器
- 劉唐との一騎打ちで見せた「赤髪鬼」に劣らぬ武芸
- 雷横の人生を大きく変えた「白秀英殺害事件」巡業芸人
- 白秀英との予期せぬトラブル
- 役人の矜持と母親への孝心が生んだ悲劇
- 朱仝(しゅどう)との固い絆と「義」の物語
- 盟友・朱仝が見せた命がけの逃走支援~恩返しと葛藤
- 朱仝を梁山泊へ引き込む際の苦悩
- 水滸伝屈指のコンビ「朱仝と雷横」の対比
- 梁山泊軍としての活躍と数々の軍功
- 雷横による呼延灼・関勝ら猛将たちとの戦い
- 歩兵軍の要として支えた雷横の存在
- 雷横の壮絶な最期:戦死
- 宿敵・司行方との一騎打ちと散り際
- 雷横の人物像を考察:短気だが一本気な「義の男」
- 母親を想う「孝」の心と、裏目に出た「短気」
- 他の好漢と比較した雷横の魅力とは?
- 雷横が読者に愛される「人間臭さ」の理由
- 三国志ライター センのひとりごと
梁山泊第二十五位「挿翅虎」雷横とは何者か?
雷横は梁山泊第二十五位の好漢にして、天退星の生まれ変わりです。
「挿翅虎(そうしこ)」のあだ名の由来と意味
あだ名である插翅虎は、羽の生えた虎のことを意味します。これは雷横が5、6mもある広い川を跳び越えることができたことからついたあだ名です。
役人時代の活躍:都頭としての実力と性格
元々は同じく後々に梁山泊入りする朱仝とともに鄆城県の捕盗係の都頭をしていました。ただそれ以前は色々な職に就いており、博打打もする人物で、性格は少々短気な面もあり、仕事の面では温厚で機転が利く朱仝が手綱を引いていた所があります。ただ義侠心は強く、晁蓋や宋江を助けたこともあり、朴刀の使い手です。
梁山泊における序列と歩兵軍頭領としての役割
後に歩兵軍頭領となりますが、活躍もするし敵にやられたりもする、ちょっと万夫不当の豪傑、とまではいかなり等身大のキャラクターと言えるのではないでしょうか。
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雷横の武勇と武器
とは言っても、雷横の武勇は梁山泊の中ではやや等身大、というだけであり、決して常人と比べて見劣りするようなものではありません。その力量が良く分かるのが、同じく朴刀の使い手であり、達人とも呼ばれる「赤髪鬼」劉唐。
劉唐との一騎打ちで見せた「赤髪鬼」に劣らぬ武芸
劉唐は槍の名手でもあるものの、朴刀の達人で「百人相手にしても引けを取らない」とまで言われた人物です。この劉唐と雷横は、まだ雷横が役人をしていた時に戦ったことがあり、その際に五十打ち合っても決着がつかないほどに勝負は拮抗していました。呉用先生のストップが入って中断しなければどうなっていたか、かなり気になる所ですが、次に雷横が梁山泊入りする事件について話していきましょう。
雷横の人生を大きく変えた「白秀英殺害事件」巡業芸人
さて朱仝とともに晁蓋たちの逃亡を助けるなどしていたものの、梁山泊入りするのは雷横自身が犯罪者となり、逃亡者となってしまってから。ではなぜ雷横は「逃亡者」となってしまったのか?ですが、それには小さな悲劇が重なり合った結果の物語。或る時に仕事の帰り道で梁山泊に追いはぎされかかったことがきっかけで梁山泊の宴に招かれる雷横、この時に宋江から梁山泊入りを勧められるも、年老いた母親がいるからとこれを断ります(フラグ)。
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白秀英との予期せぬトラブル
その後、知人に誘われ芝居小屋に行くと、白秀英という美女が素晴らしい歌を披露しました。この時に父親の白玉喬に促され、白秀英は羽振りが良さそうな人物の前にお盆をもって回ります。まあ、簡単に言うとチップをはずんでくれ、という行為ですが、誰の運が悪かったのか、この日の雷横は素寒貧。また明日来て払うから、というけれども白秀英は諦めない、そこで白玉喬が「田舎者は相手にするな」と言ったことに怒った雷横はこれを殴り倒し、周囲に宥められて帰宅します。
役人の矜持と母親への孝心が生んだ悲劇
しかし収まらないのが白秀英、彼女は新任の知県の情婦でもあったので、訴えられた雷横は捕縛され、芝居小屋の前に晒し者にされることに。これを見た雷横の母親は涙し、させたのが白秀英と知ると彼女を罵り始めます。すると白秀英も負けてはおらず、雷横の前で彼の母親を滅多打ちし……雷横に殴り殺されることとなり、雷横は再び捕縛されることとなりました。
朱仝(しゅどう)との固い絆と「義」の物語
さてこの頃朱仝は軍官になっており、捕まった雷横と牢で再会することとなります。雷横を救おうと朱仝はあれこれと働きかけるも、雷横の死刑は覆すことはできず、護送責任者に朱仝が選ばれることに。
盟友・朱仝が見せた命がけの逃走支援~恩返しと葛藤
ここで朱仝は護送の最中、雷横に母親を連れて逃げるように言い、朱仝が責任を被るも雷横は母親を連れて無事に逃げ、梁山泊入りを果たします。ここまでを見ると雷横と朱仝の熱い友情と義の物語なのですが。よりにもよってこの話を梁山泊でしてしまったことで朱仝も梁山泊に入れようぜ!という話がスタート。
朱仝を梁山泊へ引き込む際の苦悩
朱仝は雷横を逃がした責任から流罪にされていましたが、流罪先の上司に人柄を気に入られ、その真名息子を預けられるほどに上手くやっていました。なのでまあ……梁山泊入りは断るのですが……ここで水滸伝屈指の凄惨なやり方で朱仝は梁山泊入りさせられることに……。
水滸伝屈指のコンビ「朱仝と雷横」の対比
喧嘩っ早く少し機転はきかないものの義侠心に溢れた雷横、そして頭の回転が早く真面目で同じく義侠心に溢れる朱仝、どこか三国志演義での張飛と関羽を思わせる二人ですが、母親を連れて梁山泊入りできた雷横と、大事な人を奪われて梁山泊入りせざるを得ない状態に追い込まれた朱仝。この辺り、もう少しどうにか話がならなかったのかと思ってしまうのは読者目線すぎでしょうか。
梁山泊軍としての活躍と数々の軍功
さて、色々あり過ぎましたが朱仝と共に梁山泊入りをすることになった雷横。彼はそこから様々な戦いに参加していきます。特に名を挙げたのは、公孫勝の援護もあったとはいえ、梁山泊が苦戦した高廉を打ち取った戦いでしょうか。
雷横による呼延灼・関勝ら猛将たちとの戦い
また呼延灼率いる朝廷軍との戦いでは負傷するも、連環馬を打ち破るべく鈎鎌鎗という武器を製造したのも、元鍛冶屋をしていた経験を活かしての雷横の働きです。
歩兵軍の要として支えた雷横の存在
北京攻撃軍の際には敵将、張清の石礫によって負傷して関勝に救出されるも、その後の朝廷との戦いでは朱仝と共に中央の守りに付くなど、いくつもの戦いに参加しています。個人的には決して圧倒的な強さを誇る訳ではありませんが、要所要所でしっかり活躍して名を挙げているのが雷横の好印象な所です。しかし、この後の戦いで雷横と朱仝の運命は分かれます。
雷横の壮絶な最期:戦死
梁山泊大ファンからすれば悪夢のような方臘討伐戦が始まり、この中で雷横は戦死することになりました。相対したのは方臘配下の将、司行方。この司行方との一騎打ちで、三十余り打ち合うも、雷横は馬から斬りおとされ戦死することになり、水滸伝から退場します。
宿敵・司行方との一騎打ちと散り際
その後、宋江は夢に見た無念を訴えてきた人物が雷横出会ったと悟って涙するシーンがありますが、個人的にここで雷横が退場するのかと驚いた記憶があります。朱仝が後々まで生きて大出世することを考えると、孝行者で悪人ではないものの、さりとて子殺しを容認したのはよろしくなかったのかな……と考えてしまいますね。しかし無念ではあったものの、戦死ではあったのは武将と生きた者としては幸いではあったのでしょうか……。
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雷横の人物像を考察:短気だが一本気な「義の男」
さて、雷横のまとめなのですが、個人的にはもう少し生きて活躍しても良かったのではと惜しむ人物です。義理人情に厚く、しかし短気、孝行心ではあるもののその行為から絶体絶命に追い込まれてしまう……この辺りのキャラクターは、朱然と並んで関羽と張飛を思い起こさせますね。
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母親を想う「孝」の心と、裏目に出た「短気」
林冲が張飛の要素がありますが、三国志演義張飛イメージなら雷横の方が強いのではないでしょうか。また地頭が悪いわけではないものの、ちょっと機転がきかないのも、朱仝との相棒感があって良いと思います。
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他の好漢と比較した雷横の魅力とは?
朱仝が水滸伝の登場人物らしからぬほどの好人物ですので、その結果、雷横も「欠点はあるものの、人間性に及ぶほどではない」ほどの悪要素しか含んでおらず、それがまた人間臭さを出していて、好いキャラクターとして愛されているのではないでしょうか。
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雷横が読者に愛される「人間臭さ」の理由
ただ惜しむらくは、その朱仝が梁山泊入りをする時のエピソード……こちら何度も繰り返して申し訳ないのですが、昔馴染みならこんなやり方はどうにかとめてやれなかったのか……とマイナスイメージがばっちり残っているのが惜しい所でしょうか。穿った見方ですが、それこそが雷横が朱仝と違い「悪星」の定めから逃げられなかった由縁かな、と愚考する次第でありました。
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三国志ライター センのひとりごと
雷横自身は決して悪人とまで言い切れるキャラクターではなく、寧ろ当初は少し頭が回らず短気な面はあるものの、義侠心に溢れる人物で、朱仝とも良い関係を築けていて、実に好漢という人物なのですが。梁山泊入り最悪エピソードのトップランクを行くような朱仝の参加エピソードが入ることで、どうにもその義侠心にも陰りを感じてしまうのが読者としては惜しい所だと思います。
またこのエピソードのために朱仝はかなり後々まで印象に残るのですが、雷横は呼延灼との戦いが一番のピークであり、そこからやや失速を感じるのは否めません。個人的にはもう少しエピソードを盛り込んで、張飛の如くより活躍して欲しいと感じるのですが、それらの要素は今後の水滸伝に期待していきましょう。
またこのように「少しのものたりなさ」を感じるのも、雷横の魅力と信じて。今回も湖の畔から。ちゃぽーん。
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