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キングダム最新話:886話で一番のミソ|河了貂が「本当の囮」だと自分で認めた
今週いちばん重かったのは、河了貂が兵に謝ろうとした場面だ。小隊を逃がすほど、自分の周りが薄くなる。そのことを河了貂は隠さなかった。ここが本当の囮だ、と自分の口で言った。んで、兵の側が謝らせない。誇っていい、最後まで守る、と返す。しかもそのあとに、河了貂本人はいずれ別働隊に入れ、と付け足す。守るとは言うが、一緒に死ぬとは言っていない。兵のほうが、河了貂を生かす算段をしている。
ここは、参った。軍師が兵を守る話だと思って読んでいたら、兵が軍師を守る話に裏返っていた。
キングダム考察|河了貂は死んだのか?「殲滅」の報告で確定していないこと
検索でここへ来た人がいちばん知りたいのは、この一点だと思う。最初に読んだときは、討ち取られたと思った。殲滅の報告があって、雨の中に横たわる河了貂がいる。そう読むのが普通だ。
んで、読み返すと違う気がしてくる。描かれたものを数える。趙忽軍が駐屯していること。「殲滅した」という言葉。雨の中の遺体。横たわる河了貂の全身。誌面の「合流は果たせなかった」という煽り。描かれていないものも数える。河了貂の顔。河了貂が斬られる場面。横たわっている場所が、殲滅の現場と同じだという確認。殲滅された部隊が、河了貂のいた中央部隊だという確認。
「殲滅した」という情報は、趙忽軍の最後尾の兵が言い、伝令が運び、カイネが聞いた。二段の伝聞だ。誰も、河了貂の顔を確かめていない。僕の予想は、河了貂は生きている、だ。趙忽軍が殲滅したのは中央部隊で、その中に河了貂はいない。河了貂は別の場所で気を失っている。最後の大ゴマは、殲滅の現場と同じ場所とは限らない。そう読んでいる。
理由はもう一つある。原泰久先生は、ここで河了貂を殺す作家ではないと思う。カイネとのつながりをこれだけ丁寧に描いた直後に、顔も見せずに終わらせるとは考えにくい。ただ、決め手はない。顔を描かない演出は、生かすときにも、殺すときにも使われる。悪いほうに転ぶなら、河了貂が趙軍の捕虜になる展開もあり得る。生きてはいるが、信のもとには戻れない。その形も残っている。
キングダム886話考察|なぜ最後に描かれたのがカイネだったのか
河了貂の安否を最初に受け取ったのが、信でも蒙恬でもなく、カイネだった。ここが今週の構成のミソだと思う。しかもカイネ本人が、なぜ自分が河了貂を気にするのかを説明できていない。まとまらない気持ちのまま現場へ急ぎ、殲滅の報告を聞く。その直前に、昔の「一緒に来い」という記憶を置いている。
原先生はここを狙ったのかもしれない。信が河了貂を見つける展開なら、カイネの記憶をここで掘り返す必要はない。カイネの心を先に動かしておいたのは、次に河了貂と向き合うのがカイネだからではないか。敵か味方かで言えば、敵だ。ただ、転校していった同級生が、よその学校の運動会で倒れているのを見かけたら、誰でも足が止まる。カイネの馬が止まらなかった理由は、たぶんそれに近い。
期待込みで言うと、河了貂を最初に見つけるのはカイネだと思っている。敵の軍師を見つけた趙の将校が、どう動くか。助けるのか、捕らえるのか、見なかったことにするのか。カイネの立場だと、どれを選んでも筋が通ってしまう。そこがこわい。
キングダム考察|885話で「自己犠牲というより人事だ」と書いた。訂正する
先週の885話の記事で、著者(おとぼけ)は河了貂が囮に残った判断を「自己犠牲というより、人事だ」と書いた。残す人材を選び、生き延びる手順を組み、いちばんごまかしの利かない持ち場を自分に割り振った、と。
886話を読んで、その見方は変わった。
人事なら、計算が合っているうちに自分も抜ける。河了貂は抜けなかった。兵から「あなたも別働隊へ」と言われてもなお、まだその時ではないと残った。これは人事の帳尻を、自分の身で払っている。自己犠牲だった。
先週の言い方は軽かった。著者(おとぼけ)は、ここで謝っておく。ただ、趙備明の読みを逆手に取った作戦そのものは、やはり軍師の仕事だと思う。敵が正しく判断すればするほど、小隊が逃げやすくなる。敵の正しさを、そのまま使った。頭の使い方は885話のままだ。変わったのは、その代金を誰が払ったか、だった。
次回887話はどうなる?河了貂の安否とカイネの行方
886話予想の記事では、河了貂の囮作戦が見破られるかどうかを問いにした。答えは、見破られなかった。趙備明は最後まで撹乱だと思い続け、河了貂の狙いどおりに小隊は逃げた。その代わりに中央が痩せて、殲滅の報告が届いた。予想の答え合わせとしては、当たった半分が、いちばん痛い半分だった。
887話で見たいのは二つある。
一つは、河了貂が目を覚ましたとき、誰がそこにいるかだ。カイネか。誰もいないか。誰もいなかった場合、河了貂は自分だけが生き延びてしまったことを知る。親衛隊を名乗った兵たちが、一人も残っていない場所で。それは死ぬより重いかもしれない。
キングダムライターおとぼけの独り言
もう一つは、蒙恬が言った雨だ。合流の場面で、あの一言だけが浮いている。雨は現場の血を流し、足跡を消す。河了貂の居場所を隠す雨になるのか、探す側の目をふさぐ雨になるのか。信は待つと決めた。次に信のもとへ届くのが、河了貂本人なのか、別の報告なのか。原先生は、その答えをカイネに持たせたのかもしれない。それでは兄弟たちよ、また木曜にお会いしまっせ!
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