桃園で義兄弟の契りを交わした劉備・関羽・張飛。その末弟・張飛は暴れん坊で有名ですよね。すぐに頭に血が上り、ムカついた相手はボコボコ。最悪の場合は血祭りにあげてしまうほどバイオレンス。
あまりにエキセントリックな振る舞いをするものですから、劉備や関羽に諫められ、シュンとしてしまうこともしばしば…。猪武者とも思える彼の豪快な戦いぶりは、大変痛快ですが、女性からはドン引きされそう…。女性とは縁遠そうな彼ですが、ちゃんと奥様がいらっしゃったようですよ。果たして、張飛に娶られたその女性とは…?
Boy meets girl…?
劉備は留守中に呂布によって徐州を追われ、曹操の元に身を寄せます。そして、何とか共に呂布を討ち取り、束の間の平穏を得た曹操と劉備でしたが、献帝が董承に曹操討伐の密命を下します。董承は劉備を見込んでその計画に加えようと考えます。
そんな暗雲が立ち込める中、2人の男女が出会ったのでした。張飛がぶらぶらと野山を歩いていると、薪を拾い集める少女に出会います。これを目にした張飛はその少女に一目惚れ。少女を連れて帰ることにします。
半分くらい攫ったようなものなのでしょうか…?そして、その少女の話を聞いてみると、なんと曹操の親族でもあるあの夏侯家の娘なのでした!これを知った張飛はさらに喜んで彼女を妻に迎えたいと考えます。しかし、その2人の仲を引き裂こうとするかのように、あの事件が起こるのでした…。
曹操暗殺計画が露わに…
献帝の密命を受けた董承の誘いを受け、劉備は曹操暗殺の片棒を担がされます。全ては献帝のため、漢王朝再興のため…!そう自分に言い聞かせますが、恩を仇で返すことになり、心苦しかった劉備。
暗殺計画もいよいよ現実味を帯びてきた頃、幸か不幸か劉備は袁術討伐のため徐州に派遣されます。ところが今度は劉備の元に董承その他諸々、曹操暗殺計画に加わった者たちが曹操に殺害されてしまったとの知らせが舞い込んできます。自らもその計画に一枚噛んでいた劉備は、曹操によって殺されてしまうことを恐れ、袁術は既に病死したのにもかかわらず、徐州に留まりました。
夏侯氏を連れてきていた張飛も、曹操との関係を修復することはもはや不可能だと悟ります。そして、魏の家族のことは忘れて自分と一緒になって蜀の女になるように夏侯氏を強く説得したのでした。
後の蜀皇后を出産
張飛の妻となり、蜀の女として生きることを決意した夏侯氏。戦いに明け暮れる張飛ともうまく関係を築けていたようで、1人の女児に恵まれます。
この女の子は後に蜀の二代目皇帝・劉禅に嫁ぎ、皇后となりました。桃園で義兄弟の契りを結んだ義兄弟の息子と娘が結ばれるなんてなんてロマンティックなんでしょう…!ちょっとしたラブコメ要素を感じなくもないですよね。
夏侯淵の死を悼む夏侯氏
夏侯淵の姪っ子でもあった夏侯氏。神速で名を馳せたその叔父も、定軍山の戦いで蜀軍に討ち取られてしまいます。これを聞いた夏侯氏は、その死を悼んで自ら夏侯淵の遺体を埋葬したいと願い出ます。魏を捨てて蜀に嫁いだといっても、やはりその血縁者への情までもを斬り捨てることはできなかったのですね。
夏侯覇が頼ってきた!
ある日、魏から夏侯覇が蜀に降ってきます。夏侯覇はあの夏侯淵の息子で、他の兄弟と比べても大変優秀であるといわれていました。
そんな夏侯覇ですが、司馬懿と政権を争っていた曹爽が司馬懿の手にかかり、また、親族である夏侯玄までもが司馬懿に呼び出しをかけられ、更にはそりの合わない郭淮が夏侯玄の代わりに征西将軍をつとめることになったということで、魏での居心地が悪くなっていました。このまま魏にいては、司馬懿によって自分も殺される…!そう思った夏侯覇が頼ったのが、従妹である張飛の妻・夏侯氏でした。
蜀は皇后の血縁者であるという夏侯覇を手厚くもてなし、夏侯覇もそれに応え、車騎将軍として姜維と共に魏の王経を大いに破る活躍を見せたのでした。蜀の女となっても、生家である夏侯家を愛した夏侯氏。乱世を生き抜いた女性の中でも、理想的な生き方をした女性と言えるのではないでしょうか。
※この記事は、はじめての三国志に投稿された記事を再構成したものです。
▼こちらもどうぞ
夏侯覇(かこうは)ってどんな人?夏侯淵の息子でもあり蜀に亡命した勇将