『三国志演義』は、後漢末の武将たちの戦いをもとに書かれた話ですが、『封神演義(ほうしんえんぎ)』は、殷末の武将たちの戦いをもとに書かれた話です。とうにご存知の方も、また、『三国志』と同じように、歴史を下敷きとした面白い小説ならば、ぜひ読んでみようと思われる方もいらっしゃるかと思います。そこで、『封神演義』の内容について、触れてみたいと思います。
この記事の目次
殷末の武将たちの戦いをもとに書かれた『封神演義』
『封神演義』とは?
明時代に書かれた小説で、『封神榜』と言われることもあります。殷末の暗君紂王と妃の妲己により乱れた殷王朝を倒すべく、姜子牙こと太公望が戦う話です。この説明ですと、『三国志演義』と似た雰囲気かと思われがちですが、決定的に違うところがあります。『封神演義』は、殷末の易姓革命を舞台にしてはいますが、太公望の目的は殷王朝を倒すことでも、中国を統一することでもありません。
仙界の天帝から命じられて、「封神の儀式」を行うことが目的です。封神とは、平たく言えば、たくさんの人を殺して神に捧げること。殷末の混乱を、「ちょうどいいから利用してくれ」と神さまから頼まれたのです。また、登場する人物も、仙人、道士、妖怪などがメインです。非常にファンタジー色の強い作品となっています。
※2020年5月27日にkawauso編集長が封神演義についてわかりやすく追記しました。
中国明代に成立した神怪小説は何が書いてあるの?
封神演義とは、中国の明の時代に登場した神怪小説というジャンルの読物です。神怪小説とは、神様と妖怪が登場する幻想小説という意味で文字通り仙人や道士、妖怪が登場して、仙界で人間界で宝貝という武器を使いバトルを繰り広げます。
しかし、この封神演義、天竺にお経を取りに行くシンプルな目的の西遊記と比較して内容が複雑なのも事実。そこで、ここでは封神演義の内容を解説しましょう。
最終目的は封神榜のリスト通りに殺人をする事
そもそも、封神演義の封神とは神に封じるという意味です。一体、誰を神に封じるかというと、これは元始天尊という道教のボスが作成した封神榜という名簿にリストアップされた人間や仙人や妖怪です。
封神演義の舞台は、紀元前11世紀の中国ですが、この時代は人間界と仙界の境が曖昧であり、妖怪や人間や仙人が両方の世界を自由に往復していました。その結果、人間だけど仙界で修業をして仙人のように道術を使える人がいたり、異形の妖怪が人間に混ざって生活するような事が起こります。
つまり、仙界と人間界で中途半端な超能力者が増えてきていたのです。そこで、仙界のお偉い仙人は、秘密会議を開き人間界と仙界でうようよしている中途半端な超能力者を、新しく創設する神界に纏めて人事異動しようと決定しました。
しかし、封神の為には、その対象者を殺して魂の状態にしないといけませんので、いかに合法的に人殺しをするか、仙人たちは考える事になります。
商周革命にかこつけてぶっ殺せ(笑)
どうやったら、封神榜にリストアップした365人を合法的に殺害できるか?
そこで、仙人たちが目をつけたのは人間界の易姓革命でした。その頃、人間界では500年に渡り中華を支配していた商(殷)王朝の寿命が尽きようとしていました。それでも残り30年くらい寿命はあるのですが、これを前倒しして行い、新しい王朝を建国するドサクサで、365人を殺してしまおうと考えたのです。
幸い?その頃、商の紂王は女媧娘々という女神の廟に、このような女神を後宮に侍らせて、ウヒョでウヒョヒョな事をしたいと卑猥な内容の詩を書き、女媧娘々を激怒させていました。女媧娘々は商など少しでも早く滅ぼしたいと考え、部下の千年の妖狐を呼び出し、紂王の下に輿入れする蘇妲己という娘を殺して成り代わらせ紂王を堕落させよと命じていました。
そこで、仙人たちは女媧娘々の企みに乗っかり、派手に易姓革命を開始する事に決意したのでした。
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