三国時代の医師、華佗(かだ)は「麻沸散(まふつさん)」という麻酔薬を使って全身麻酔を施し、外科手術をしていたことで有名です。
華佗の秘伝の書の行方
曹操(そうそう)の怒りを買って処刑されることになりました。華佗は、自らの秘術が書かれた一冊の本を差し出して獄吏にこうお願いします。「この本を使って、これからも人の命を救ってください」しかし獄吏は、勝手にそんなものを受け取ったら罰を受けると思い、断ります。
華佗も獄吏の心中を察し、無理強いせず、本に火をかけて燃やしてしまいました。こうして、華佗の秘術は、世の中から消えてしまったのです。
関連記事:周泰の傷を治療したのは華佗だった?孫権の要請により周泰を救った華陀
関連記事:五禽戯(ごきんぎ)とは何?華陀が生み出した元祖ラジオ体操が凄すぎる!
麻沸散とはなにか
麻酔薬「麻沸散」の原料は、後世の多くの研究者たちが、様々な仮説を立てています。チョウセンアサガオ、マンダラゲ、トリカブト、マンドラゴラなど。しかし、近年の薬学者の中では、インドタイマ(大麻)であるという説が最も有力だそうです。
関連記事:時代を超越したスーパードクター華佗のあり得ない治療法と最後を紹介
関連記事:もし関羽が呉に降伏していたら世界史はどうなった?救われたかもしれない命の数は数億人?
インドタイマとは
アサの一種で、含有成分のテトラヒドロカンナビノールが幻覚作用を引き起こします。マリファナといったほうが、ぴんと来る方もいるかもしれません。タイマは古くはギリシャ時代に書かれた『歴史』(ヘロドトス著)に登場します。また、古代イランでは、占いや幻術にタイマが使われていました。
イスラムの勢力が拡大したときに、インドにもタイマが入り、栽培、輸出がされたため、以降はインドタイマと呼ばれるようになりました。
関連記事:三国時代は荒療治が日常茶飯事だった?
関連記事:ギョッ!これも薬?華佗も利用した、ちょいグロな漢方薬の話
麻賁=麻勃=麻沸散?
『新農本草経』という中国最古の本草書の中に、タイマの花が登場します。「麻賁(まふん)」または「麻勃(まぼつ)と呼ばれ、幻覚作用が指摘されています。
この書は、後漢の成立なので、ちょうど三国時代の寸前ということになります。時代的な重なりと、名前の音が似ていることから、これが麻沸散なのではないかと考える説があるのです。
関連記事:漢方薬には意外な歴史があった!?漢方薬の原型や雑学豆知識