『三国志演義』の張飛と言えば酒好き・乱暴者で有名。しかしそれでも読者から愛されるヒーローという存在です。
実は彼と一緒で酒好き・乱暴者でありながら愛されたヒーローがいました。彼の名前は李逵。彼は『水滸伝』に登場する108人の1人です。今回は李逵について解説します。
黒旋風 李逵
李逵は自黒であったことから、あだ名は「黒旋風」や「鉄牛」と呼ばれています。得意な武器は2つの斧。小作農の次男として生まれますがケンカで人を殺して牢に送られました。
だが、力持ちであったことが幸いして、江州の牢役人である戴宗のもとで働き始めます。戴宗は足が速かったことから「神行太保」と呼ばれています。
役人になるより楽だった?
李逵と戴宗が就職していた牢役人は「胥吏」と呼ばれていました。正規の官僚ではない人を指します。ちなみに『水滸伝』の主人公である宋江も胥吏です。胥吏になるのは大抵が科挙(=公務員試験)に落ちた人々でした。
給料も正規の官僚とは違い、中央からもらうのではなく地元の人々からもらうことになっています。しかしそれは地元の人々との癒着もあるということです。宋(960年~1279年)はこの胥吏の問題にかなり苦労していましたし、また胥吏も正規の官僚になるより楽だと思っていたようです。
宋江との出会い
話がそれたので戻します。李逵はある日、宋江と出会います。宋江は江州に罪人としてやって来ました。宋江は人殺しをして逃げていたのですが、父の説得で自首したのです。
以前から宋江の大ファンだった李逵は出会えて大喜び!宋江に喜んでもらおうと魚を買いに行きますが、地元の荒くれ漁師とケンカになります。
李逵は市場を開く時間でもないのに、「魚を出せ」と言って漁師を怒らせたのです。それどころか李逵は「買う」という概念が頭から無くなっており、盗ろうとしています。もはや子供です。ケンカ慣れしている腕自慢の漁師も李逵が相手では全く歯が立ちません。漁師たちは、このまま李逵に魚をとられるのでしょうか?
李逵VS張順
「待て!」と1人の色白の男が叫びました。彼は漁師のリーダーである張順という人物。張順は浪くぐりのハヤという意味で「浪裏白條」と呼ばれています。ハヤというのはコイの仲間です。
「市場にはしきたりがある。勝手なマネはさせない」と言って、張順は李逵に立ち向かっていきました。しかし力持ちの李逵に真正面から立ち向かうのは自殺行為!数秒で張順はノックダウン。
「弱い奴に用は無い」と思った李逵は魚をもらっていこうとしますが、起き上がった張順は」船に移動すると「こっちに来い」と叫びます。
「もう、うるさい!」と思った李逵は船に飛び乗りますが、次の瞬間、張順に船をひっくり返されました。実は張順の得意な戦法は水中戦でした。相手に水中に引きずり込めば、確実に勝利を得れるのでした。引きずり込まれた李逵は身動きが全く取れません。このまま李逵は張順に殺されてしまうのでしょうか?
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