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【はじめての孫子】第8回:夫れ兵の形は水に象(かたど)る。

この記事の所要時間: 341




水攻めをする兵士

 

「はじめての孫子」8回目。

今回は「虚実篇」これまで語ってきた戦略、戦術の総論の締めとして、

孫子はここで合戦に勝つための2つの重要なポイントを説明しています。

『兵(戦)の形は水のようなものである』

孫子のその言葉には、一体どのような意味があるのでしょうか?

 

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前回記事:【はじめての孫子】第7回:凡そ戦いは、正を以て合い、奇を以て勝つ。

関連記事:三国志を楽しむならキングダムや春秋戦国時代のことも知っておくべき!

 

 

「虚実篇」の要点

孫子の兵法 曹操

 

●最も重要なことは戦いの主導権を取ることである。

●先手を取って、相手を意のままに動かすべし。

●兵力を集中すること。分散は愚策である。

●敵情を知り、その虚を突くべし。

■機先を制し、先手を打つことの重要性

 

前回まで、孫子は守ることの重要性を繰り返し主張してきましたが、

彼の言う守勢とは消極性を表すものではありません。

むしろ孫子は、相手に先立って軍を動かし、

敵に先んじて戦闘の主導権を握ることの重要性を説いています。

 

守備をするにしても、まず、

自軍にとって守りに有利となる場所に布陣をすることが必要です。

そして、敵の先手を取ることは、

単に守備することにとって有利となる以上のメリットを自軍にもたらします。

 

 

先手を取ることでどんなメリットが得られるか?

 

●先に布陣して待ち構えれば、

自軍の兵士はその間休息を取ることができる。

しかし、後から駆けつけてきた敵軍は休む間もなく戦いを始めなければならず、

最初から疲れた状態で戦闘しなければいけない。

 

●先んじて行動してみせることで、敵軍を陽動し、

あたかも敵にとって有利に戦えると思える場所に誘い出すことができる。

逆に、自軍にとって不利な場所に敵が布陣しないよう、

それが誤った判断と思い込ませることもできる。

 

●敵が布陣し守りを固めていても、行動の主導権を取れば、

敵が守りを捨てて行軍して来ざるを得ないよう、要地を攻め立てることができる。

 

●先手を取って行軍すれば、その過程で敵に急襲される恐れはなくなる。

 

●敵に先行すれば、敵がまだ守備を固めていない要所を

攻撃してやすやすと攻め落とすことができる。

 

常に先手先手を取って、相手に自分の意のままに行動する自由を与えないこと。

これが重要であると孫子は説いています。

 

関連記事:武経七書(ぶけいしちしょ)って何? 兵家を代表する七つの書物

関連記事:これぞ戦争の極意!!兵家の思想ってどんな思想?

 

戦争は数だよ、兄貴!!

 

……と孫子が言ったわけではありませんが、

多数が少数に勝つのは戦争のもっとも基本的な原理と言えます。

 

もちろん、前回紹介した合肥の戦いや、

日本における桶狭間の戦いのような例外もありますが、

それらは基本的に敵がその数ほどの戦力を出し得ない状況にあったからこそ

少数が多数に勝利しえた数少ない事例となったのです。

 

孫子はまず敵の機先を制して行動することの重要性を説き、

次にそうすることで、自分の手のうちを敵に見せることなく、

相手を翻弄し、自軍の行動を隠すことができると言います。

 

敵と味方の兵力が1:1の場合、

両軍がそのまま激突すれば自軍はそれと同様の戦力を持つ敵と戦うことになります。

数で同等の戦いですから、そこには例え勝てたとしても、

少なからぬ損害を被ることは間違いありません。

 

しかし、敵の機先を制して、

相手に悟らせないまま自軍の有利な地点で待ち構えることができればどうでしょう?

敵は自軍の行動が予想できなくなり、

自軍が布陣している可能性のある地点に兵力を分散して向かわせざるを得ません。

 

敵が十箇所に分散してしまえば、自軍は十分の一の戦力と戦うことになり、

これなら圧倒的有利に戦うことが可能です。

兵力の拡散は古今東西最も愚策とされており、孫子もまた、そのことをキツく戒めています。

 

ランチェスターの法則って、知ってます?

 

1914年、イギリスの技術者であったフレデリック・ランチェスターは第一次世界大戦に際して、

「ランチェスターの法則」と呼ばれる二つの軍事的法則を発表しました。

 

ピタゴラスの定理にヒントを得たとされるこの「ランチェスターの法則」は、

もともと航空機のエンジニアでもあったランチェスターが、

第一次世界大戦時の最新兵器であった戦闘機による軍事戦略のために考案したものですが、

現代では広く経営戦略にも用いられることで有名です。

 

「ランチェスターの法則」は第一・第二の二つの法則からなっていますが、

特に重視されているのは、その第二法則です。

 

攻撃力=兵士数の2乗×武器性能

 

言い換えると、互いが装備する武器性能が同等であるのなら、

攻撃力はほぼ、その数の2乗である、ということです。

 

また、この法則から、次の式を導き出すこともできます。
強者の兵力Aと弱者の兵力Bが戦った時、AがBを全滅させて尚残る兵力は

√(Aの2乗-Bの2乗)

 

ちょっとわかりにくいので、簡単な例えで説明してみましょう。
ケンカをする場合、一対一であれば、体力(武器性能)が同じなら戦力はまったく互角、

そのままでは相手を倒せても自分も共倒れになってしまいます。

しかし、2対1の場合はどうでしょうか?
2人でケンカする場合の戦力はその2乗の4、それに対して1人の側は戦力1のまま。
2人組が1人をのしても、2人組側に残る戦力は√3ですから、片方がちょっとケガをする程度です。

この場合、1人でケンカする側が2人組に勝つためには、4倍以上の体力が必要、となるわけですね。

「ランチェスターの法則」を見ても、

いかに戦力を拡散してしまうことが愚策であるのかが良くわかります。

 

 

強い軍のありようはさながら水のごとし?

 

相手の虚(弱点)を突き、臨機応変に対応して巧みに戦える軍隊のことを、孫子は水にたとえています。

相手の堅実な部分を山に例えるなら、

その弱点=虚はさながら山に生じる谷あいのようなものであり、

その虚に応じて行動できる軍とは、あたかもその谷間を埋めて流れる水のようなものである。

 

敵の先手を取り、その行動や目的を読み取って、

どこが弱点であるかをしっかりと把握し、その虚を突くように行動を絶えず変化させること。

それこそが重要であり、それをなし得ることこそが神業であると孫子は言っています。

 

三国志ライター 石川克世の次回予告

石川克世

次回「はじめての孫子」は『軍争篇』
孫子実践編その一、実際に軍を動かすにあたっての心構えを孫子が説いていきます。
あの武田信玄で有名な一節も登場しますよ!!

それでは、次回もまたお付き合いください。再見!!

 

はじめての三国志全記事一覧はこちら

次回記事:【はじめての孫子】第9回:其の疾きことは風の如く、其の徐なることは林の如く

 

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石川克世

石川克世

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三国志にハマったのは、高校時代に吉川英治の小説を読んだことがきっかけでした。最初のうちは蜀(特に関羽雲長)のファンでしたが、次第に曹操孟徳に入れ込むように。三国志ばかりではなく、春秋戦国時代に興味を持って海音寺潮五郎の小説『孫子』を読んだり、
兵法書(『孫子』や『六韜』)や諸子百家(老荘の思想)などにも無節操に手を出しました。

好きな歴史人物:

曹操孟徳
織田信長

何か一言:

温故知新。
過去を知ることは、個人や国家の別なく、
現在を知り、そして未来を知ることであると思います。

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