三国志の一角を担う「蜀」の七不思議のひとつに、
なぜ「魏延」は別格の厚遇を受けたのか、
なぜ「趙雲」は魏延よりも格下になってしまったのか、というものがあります。
蜀ファンはこのことにはあまり触れないという不文律すらあります。
今回はこの謎について、ろひもと理穂なりに掘り下げてみたいと思います。
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五虎将軍の中でも最下位の趙雲
旗上げ当時から劉備の義兄弟で他国にその武勇が知れ渡っていた関羽や張飛は置いておくとしても、
馬超や黄忠よりも下位の扱いであることに納得がいかない趙雲ファンは多いです。
なにせ趙雲は各地で転戦し、弱かった劉備軍を支えてきた貴重な存在なのです。
もっと評価されてもいいでしょう。
しかし、馬超はかつて西涼に一大勢力を築いた群雄のひとりであり、
馬超の降伏で益州の劉璋の降伏が確実なものになったことを考えると、
やはり趙雲よりも上位になるでしょう。
黄忠は漢中を巡る魏との戦で、敵の総大将・夏侯淵を討ちました。
蜀の臣で、ここまでの大物の首を獲ったことは初めてのことです。
趙雲より上位になるのも仕方ありません。
魏延って……
馬超、黄忠より格下になってしまったことはやむをえません。
が、五虎将軍にすら入っていない魏延に抜かれるのは我慢できませんね。
魏延は劉備が荊州にいたころから仕えた新参者です。
タイミング的には黄忠と同時期に旗下に加わっています。
趙雲が劉備の配下になったのが西暦200年ごろ。
魏延が劉備の配下になったのが西暦208年ごろ。
趙雲の方が8年も先輩なのです。
そして魏延が加わったときには趙雲は牙門将軍から偏将軍・桂陽太守に出世しています。
当然ながらこのときは趙雲の方が格上です。
いつの間にか抜かれる趙雲
正式に趙雲が魏延に抜かれるのは、西暦219年のことになります。
劉備が漢中を魏から奪い獲り、漢中王を名乗った年です。
ここで劉備は衝撃的な人事を行います。
魏延を督漢中、鎮遠将軍、漢中太守に任じたのです。
鎮遠将軍というのは雑号将軍のひとつでしょうが、「鎮」の字がつく将軍位はかなり上だと思われます。
前後左右将軍に次ぐ将軍位だったのではないでしょうか。
ちなみに漢中太守はかなりの重責でよほどの実績と信頼がない限り、
劉備は任せなかったでしょうから、当時のひとたちは張飛がその位に就くものだと思っていて、
魏延が漢中太守となって大いに驚いたと云われています。
劉備が漢中王になった際に趙雲の官位が上がったという記述は見当たりません。
きっと上がったはずなのですが、記載がないので、
ここで魏延の方が一歩リードということになってしまうのです。
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諸葛亮孔明の時代
劉備は魏延をかなり評価していたようです。
社長に直接気に入られて、別格の出世をしていくひとは今の時代にもいます。
魏延は劉備にとって「ツボ」だったのでしょう。
どこが?って疑問をもつ方のために補足しておくと、
武勇は関羽・張飛並み、用兵も巧みで統率力がある。
そして前向きな発言によって周囲を引っ張る力がある。
この辺りが劉備に気に入られた点ではないでしょうか。
どちらかというと趙雲は寡黙なひとで、戦場以外ではあまり目立ちません。
劉備にとっては次世代のリーダー的存在を魏延に期待していたのだと思います。
西暦221年に魏延は鎮北将軍となりました。すでに前後左右将軍よりも上の官位です。
対して趙雲は劉備が亡くなった西暦223年に中護軍・征南将軍となっています。
おそらく諸葛亮孔明の考案でしょう。
諸葛亮孔明は魏延よりも趙雲を信頼していた節があります。
趙雲はその後、鎮南将軍と出世します。
ここに至り、魏延と趙雲はほぼ同格に戻ったと私は考えます。
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三国志ライター ろひもと理穂の独り言
魏延は、最期に裏切者扱いをされて首を刎ねられます。
特に「三国志演義」では登場時から諸葛亮孔明に「反骨の相」を指摘され、
その布石があって読者は常に魏延に不信感を持っています。
よって魏延に対して後世の世論の評価はかなり低いのです。
しかし、あの劉備にここまで可愛がられて出世した魏延には、確実に光るものがあったのでしょう。
もしかすると諸葛亮孔明はそれを恐れたのかもしれません。
趙雲が魏延に官位で抜かれたのは納得のいく話でもありませんが、
それだけ魏延が凄かったということなのではないでしょうか。
まずは魏延を認めてあげることから始める必要がありそうです。
みなさんはどうお考えでしょうか。
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