かつて日本で大流行したカリスマコメント付き三国志が存在した!

2017年12月7日


 

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吉川英治さんの三国志にある、言うこと聞かない部下の魏延(ぎえん)

諸葛亮(しょかつりょう)が敵の司馬懿(しばい)もろとも焼き殺そうと

するという、諸葛亮が鬼畜すぎる迷シーン。そのひどいシーンは吉川さんの

オリジナルではなくて、当時日本で広がっていた、とっても愉快で刺激的な

ある三国志の影響です!

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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あの鬼畜シーンは吉川英治のせいじゃない

 

鬼畜の迷シーンは古い三国志演義にはありまして、毛宗崗(もうそうこう)

という人が編纂した時にカットされたわけですが、その新しい三国志演義は

当時の日本では広まっておらず、日本人が親しんできたのはもう少し前の

「李卓吾(りたくご)先生批評三国志」と題されている三国志演義です。

その中にはあるんですな~、あの迷シーンが。それが広がっちゃっているので、

吉川さんもご自分の小説に取り入れざるを得なかったんですね。吉川さんは悪くないよ!

 



ラジカルでいかす! 李卓吾の批評

 

「李卓吾先生批評三国志」、通称「李卓吾評本」と呼ばれる三国志演義

読んで字のごとく、李卓吾先生の批評が加えられている三国志です。

その李卓吾先生の批評がラジカルでいかすんですよ! 例えば、魏延謀殺

未遂事件のくだりでは、先生はこんな批評をなさっています。

孔明諸葛亮)がこんなやり方で魏延を謀殺すれば、魏延は納得できる

はずがない。どうして魏延の罪を明らかにせずに詭計を用いるのか。

これは全く間違ったやり方である」おおっ、正論……。

 

李卓吾先生は張飛の大ファン

 

もっとおちゃめな評もあります。先生どうやら張飛(ちょうひ)

ファンのようなんですね。三顧の礼のくだりで、劉備(りゅうび)

大雪の中を諸葛亮に会いに出かけるのに同行した張飛が

「こんな寒い日に遠路はるばるポンコツ野郎に会いにいくなんてありえねえ。

帰って冬ごもりしようぜ」とぶうたれているシーンで、李卓吾先生は

「張飛はきっぱりとした人である」と褒めておられます。

劉備が張飛に「寒いのがいやなら先に帰れ」と言い、張飛が

「死をも恐れぬ俺だ、寒さなんか恐れるものか。ただ兄貴が

無駄な苦労をすることを恐れるだけだ」と言い返したら、李卓吾先生は

「張飛は生き仏である」と絶賛しておられます(現代風に言うと、神だ、

って感じでしょうかね)。

張飛が何かやるたびに、いちいち褒めちぎっていて面白いです。

 

諸葛亮にはいちいちめくじら

 

 

李卓吾先生、諸葛亮には何故だか厳しいです。三顧の礼で、劉備が

昼寝中の諸葛亮を訪ね、起きるまで外でそっと待っていた時に、

昼寝から覚めた諸葛亮が下働きの童子に「俗客が来たのではないか」と

尋ねた場面では、すかさずこんなツッコミを入れておられます。

「孔明は『俗客』などという言葉を口にしたが、これまたあまりにも

俗すぎる。世の中の誰が高雅で誰が低俗であるかなどという区別を

している孔明こそ、俗物、俗物」そこ、そんなめくじらたてるところかなぁ。

三顧の礼は全体的に隠者を仙人っぽく描いてあるダンジョンなんだから、

そういうもんだと思って流しておけばいいのにねぇ……。

 

詩や生き様についてもコメント

 

批評らしい批評もあります。三国志演義には詩が引用されている箇所が

多いですが、李卓吾先生が感心したものの後には「句の選び方がよい」とか

「至言、至言」などと書いてあります。人の生き方についても意見を

述べられていて、徐庶(じょしょ)の母親が息子に誤った道を選択させない

ように自ら死を選んだシーンでは、「きっぱりとした死に方である。

人生にこのような最期があることは大幸である」なんて言っておられます。

大幸とまで言っちゃうと語弊がありそうですが。

 

三国志ライター よかミカンの独り言

三国志ライター よかミカンさん

 

三国志演義なんだけど、李卓吾先生のカリスマコメント付きという、

「李卓吾先生批評三国志」。私は大好きです。

先生のコメントを読みながら、「ウンウン、そうだよねぇ。このシーン、

ほんと鬼畜だよね!」とか、「あっ、また先生ったら、どんだけ

張飛LOVEなんですか」とか、盛り上がりながら楽しんでいます。

機会がありましたら、ぜひお手にとって李卓吾先生のお人柄に

触れてみて下さい。おんもしろいから!

 

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よかミカン

よかミカン

三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。 個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。 三国志小説『ショッケンひにほゆ』 【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】 何か一言: 皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。 妄想は妄想、偏見は偏見、とはっきり分かるように書くことが私の良心です。 読んで下さった方が こんなわけないだろうと思ってつい三国志を読み返してしまうような記事を書きたいです!

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