たくさんの国が乱立する世では同盟国の絆をより強固なものにするために政略結婚というものが行われるもの。
実は『三国志』の世界でも政略結婚は頻繁に行われていました。
その中でも特に有名な政略結婚といえば呉の孫権の妹・孫尚香が蜀の劉備に嫁いだものでしょう。
ところがこの政略結婚、他に類を見ないほどなかなか波乱万丈なものだった模様。
というのも、孫尚香がけっこうな厄介なじゃじゃ馬だったようで…。
今回は、劉備に嫁いだじゃじゃ馬夫人・孫尚香についてご紹介したいと思います。
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悲運?政略結婚のエサにされた孫尚香
呉と蜀との同盟関係をより強固なものにしたいということで白羽の矢が立てられてしまった孫尚香。
実は孫尚香という名前は京劇で使われる仮の名前であり、彼女の名前は明らかになっていません。
そのため、彼女のことは通例通り孫夫人と呼ぶべきなのかもしれません。
しかし、本記事では愛着がわきやすいということで孫尚香と呼ばせていただくことにします。
彼女は劉備との歳の差が親子ほどあったらしく、2人のあまりの年齢差にちょっと眉を顰めたくなってしまうという人もいるのではないでしょうか。
きっと孫尚香も乗り気ではなかったはず…。
ちなみに、兄である孫権も「ちょっとな…」と思っていたのではないでしょうか?
『三国志演義』では孫権は当初
「可愛い妹を劉備なんぞに本当にくれてやるわけないじゃん!」
と暗殺計画を企てていたくらいですからね。
劉備との相性は意外と…?
ところが、嘘の縁談は劉備の人柄の良さによって思いの外ポンポンと進み、本当に結婚することになってしまった孫尚香。
なんとか呉に留め置こうとしたものの、諸葛亮に策を授けられた趙雲によって劉備も孫尚香も荊州に連れて逃げられてしまいます。
シスコン孫権、悔しい…!
その後、劉備と孫尚香の関係ですが、正史『三国志』でも結構仲良くやっていたと記されています。
ただ、孫尚香は勇ましい孫堅の血を引いており、これまた勇ましい孫策の姿を見て育ったためかかなり男勝りな性格で
女だてらに武人のような風格を備えていました。
そんな彼女の部屋は女性らしさ皆無。
あらゆる武具が飾られており、更に武装した侍女が四六時中待機していたのだとか。
そのため、劉備は孫尚香の部屋では心から寛ぐことができなかったようです…。
いきなり帰郷!それも劉禅を連れて…
相性は悪くなかったらしい2人でしたが、孫尚香は自分が孫権の妹であることを振りかざして威張るなど傲慢ちきな態度をとることが多く
蜀の人々は正直彼女に辟易していました。
「北に曹操、南に孫権、内には孫夫人の脅威があった中で我が君が志を遂げられたのは法正の功績だ」
なんて言っちゃうくらいですからね。
孫尚香は蜀にとってかなり迷惑な存在だったということを推し量ることができます。
そんな困ったじゃじゃ馬夫人・孫尚香ですが、ついにお別れのときが訪れます。
ただ、その別れは決して美しいものではありませんでした。
なんと夫である劉備が兵を連れて益州に出かけている間にちゃっかり呉に帰ろうとしたのです。
それも、劉備の大事な一人息子の劉禅を連れて…!
そんなことをされては蜀は絶体絶命の窮地に立たされてしまいます。
跡継ぎを人質にとられてしまうということになってしまいますからね。
この危機的状況を救ったのは諸葛亮に命じられた趙雲でした。
趙雲は長江を封鎖して孫尚香を説得し、劉禅を見事奪還して見せたのです。
ちなみに、正史では何の前触れもなく劉禅を誘拐しようとした悪妻風な記述になっていますが、
『三国志演義』では兄の偽手紙によっておびき出されたかわいそうな夫人ということになっています。
まぁいずれにせよ夫である劉備に何の相談も無しに蜀の大事な跡取り息子を連れ帰ろうとするなんてとんでもない行為に違いありませんが…。
彼女はその後どのように暮らしたのか?
呉に帰った孫尚香と劉備は当然離婚したということになったようですが、呉に帰った孫尚香がどのように暮らしたかということは不明です。
ただ、『三国志演義』の毛宗崗本では呉に帰った後も孫尚香はまだ劉備との夫婦関係は終わっていないと思っており、
夷陵の戦いで劉備が死んだという誤報を聞いて長江に身を投げたということになっているようです。
じゃじゃ馬夫人の彼女にそんな健気さがあるとはちょっと考えにくいところですが…。
三国志ライターchopsticksの独り言
なかなか強烈なキャラクターの孫尚香ですが、彼女のような女性の存在が『三国志』をより面白いと感じさせてくれるのでしょうね。
結婚相手として考えるのはちょっと難しい女性ですが、気の合う女友達としては一緒にいてとても楽しい女性だろうなと思います。
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