『三国志』の魅力的なキャラクターといえば武神・関羽の名を挙げる人が多いでしょう。
そして、そんな関羽の心強いお供といえば元黄巾賊にして元山賊のという異色の経歴を持ちながら関羽に憧れを抱き続けてついに関羽の右腕ともいえる存在にのぼりつめた周倉です。
しかし、周倉は『三国志平話』や『三国志演義』などの一連の『三国志』をベースとした作品のみに登場する創作オリジナルキャラクターであるとされており、実在はしていなかったというのが有力な説です。
ところが、「周倉は実は実在していたのでは…?」と一部の『三国志』ファンの間ではまことしやかに囁かれている様子…!今回は、周倉が実在したという説について徹底的に検証していきたいと思います。
湖北省当陽県麦城村に周倉の墓が…!
周倉が実在したという証拠として度々挙げられるのが、中国のある場所に存在する周倉の墓の存在です。その周倉の墓は湖北省当陽市兩河鎮麦城村にあります。麦城といえば、関羽が荊州を奪われて逃げ延びた地。呂蒙の策にはまって樊城も襄陽も落とせずに逃げた関羽が孫権軍とかち合うことを恐れて引き返し、最期の拠点とした地です。
その後、関羽軍は孫権からの降伏勧告を受け入れたふりをして麦城から抜け出すのですが、結局孫権軍に捕まって捕虜となり、斬首に処せられてしまいます。そのとき周倉はまだ麦城で関羽を待っていたのですが、孫権軍から関羽の首を見せられて城壁から飛び降りて自害。麦城は周倉の最期の地となったわけです。そのため、周倉の墓が湖北省当陽市兩河鎮麦城村に建てられたようですが、このお墓は一体いつ建てられたのでしょうか…?
周倉墓の歴史
周倉墓の歴史は、清の乾隆帝の時代の農夫がこの地で「周将軍…」と刻まれた石碑を発見したことに遡ることができるようです。ただ、周将軍の名も生没年もいつこの石碑を作ったのかもわからず仕舞いで、とりあえずこの地に関する歴史的な物事を調べた結果、周倉の墓碑ではないかと結論付けられたそうな。歴史的な物事を調べたと言っても、周倉は創作上の人物としてしか登場していません。
清代の人は創作上の人物も実在の人物として取り扱っていたのでしょうか?それともその当時は周倉が実在していたという資料が残っていたのでしょうか?謎は深まるばかりですね。
関帝廟では関羽像の隣に周倉の像が…!
実は関羽を祀っている関帝廟には周倉も祀られています。この関帝廟は、唐代以降様々な地で建てられるようになったようですが、周倉も関帝廟がつくられた当時から祀られていたのでしょうか?その真相は分かりかねるものの、可能性は無くは無いです。実は周倉は北宋代に徽宗によって威寧将軍に追封されており、まるで実際に存在した英雄のように扱われています。
周倉が書物の中に登場しはじめたのは元代に刊行された『三国志平話』からであると考えられていますから、書物に登場するよりもずっと前から周倉の存在は広く人々に認識されていたようですね。このことに鑑みれば、周倉という人物が実は存在していたのではないか…?という期待も持てそうですが、唐代といえば講談が始まった頃であり、宋代といえば講談が盛んに行われていた時代。
そのため、講談をしていた人が適当に作った周倉というキャラが人々に大ウケしてどんどん広まっていき、架空の人物なのか実在の人物なのかその区別がつかなくなってしまったということも可能性の一つとして考えられそうです。
実在した周倉の本当の名前は「呂布」!?
いやいや、周倉は存在していたはずだ!と訴える人の中には、周倉の本名は「呂布」説を打ち立てる人もいるようです。呂布ってあの裏切り者のアイツ!?
と思ってしまう人も多いと思いますが、アイツと同姓同名の人物がいて、その人物の名字が呂、名が周倉だったと言うのです。その根拠として挙げられるのが正史『三国志』夏侯惇伝に見える
「二十四年、太祖軍撃破呂布軍于摩陂
(二十四年、太祖軍呂布軍を摩陂に撃破す)」の文言です。
「二十四年」とは建安二十四年のことであり、西暦で言えば219年です。
しかし、呂布は199年に既に死亡していることになっているので、ここに矛盾が生じてしまうことになります。このことから、呂布には同姓同名の人物が存在し、この呂布こそが関羽の部下なのではないか?と推察する人もいるようですが、ちょっと難しいような気もします…。
三国志ライターchopsticksの独り言
結局、周倉は存在していたのかどうかですが私個人としては存在していなかったと考えるのが妥当であると結論付けておきたいと思います。何せ証拠が無さすぎますし、証拠らしきものの多くが怪しすぎます。今後、周倉に関する資料が新しく見つかれば、この結論をひっくり返す日も来るかもしれません。兎にも角にも、未来に期待ですね。
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