麒麟がくるで異彩を放つ人物と言えば、自称三河農民の菊丸です。最初は野盗に捕らわれているのを光秀に救われたただの農民でしたが、その後も度々出現し薬草の知識や三河、尾張の地理に詳しいなど、何かと光秀の役に立っています。
どう見てもただの農民ではない菊丸、その正体は何者なのでしょうか?
※この記事は麒麟がくる第9話のネタバレが含まれますのでご注意下さい
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菊丸の主君は水野信元
麒麟がくる第9話では、松平竹千代の父、松平広忠が織田信長の刺客に襲われ矢で射殺されます。刺客は殺害した広忠の首を獲り立ち去っていきました。この時、菊丸は石垣の上から一部始終を眺め、刺客が立ち去ると広忠の衣服から脇差を抜き取って立ち去りました。
次に菊丸が現れたのは尾張刈谷城主、水野信元の屋敷でした。
菊丸が広忠の衣服から抜き取った脇差は、松平広忠の離縁した妻、於大に手渡され於大は涙を流します。この於大こそ松平竹千代、後の徳川家康の生母です。水野信元は、織田家に広忠が殺された今、激怒した今川義元が尾張に攻め込み、竹千代の身が危なくなる事を危惧します。それに対し菊丸は命に代えても竹千代を守ると断言します。
こうしてみると、第9話時点では菊丸は刈谷城主水野信元に仕え、信元から見て甥に当たる竹千代を守る事を使命としていると判明しました。
菊丸のモデルは高木清秀
史実で、この菊丸に似た存在はないか調べてみたところ一人モデルではないかと思われる人がいました。その人物は、高木清秀と言い大永六年(1526年)と光秀より2歳年上、元々は三河の出身で、若年の頃、水野信元の下を去り織田信秀に属して天文十七年(1548年)に第二次小豆坂の戦いで勇名を馳せました。後に再び信元に属し、刈谷の戦い、石瀬の戦い、姉川の戦い、長島攻め、長篠の戦いに従軍して特に石瀬で大功を立てています。
特に永禄六年秋の三河一向一揆では、主君の信元と共に家康救援に向かい、一揆勢相手に奮戦して負傷。家康はこれに深く感謝し、一揆鎮圧後に直接の部下でもないにも関わらず高木氏の故地三河大岡郷領知の判物を与え、その働きを賞したそうです。ケチで有名な家康が自分の家臣でもない部将に領地を与えるなんて余程の事です。それだけ清秀の働きが並みではなかったんでしょうね。
さらに、主君の水野信元が武田勝頼に内通した罪で信長に殺されると、次は佐久間信盛に仕え信盛の謹慎後には、その地盤を引き継いだ明智光秀の与力になっています。本能寺の変後には甲府新府で家康に仕え、徳川十六神将として名を残しました。
また、天正二年の第三次伊勢長島攻めで高木清秀は長男を失うのですが、この長男、光秀というのです。これは偶然なのか、ドラマでは取り入れられるのか不明です。年齢や徳川家康との関係も近く、モデルとしては、菊丸のイメージに一番近いのではないでしょうか・・
菊丸は飽くまで架空の人物
ただ、高木清秀は飽くまでモデルであり、そのまま本人にはならないでしょう。もし、高木清秀が菊丸そのものなら、途中から史実の縛りで身動きが出来なくなります。高木清秀ではない、例えば服部半蔵でも、公表された瞬間に色眼鏡で見られるでしょう。
このような制約から逃れる為に大河ドラマには架空の人物というのを置いているのであり、実在の人物でないから見せられる、語れる事があるです。従ってkawausoは菊丸のモデルは高木清秀というくらいに留めておきます。
菊丸は駒と結ばれ本能寺の変の引金になる?
2月28日配信の日刊現代デジタルによると、制作関係者、ドラマ関係者という怪しい出どころながらNHKは視聴率アップの為に、菊丸の露出を増やしていて、忍者として光秀に仕えさせ、光秀が本能寺の変で決起する重要情報を伝えるキーマンに仕立てるとか。
または、恋愛要素を入れる為に、今は光秀に片思いをしている駒と菊丸をくっつけるとか、色々画策されているようです。ただの飛ばし記事じゃないか?そう言われれば、そのようにも取れますが、実際、NHK大河は視聴率次第で、ロケ地も変われば、登場人物の役割もストーリーも大きく変わります。
実際、某革命家の妹を主人公にした大河では、本来なら終盤に舞台になる筈だった主人公ゆかりの土地のロケが視聴率低迷の煽りもあり、ほとんど登場しないまま丸々カットされてしまったという事もありました。このように、大河は視聴率次第で内容が大きく変わるので、菊丸と駒が結ばれる展開や、菊丸が本能寺の変に大きく関わる可能性も無いとは言い切れないのです。
戦国時代ライターkawausoの独り言
菊丸の正体、なかなか魅力的なテーマです。岡村隆史さんの演技もナチュラルでありながら謎めいた部分もあり、状況次第では光秀も裏切ってしまうような危うさにも満ちています。松平竹千代を命に代えても守ると言い切った菊丸ですが、その決意は光秀の運命に、どんな風に作用するのでしょうか?
参考文献:NHK大河ドラマ麒麟がくる 完全ガイドブック(前編)