2020年12月11日は、『新解釈・三國志』の封切り日です。『水曜どうでしょう』でお馴染みの大泉洋が三国志演義の主人公、劉備を演じるという事で、三国志ファン以外にもじわじわと話題になっています。
『新解釈・三國志』は、三国志を知らなくても十分楽しめると思いますが、少しくらいは知っていた方が、笑えるポイントが多くなると思うので、
今回は三国志記事を書き続けて丸6年のkawausoが、どんだけ三国志初心者でも分かるように三国志を解説します。
三国志は腐敗した社会から始まる
三国志は、今から1800年前の中国のお話です。その頃、中国は後漢という帝国が支配していましたが、建国から160年ほど時間が経過して、すっかり政治が乱れてしまいました。
役人が腐敗し、庶民は何度も税金を取られ、役人に賄賂を出さないと些細な理由で罪をでっち上げられ、牢獄に入れられるなど酷い状態です。本来なら警察が何とかしないといけない話ですが、警察だって腐敗まみれでまともに機能していません。
人々はすっかり追い詰められ、毎日生きるのが精一杯で絶望に打ちひしがれました。よく世紀末的漫画にもありますよね?こんなシチュエーション。
そんな中、みすぼらしい男が人々の中に出現し、自分はどんな病気も治せると言い出し、多くの奇跡を起こしてどんどん信者を増やしていました。その名を太平道の教祖、張角と言います。
関連記事:太平道の張角とはどんな人?正体は後漢末期のカウンセラーだった?
黄色い頭巾の黄巾賊
張角の奇跡というのは、病気になった人にそれまでに犯した罪を告白させ、その後にまじないを書いた紙を燃やして水に混ぜ、病人に飲ませて治すというものでした。
今から見ると、暗示によるプラシーボ効果なんですが、実際に治る人も出たので、次第に人気が出て信者が集まり、10年の間に数十万人という規模になります。
張角の命令一つで、人殺しでも何でもする信者が数十万人です。こんな部下が大勢いたら、誰だって自分には特別な力があると勘違いしてオカしくなります。
張角もやはりオカしくなり、世直しと称して漢帝国を叩き潰して、大平道の教えで世の中を平穏にすると称して宗教反乱を企てるのです。張角は同士討ちを避ける為に、信者には黄色い頭巾を身に着け戦争準備に入るように命令します。
頭巾は中国語で巾ですから、世間からは黄巾賊と呼ばれました。
ちなみに英語で黄巾賊は
Yellow Turban Rebellion(黄色いターバンの革命軍)と訳されます。
そして張角は
「蒼天すでに死す 黄天立つべし 歳は甲子にあり 天下大吉」
このような、歴史上、超有名なスローガンを掲げて反乱を起こしました。スローガンの意味は、漢の天下は終わった、これからは黄巾の時代だ。それは、西暦184年にやってきて、天下は太平になる。です。
ノストラダムスの大予言は外れましたが、張角の予言は必ず当たります。なぜなら自分達で反乱を起こすからで、これなら百発百中でした。
なんで黄巾なの?
ところで、どうして張角は信者に黄色い頭巾を指定したのでしょうか?
これはイエローが張角のラッキーカラーだから、ではなく当時の五行思想に関係しています。当時、中国では①水(水)②木(樹)③火(炎)④土(地面)⑤金(金属)の5つの元素で世界が構成されると考えられ、王朝も順番に交替すると信じられていました。
そして、後漢帝国は火の帝国でしたので、次は土(地面)になり黄土になります。だから、黄巾賊は黄色の頭巾を頭に被っていたのです。
いい加減だったので半年で崩壊した黄巾賊
張角は、36万人の信徒を36の軍団で分けて、中国各地で蜂起しました。不意を突かれ、おまけに腐敗していた漢帝国の軍隊はろくな準備が出来ず、各地で黄巾賊に敗れ去っていきます。
それを見て、ただの山賊や野盗も、頭に黄色い頭巾を巻いて黄巾賊になりすまし、各地で役所を襲ったり民家から略奪したりします。こうして、黄巾の乱は、あっという間に全国に拡大して大反乱に成長していきました。
しかし、それも最初だけの事で、やがて漢帝国も体制を整えて、まともな将軍に正規軍を指揮させるようになると、元々が寄せ集めだった黄巾賊は各地で敗北していきます。そして、決定的な事が起きます。教祖だった張角が反乱から半年程度で病気で死んだのです。
えー!奇跡を売りにしていたのに、自分の病気は治せないのー!という感じですが、そもそもがプラシーボ効果のインチキ呪術なんですから、本当の病気相手ではどうにもなりません。
張角が死んでしまうと、張角のカリスマ性で持っていた黄巾賊は、教団の核を失い敗北は決定的になりました。
『新解釈・三國志』では、山田孝之さんが黄巾賊をイメージした黄天の逆賊というキャラクターを演じていますが、たった1人で砦を守り、劉備とだらだらどうでもいい会話をするなど、黄巾賊のいい加減さを体現しています。
【次のページに続きます】