新解釈・三國志で山田孝之が演じた黄巾賊は実にいい加減な集団だった


 

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緞帳の前(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)

 

2020年12月11日は、『新解釈(しんかいしゃく)三國志(さんごくし)』の封切り日です。『水曜どうでしょう』でお馴染みの大泉洋(おおいずみ・よう)が三国志演義の主人公、劉備(りゅうび)を演じるという事で、三国志ファン以外にもじわじわと話題になっています。

 

水魚の交わりと説明する劉備

 

『新解釈・三國志』は、三国志を知らなくても十分楽しめると思いますが、少しくらいは知っていた方が、笑えるポイントが多くなると思うので、

 

kawauso

 

今回は三国志記事を書き続けて丸6年のkawausoが、どんだけ三国志初心者でも分かるように三国志を解説します。

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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三国志は腐敗した社会から始まる

餓えた農民(水滸伝)

 

三国志は、今から1800年前の中国のお話です。その頃、中国は後漢(ごかん)という帝国が支配していましたが、建国から160年ほど時間が経過して、すっかり政治が乱れてしまいました。

 

牢獄に入れられる賈逵(かき)

 

役人が腐敗し、庶民は何度も税金を取られ、役人に賄賂を出さないと些細な理由で罪をでっち上げられ、牢獄に入れられるなど酷い状態です。本来なら警察が何とかしないといけない話ですが、警察だって腐敗まみれでまともに機能していません。

 

疫病が蔓延した村と民人

 

人々はすっかり追い詰められ、毎日生きるのが精一杯で絶望に打ちひしがれました。よく世紀末的漫画にもありますよね?こんなシチュエーション。

 

霊感商法で信者を増やす張角

 

そんな中、みすぼらしい男が人々の中に出現し、自分はどんな病気も治せると言い出し、多くの奇跡を起こしてどんどん信者を増やしていました。その名を太平道(たいへいどう)の教祖、張角(ちょうかく)と言います。

 

関連記事:太平道の張角とはどんな人?正体は後漢末期のカウンセラーだった?

関連記事:黄巾の乱を起こした張本人・張角の素顔に迫る!

 

黄色い頭巾の黄巾賊

華佗(華陀)と病人

 

張角の奇跡というのは、病気になった人にそれまでに犯した罪を告白させ、その後にまじないを書いた紙を燃やして水に混ぜ、病人に飲ませて治すというものでした。

 

張角は歴史の表舞台に登場

 

今から見ると、暗示によるプラシーボ効果なんですが、実際に治る人も出たので、次第に人気が出て信者が集まり、10年の間に数十万人という規模になります。

 

太平道の祖・張角(黄巾賊)

 

張角の命令一つで、人殺しでも何でもする信者が数十万人です。こんな部下が大勢いたら、誰だって自分には特別な力があると勘違いしてオカしくなります。

 

暴れる黄巾党と張角

 

張角もやはりオカしくなり、世直しと称して漢帝国を叩き潰して、大平道の教えで世の中を平穏にすると称して宗教反乱を企てるのです。張角は同士討ちを避ける為に、信者には黄色い頭巾(ずきん)を身に着け戦争準備に入るように命令します。

黄巾賊を率いて暴れまわる何儀(かぎ)

 

頭巾は中国語で巾ですから、世間からは黄巾賊と呼ばれました。

 

ちなみに英語で黄巾賊は

Yellow Turban Rebellion(黄色いターバンの革命軍)と訳されます。

 

黄巾の乱に巻き込まれる若し頃の程昱(ていいく)

 

そして張角は

蒼天(そうてん)すでに死す 黄天(こうてん)立つべし (とし)甲子(こうし)にあり 天下大吉」

 

このような、歴史上、超有名なスローガンを掲げて反乱を起こしました。スローガンの意味は、漢の天下は終わった、これからは黄巾の時代だ。それは、西暦184年にやってきて、天下は太平になる。です。

 

炎上する城b(モブ)

 

ノストラダムスの大予言は外れましたが、張角の予言は必ず当たります。なぜなら自分達で反乱を起こすからで、これなら百発百中でした。

 

黄巾賊

 

なんで黄巾なの?

はてなマークな劉備と袁術

 

ところで、どうして張角は信者に黄色い頭巾を指定したのでしょうか?

 

張梁(黄巾賊)

 

これはイエローが張角のラッキーカラーだから、ではなく当時の五行思想(ごぎょうしそう)に関係しています。当時、中国では①水(水)②木(樹)③火(炎)④土(地面)⑤金(金属)の5つの元素で世界が構成されると考えられ、王朝も順番に交替すると信じられていました。

 

劉邦

 

そして、後漢帝国は火の帝国でしたので、次は土(地面)になり黄土(こうど)になります。だから、黄巾賊は黄色の頭巾を頭に被っていたのです。

 

関連記事:火徳とは何ぞや?五行思想?知れば納得あのカラー?

関連記事:王朝交代の背景には中国の五行思想があった!?

 

いい加減だったので半年で崩壊した黄巾賊

三国志のモブ 反乱

 

張角は、36万人の信徒を36の軍団で分けて、中国各地で蜂起(ほうき)しました。不意を突かれ、おまけに腐敗していた漢帝国の軍隊はろくな準備が出来ず、各地で黄巾賊に敗れ去っていきます。

 

黄巾を装着する黄巾賊

 

それを見て、ただの山賊や野盗も、頭に黄色い頭巾を巻いて黄巾賊になりすまし、各地で役所を襲ったり民家から略奪したりします。こうして、黄巾の乱は、あっという間に全国に拡大して大反乱に成長していきました。

 

李典と于禁、黄巾賊

 

しかし、それも最初だけの事で、やがて漢帝国も体制を整えて、まともな将軍に正規軍を指揮させるようになると、元々が寄せ集めだった黄巾賊は各地で敗北していきます。そして、決定的な事が起きます。教祖だった張角が反乱から半年程度で病気で死んだのです。

 

張角逝く

 

えー!奇跡を売りにしていたのに、自分の病気は治せないのー!という感じですが、そもそもがプラシーボ効果のインチキ呪術なんですから、本当の病気相手ではどうにもなりません。

 

敵将に討ち取られる張宝(黄巾賊)

 

張角が死んでしまうと、張角のカリスマ性で持っていた黄巾賊は、教団の核を失い敗北は決定的になりました。

 

新解釈・三國志 門番する不真面目な黄巾賊

 

『新解釈・三國志』では、山田孝之さんが黄巾賊をイメージした黄天の逆賊というキャラクターを演じていますが、たった1人で砦を守り、劉備とだらだらどうでもいい会話をするなど、黄巾賊のいい加減さを体現しています。

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台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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