この記事の目次
一般意志とは?
ルソーの一般意志とは、単純に多くの人が持っている願望ではありません。例えば異性にモテたいとか、大金持ちになりたい、永遠に若々しくいたいというのは、多くの人が持つ願望ですが、これは一般意志ではなく私欲であり、例え何百万人が持っていようが一般意志とは認められないのです。
では、一般意志とは何か?
ルソーによれば共同体の構成員が自分の私的な願望を抑えてでも、達成したいと考えるような、共同体全体の為に必要な行動を一般意志としています。
例えば、共同体の将来の為に子供達に高い教育を施したいとか、共同体の繁栄の為に道路を整備したいとか、港湾を掘削して海外貿易を発展させるとか、不当に逮捕されない為に憲法を改正して法律の不備を直したいとか、このように自分の私利私欲を超えて、共同体全体の為になる考えをルソーは一般意志としています。
そしてルソーは共同体を愛し、同胞を愛する市民なら敢えて議論するまでもなく、誰もが一般意志を持ち、それは議論するまでもなく当然のように全体に受け入れられると書いています。
最後の件はちょっと理想主義過ぎる気もしますが、ルソーの一般意志とは、こういう遠大なモノであると言う事が分かって頂けると幸いです。
関連記事:海賊が建国したイギリスはどうやって生まれたの?英国の歴史(中編)
関連記事:イギリスが7つの海を支配出来たのは「信用」のお陰だった
世界史ライターkawausoの独り言
今回はルソーの社会契約論を解説してみました。
ルソーの慧眼は、人間が自分と自分の愛する者を守る為に争う事を見抜き、この不毛な闘争を回避する為に、社会契約の概念を産み出し、万民が万民の為に命と能力を捧げる事で共同体の中から戦争を無くそうと考えます。
この社会契約により、人民の一般意志を行使する強力な政府が誕生し、国内からは騒乱が消えますが逆に国外においては、国民皆兵により動員された大量の兵力と近代兵器が激突し、国民国家成立以前には、考えられないような甚大な被害が発生するようになりました。
また、市民が全体の利益を忘れ、党派ごとに分断し他派を排斥するようになると社会契約も破綻し、共同体は元の万民の万民に対する闘争に逆戻りするともルソーは説いています。
どんな思想も一長一短があるものなのですね。
参考文献:哲学の名著50冊が1冊でざっと学べる KADOKAWA
関連記事:斬首刑と楽しむ至極のフレンチ!フランス革命とフランス料理の意外な関係
関連記事:古代ギリシャで民主政が大失敗した理由は?