唐突ながら、アジア史ファンの方や日本史ファンの方、三国志を読んでいて一度は、以下のことが、気になったこと、ありませんか?
中国と日本の関係史を含め、アジアの歴史を俯瞰する時に、絶対に出てくるのが、「仏教」の影響力。
その仏教は紀元前の古代インドで誕生し、古代中国にも入ってきていた筈。なのにどうして三国志には「仏教キャラ」がいないのか、と。
この記事の目次
もし三国志に強力な仏教キャラがいたら人気爆発だった筈!!
そもそも日本に住んでいる方で、かつ、ご先祖様のお墓が仏式ならば、法事のたびに目につくのは、お経も漢文、仏具の多くも中国式。いかに日本仏教において中国の影響が大きいか体感されたことがあると思います。
日本史と中国史をつなぐ鍵、「仏教」。さらに三国志は日本でも人気コンテンツ。もし三国志の武将の誰かに熱心な仏教徒がいたら、その武将への日本からの人気はめちゃくちゃ高くなる筈では?
実は超少数派だが存在する「三国志」の中の仏教キャラ!
まず「三国志に仏教キャラはいないのか?」という問いについて、答えを出しておきましょう。実は超少数ながら、仏教キャラはいます。
たとえば、最初は陶謙の部下、後に独立勢力となる笮融が、熱心な仏教徒であり、五千人もの信徒を領国内で生み出していた、と伝えられています。もっともこの笮融、様々な非道の末、
孫策にボコボコにされて非業の死を遂げるキャラですので、この人をもって「仏教代表」とするのはなんだかイメージが悪いですが。結局のところ、どうやら後漢末期および三国時代には、中国ではまだまだ仏教はマイナーな宗教で、単純に寺も信徒も少なかった、ということのようですね。
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こうなったらイフ展開で超有名武将に「仏教徒」になってもらいアジア史を塗り替えてもらおうか!
しかし、先述した通り、日本と中国は「仏教」を通じて深く関係してきた国どうし。となれば、もはや、イフ歴史シナリオでも構わない、誰か三国時代の有名武将に「仏教徒」になってもらい、その力でアジア史を塗り替えてもらいたくありませんか?そこで今回は、かなり突飛な設定と言われることも覚悟の上で、大胆イフ展開をしましょう!
現在、日本各地に関羽廟がある、宗教文化的にも大きな存在の関羽。その関羽が、人生の途上でなんと仏教に目覚めていたら?関羽が道教の信仰対象ではなく、仏教の信仰対象として中国で認知され、その後の日本にも名前が知られていたら?
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あり得たかもしれない関羽の仏教僧としての後半生!
まずイフ設定を固めていきましょう。関羽が仏教に目覚めるタイミングは、彼の実人生のどこに発生し得るでしょう?
考えられるのは、荊州を失った時でしょう。この時、逃げ場をなくした関羽は捕らえられて処刑されることになりますが、ここで関羽が荊州の山奥の仏教寺院に逃げ込み、インドからきた高僧と出会ったとしましょう!
関羽は「命からがら寺などに逃げ込んでしまい、もはや、劉備の兄者に会わせる顔はもうない・・・この世は無常だ、まさに空だ」と悟り、長い髪と髭を沿って仏門に入ってしまいます。
この後、関羽が死んだと誤解した劉備が夷陵の戦いを起こして敗退し急逝。
またその経過で張飛も没します。身分を隠して山寺に籠っていた関羽に、それらのニュースは遅れて入るでしょうが、仏僧関羽としては、義兄弟の相次ぐ死にますますこの世の無常を感じ、修業に集中する後半生を生きるでしょう。
「荊州の山奥に、大柄の入道がいる!修業熱心な上に、しかも強烈なカリスマがある」という話が広まり、荊州の民衆たちが続々と信徒になります。
やがてその正体が関羽とわかり、前半生における軍神としてのイメージとのよい意味でのギャップから、関羽は中国仏教史に燦然と輝く先駆者となるでしょう。
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「兄者!荊州は俺に任せとけ!」「そうか?では張飛に・・・」関羽ではなく張飛を荊州の太守に任じていたらその後の三国志はどうなった?
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このイフ展開で激変するのは中国史よりも日本史!
関羽がそのような生き方をしたら、その後の歴史にどんな影響があるでしょうか?
実は、影響をもろに受けるのは日本史です。
日本に仏教を積極的に導入するのは、ご存知、聖徳太子。
しかし彼が仏教を輸入する時、当時の中国の華厳経や法相宗はかなり難解なエリート向け宗教だったため、これを日本人にわかりやすく説く点で苦労がありました。
ですがこの時点で、関羽という超カリスマ仏僧の伝説があれば、聖徳太子がその知名度を強調しない筈がありません!関羽は、聖徳太子の紹介を通して、古代日本でも大人気な「伝説の仏僧」と認知されたでしょう。そればかりではありません。
「前半生は戦いに明け暮れ、後半生はそれを空しいと感じ仏教に目覚めた人」というキャラクターは、中世日本の武士たちに大人気となったでしょう。
同じように前半生では戦いまみれ、後半生に仏教に埋没した人として、足利尊氏がいますが、もしかするとこのイフ歴史では、足利家の保護を受けるのは、臨済宗ではなく関羽宗かもしれません!
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まとめ:関羽の影響をあの日本の超人僧が受けてしまったら?
もうひとつ、このイフ展開上の日本史では凄いことが起こりますそもそも史実の日本仏教史には、中国に留学して中国仏教を徹底的に勉強し、日本に帰国してからは政治に芸術に教育に慈善事業にと、超人的な活躍をしたヒーローがいます。弘法大師こと、空海です。
この空海が中国留学時に、関羽伝説に憧れ、関羽を自分の理想としたら?史実でも、知力・胆力・政治力すべて天才的な空海が、関羽にならって武術まで習ってしまったら、いったいどんな恐ろしい空海になったでしょうか?
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三国志ライターYASHIROの独り言
知力100、政治100、武力100のスーパーすぎる平安人が生まれたのではないでしょうか?
ここに私は、このイフ設定でもっとも凄まじい日本史への変化は、関羽+空海のハイブリット僧という、とんでもない怪物キャラが平安時代に生まれ大暴れする展開と見ました!さあ果たして、皆様の中でのイフ展開の帰結は、いかがでしょうか?
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