呂布(りょふ)は古今無双の武力を持ち、同時に呆れるほどに裏切りやすいというメリットとデメリットを一人で持っている群雄です。彼は生涯に、6名の群雄の世話になり、また裏切っているのですが、呂布をリトマス試験紙として、群雄の性格診断をしてみましょう。
この記事の目次
1部下の能力を推しはかれない中間管理職止まり 丁原
丁原(ていげん)は并州刺史として、最初に無名の武勇無双の呂布を見出して寵愛し主簿にした、そこそこ人を見る目がある人物です。彼は、一方的に呂布に殺された被害者扱いですが、よく考えると、武勇無双の呂布を主簿という事務官程度にしか考えていなかった為に、上昇志向の強い呂布を繋ぎとめられず、敢え無く殺害されたとも言えます。
その後に呂布を使った董卓(とうたく)は、呂布を騎都尉にして大軍を任せているのですから丁原よりは、ずっと人を見る目があったと言えるでしょう。こうして考えると、丁原は中間管理職が適職でボス向きではありません。
2パワハラに気がつかないガッハッハワンマン社長 董卓
董卓は、呂布をスカウトするのに、赤兎馬(せきとば)、金銭、高位のポストを約束しました。有能な部下をハンティングするのに金も物資も惜しまない頼もしいボスです。そして、約束通り呂布を騎都尉から、中郎将、都亭侯とし、千軍万馬を率いらせ反董卓連合軍を恐れさせました。
こうして、呂布の真価を知っているという点で、董卓は有能で、現代でも、叩き上げのワンマン社長として歴史に名を残すと言えるでしょう。しかし、董卓の欠点は価値観が古過ぎて、パワハラに無関心という点です。「部下は上司に叩かれて、鍛え上げられるズラ」という鉄と人を同一視したスパルタ発言で、機嫌が悪い時に、呂布に手戟を投げつけ不信感を買いました。
いや、親子の関係まで築いた呂布に戟のような刃物を投げてはいかんでしょそりゃ、隙を突かれて呂布に背かれますよ。現在なら、愛の鞭のつもりで部下を殴り警察沙汰になるタイプですね。
3決して大きな事は出来ない小心者 袁術
李傕(りかく)と郭汜(かくし)に長安を追われた呂布は、袁氏の仇である董卓を討った手柄をネタに袁術(えんじゅつ)を頼ります。
この時、袁術は呂布を厚遇したが仕事を与えなかった話と、城門を閉じて入れなかったという話がありますが、いずれにしろ、警戒心が働いて、呂布という豪傑を内側に入れる度量がない小心者の姿が浮かび上がります。これはこれで賢明な判断で、自分が扱えない人間は使わない事です。袁術のようなタイプは大それた事は出来ず、現在に転生しても、小さな会社でボスに収まる程度なら大過なく人生を送れるでしょう。ただ、皇帝即位のような大それた事を考えると破産して無一文になる恐れもあります。どこまでも、小心に小心に世渡りして大吉です。
4部下の主体性を活かせない超管理型上司 袁紹
次に呂布は、李傕と郭汜の賞金首指定から逃れ袁紹(えんしょう)の元へ転がり込みます。その頃、袁紹は黒山賊の討伐で苦戦していたので、呂布の武力を活用しようと配下に組みこんで、見事、黒山賊を崩壊させています。しかし、その後、呂布がその手柄を鼻にかけて、横暴な振る舞いをすると呂布を疎んじるようになり、呂布がそれを察知して暇乞いをし領内を去ると報復を恐れて、呂布を殺そうとし、失敗すると言う始末です。
この、部下の主体性を認めない狭量さは、袁紹の性格ですが、それでいて、見た目は寛大に振る舞うので始末におえません。口では「私は君達の自由な意見を求めているよ」と言いながら、少しでも、自分の許容範囲を超えると疎んじてクビにします。袁紹が現在の社会に転生していれば、その部署は規律、規律で息苦しく、一見、纏まっているようですが、裏では悪口が渦巻くでしょう。
5ただのいい人、人畜無害な 張楊
袁紹の元を脱出して、呂布が頼ったのは、同じ并州出身で丁原の部下として同僚だった張楊(ちょうよう)でした。元々、張楊が袁紹と険悪であった事もありますが、張楊は良い人だったようで同郷の誼で呂布を庇い続けました。一説では、李傕・郭汜から、呂布を殺すように圧力を掛けられましたが、呂布が堂々と振る舞っているので、言いだせなかったようです。
こうしてみると張楊の高感度アップですが、折角の呂布の武力も活かせず、ただ、世話をしていただけでは、とても天下は遠いでしょう。酷評ですが、どこにでもいる人が良いコンビニの店長という感じでしょうか。アルバイトの出勤ドタキャンも叱れず、自分が出勤して埋め合わせ部下に振り回されて損をするタイプです。まあ、それでもいいと納得しているなら、大過なく過ごせ、人望もそれなりに集まる一生を送れるでしょう。
6最強ベンチャー事業主 でも補佐がいないと破滅 劉備
その後、呂布は張邈(ちょうばく)と陳宮(ちんきゅう)に担がれて兗州のボスとして曹操を陥れますが、巻き返され、結局、両二年では兗州を追い出され、徐州牧になったばかりの劉備(りゅうび)の元に転がり込みます。
基本、劉備という人は、ベンチャー精神の塊のような人で、とくに困難な状況で判断力が冴えるという個人事業主の鑑ですが、この時は、呂布の一貫性のない説明に不快感を抱きつつも、天下の豪傑を配下に加えるという目先の利得に囚われてしまいます。そして、ついつい呂布を引きこんでしまい、徐州を乗っ取られる悲劇に見舞われてしまうわけです。どうも劉備は窮地を切り抜ける才能はありますが、安定すると、次に何をしていいか分からなくなり、大きな事をして大失敗をやらかす二面性を持っているようです。
この時も思いがけず徐州牧になり、今後どうしようと思案している隙を呂布に利用されてしまったと言えるでしょう。劉備のようなタイプが大成するには、将来のビジョンを持ち、ダメな事はダメと釘を刺せる孔明(こうめい)のような補佐が必要でしょうね。
三国志ライターkawausoの独り言
以上、六人の群雄の性格を呂布を受け入れた時の対応で鑑定してみました。案外、史実と違わない性格で、やはり呂布はリトマス試験紙として、なかなか使えるなーと個人としては思いました。
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