今回は水滸伝の好漢たちの中でもひときわ異質とも言うべき存在、入雲龍こと公孫勝についてご紹介します。梁山泊の中では呉用先生と一緒に軍師を務めていますが、知略策略というよりは三国志演義での諸葛亮の如く超常現象を巧みに操る正に仙人そのもの。
この摩訶不思議、異色の存在をご紹介したいと思います。また、最後の方では少しだけ北方水滸伝における公孫勝のご紹介もしようと思います。こちらはまた趣が違って、良いキャラクターなのでお楽しみに!
この記事の目次
- 梁山泊の第四位「入雲龍」公孫勝とは?
- 「入雲龍」のあだ名の由来と意味
- 梁山泊における序列と役割(軍師・祈祷師)、なぜ彼は他の好漢たちとは一線を画す存在なのか?
- 公孫勝の生い立ちと初期の活躍
- 薊州の道士としての修行時代
- 晁蓋・呉用との出会いと「七星聚義」の結成
- 公孫勝の能力・道術の凄まじさ、五雷天心の法: 天候を操り、雷を落とす必殺の術
- 幻術破り: 敵が繰り出す妖術を無力化する圧倒的な精神力
- 公孫勝vs 高廉: 猛獣を操る妖術を「五雷法」で打ち破る
- 公孫勝vs 喬道清(田虎軍): 史上最大の道術バトル
- 樊瑞(混世魔王)を弟子にする圧倒的な実力差
- 公孫勝はなぜ梁山泊を去ったのか?
- 伝説の師匠「羅真人」との絆……二仙山での修行と二句の予言
- 師匠から禁じられていた「俗世への関わり」と葛藤、そして物語の鍵を握る羅真人の教え
- なぜ公孫勝は最強であり続けられたのか?
- まとめ:公孫勝が現代ファンにも愛される理由
- 公孫勝のチート級の強さと、それに溺れないストイックさ
- 水滸伝ライター センのひとりごと
梁山泊の第四位「入雲龍」公孫勝とは?
公孫勝は天罡星三十六星の天間星の生まれ変わりで、序列第四位の好漢。そして他の好漢たちとは一線を画す存在である、道士(修行中)でもあります。梁山泊での役割は一応、「軍師」となっていますが、巧みに道術を操って梁山泊の仲間たちを助ける姿は、祈祷師、もしくは妖術使いと言った方が正しいかもしれません。
「入雲龍」のあだ名の由来と意味
そのあだ名は「入雲龍」。これは道術で風雨を呼び、霧にまたがってまるで龍のように雲に昇ることができることから名付けられています。
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梁山泊における序列と役割(軍師・祈祷師)、なぜ彼は他の好漢たちとは一線を画す存在なのか?
雲と龍が揃って、立場は軍師。此処から既に、どこか諸葛亮を思わせる描写が感じられるのは筆者だけでしょうか?個人的にかなり意識されてキャラクターデザインされていると思うのですが……では、その公孫勝の生い立ちから見ていきましょう。
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公孫勝の生い立ちと初期の活躍
前述したように公孫勝は道士です。その師匠は薊州の二仙山に住む老道士である羅真人。
薊州の道士としての修行時代
しかし道士とは言ってもこの羅真人は既に人智を超越し、仙人とも言える存在であり、搭乗時には既にこの羅真人からいくつもの方術を授けられています。
晁蓋・呉用との出会いと「七星聚義」の結成
その登場は「七星聚義の結成」から。豪傑にして最初の梁山泊の棟梁となる晁蓋に、宰相に送られる誕生日祝いの「生辰綱」を奪おうという話が持ち掛けられます。この「生辰綱」は民の血税からなされた財……まあとても品のない言い方をすれば、血税横領品とも言える存在なので、奪っちゃおうぜ!ということになりまして。
晁蓋は呉用に相談して、阮小二、阮小五、阮小七、白勝、そして公孫勝に声がかけられます。こうして集った七人、七つの星による生辰綱奪取が行われますが、更に公孫勝の凄まじさを見せつけられるのは、これから後の「妖術勝負」によるものです。
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公孫勝の能力・道術の凄まじさ、五雷天心の法: 天候を操り、雷を落とす必殺の術
その使用された凄まじい道術をいくつかご紹介しましょう。まずは柴進救出時による高廉との戦いで用いられた五雷天心の法。敵である高廉の道術に苦戦した梁山泊、これに対抗すべく修行中の公孫勝を呼び戻しに行くのですが、この際に師匠である羅真人が(渋々)授けてくれたのが五雷天心の法。これは雲の中から黄金に輝く戦士を呼び寄せて戦わせるもので、公孫勝の必殺技とも言える道術です。
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幻術破り: 敵が繰り出す妖術を無力化する圧倒的な精神力
これには同じような術があり、喬道清が妖術で無数の戦士を召喚して戦わせることで梁山泊は苦戦を強いられましが、この術は公孫勝が一喝するだけで無力化、戦士は紙に戻ってしまいます。また、高位の存在である龍を呼び出す「入雲龍」の名に恥じない道術も備えており、かなりファンタジックな、それでいて華々しい戦いを見せてくれるのが公孫勝なのです。
公孫勝vs 高廉: 猛獣を操る妖術を「五雷法」で打ち破る
ここでそのシーンを若干ネタバレながらご紹介しましょう。まず紹介するのが高廉との戦い、妖術による暴風や砂嵐、そして様々な猛獣を召喚してくる高廉に、当初公孫勝のいない梁山泊は成す術なく退却します。ここで呼び出された公孫勝、妖術を打ち破り猛獣を封じます。配下を失い、包囲されてしまった高廉は逃走を試み雲に乗って逃げようとするのですが、これを「五雷法」を用いて打ち取るのでした。
公孫勝vs 喬道清(田虎軍): 史上最大の道術バトル
更に強敵、喬道清との戦いでは水滸伝屈指の妖術バトルが開幕。喬道清の呼び出した三匹の龍に対抗してこちらも龍や大鵬までも召喚、最終的に公孫勝には敵わないと逃げ出す喬道清でしたが、後に同門であったことが判明して投降してきます。
樊瑞(混世魔王)を弟子にする圧倒的な実力差
またこの喬道清に敗れた味方の樊瑞は、後に公孫勝に弟子入りします。この樊瑞はあだ名を混世魔王といい、西遊記にモチーフになった妖怪がいることから、公孫勝の能力の高さを伺い知れますね。
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公孫勝はなぜ梁山泊を去ったのか?
そんな大活躍納公孫勝ですが、実は梁山泊で最も早く仲間から離脱します。王慶討伐戦後、宋江たちは凱旋しますが、その夜に公孫勝は宋江へ軍を離れて山に帰り、仙人としての修業を再開すると告げました。実は公孫勝は宋江たちに同行する際に、師匠である羅真人は宋江に「弟子が暇乞いをした際には必ずお返しくださいますように」と約束をしていました。このため宋江も引き留めることはできず、仲間たちは宴を催して選別を渡し、再び公孫勝は仙人としての修業の日々に戻ります。
……この後の梁山泊を待ち受ける悲劇を思えば、これ以上ないベストタイミングでの離脱です。しかも活躍に活躍を重ねてからの惜しまれての離脱、これ故に梁山泊の中でも公孫勝は「勝ち組」とも言われているのですね。
伝説の師匠「羅真人」との絆……二仙山での修行と二句の予言
では羅真人と公孫勝のお話もしていきましょう。羅真人は薊州の二仙山にある道教の寺の尊師であり、公孫勝はその一番弟子です。宋江が梁山泊に父親と弟を呼び寄せたことがきっかけで、公孫勝は老いた母と師である羅真人を思い出し、百日経たぬ間に戻ってくると約束して薊州に戻ります。しかし公孫勝は戻ることなく、宋江たちは高廉に苦戦して何とか公孫勝を探し出します。
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師匠から禁じられていた「俗世への関わり」と葛藤、そして物語の鍵を握る羅真人の教え
実はこれ、師匠である羅真人は公孫勝の梁山泊入りを良く思っていなかったから戻ることができなかったのですね。
ここで李逵がやらかして羅真人にお仕置きされたりしますが、公孫勝は送り出され、四年後に宋江たちと師匠の元を訪れます。この際に宋江は「これからの予言をお聞かせください」と羅真人に頼み、羅真人は「これから貴方は高官となり、死後は神として祀られるでしょう。しかし有終の美を飾ることはできないので、成すべきことをした後は身を引くことが大事です」とこれからのことをドンピシャで予言します。この後に羅真人は宋江に「弟子の公孫勝は貴方方と同じ星の生まれではあるために引き留めないが、成すべきことをして暇乞いをした際には帰らせて下さるように」と告げました。
この事から羅真人は悪星の生まれではあっても公孫勝を弟子として可愛がっており、目をかけ、更には悲劇の終わりを迎えないようにと配慮していることが読み取れます。
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なぜ公孫勝は最強であり続けられたのか?
同時に、公孫勝自身に暇乞い、つまり仙人としての修業の再開を促すのではなく、自らの意思で修業を選んで戻ってくることも示唆しています。公孫勝が勝ち組と言いましたが、公孫勝は最後には自ら修業を再開する道を選んだことを踏まえると、彼が悲劇を迎えず、最後までその強さを示せるだけの精神的な成熟性も持っていたんだなぁと思いますね。
まとめ:公孫勝が現代ファンにも愛される理由
公孫勝、水滸伝の登場人物の中でも異色でありながら、異端ではない登場人物です。登場人物全般に中々癖のある人物が多いのですが、その中でも公孫勝は最強格の強さを持ちながら、さりとてその格が落ちることはありません。更にはその強さに驕ることなく、最後は師匠の下に戻って再び仙人としての修業を再開する……悲劇から逃れ切ったキャラクターです。このため、水滸伝の登場人物の中でも素直に好き、と言える人物と思いますね。
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公孫勝のチート級の強さと、それに溺れないストイックさ
さて、最後に少しばかり紹介したいのが北方水滸伝の公孫勝。この北方水滸伝では妖術と言ったものが登場しないので、公孫勝は妖術使いではありません。なのでチート的な武力はなく、戦局においてはひやりとする場面もございます。
また林冲とは反りが合わず、顔を合わせれば口喧嘩ばかり。……と、ここまで書きましたが、これらのキャラクター性が非常に噛み合っており、実に良い登場人物となっております。チート級の強さを持っていなければ公孫勝じゃない!という方でなければ、ぜひ北方水滸伝での公孫勝をお楽しみください。筆者自身が、かなり魅了された北方公孫勝、おススメですよ!
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水滸伝ライター センのひとりごと
チートだなんだと言いましたが、公孫勝は実に癖なくまとまったキャラクターであると思います。他のキャラクターではありがちな途中途中に挟まる悲劇(朱仝とか朱仝とか美髭公とか……)もなく、活躍の場はしっかりと描かれ、何よりも最後が早くはあるものの奇麗に終わります。
これは魯智深もそうなのですが、師を大事に思っていたり、最後には悟りに至ったりする人物に割と辺りが柔らかいですね、水滸伝の筆者は。悪星の生まれ変わりではあるものの、人によってはしっかりと成すべきことを成す、そういった人物には更にしっかりと「終わり」を与えているのが水滸伝である、と公孫勝を見ていると思います。退場こそ早いものの、実に奇麗にまとまった公孫勝、ぜひ水滸伝本編だけでなく、かなり癖を強めている北方公孫勝も合わせて、まだの方はぜひ見てみて下さいね。ちゃぽーん。
参考:水滸伝 北方水滸伝
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