ここから考察に入ります。先週の887話の記事では、おとぼけは、カイネは河了貂を自分の手元へ引き取って守る、と予想していましたが、いやー、気持ちいいくらいに外れました。
ここでお詫び申し上げます。実際の888話では、河了貂の身柄の移送はあっさり拒まれ、カイネが取ったのは、自分のほうが牢に入る道でした。趙忽とぶつかる回が挟まると書いたのも半分外れで、ぶつかった相手は趙忽本人ではなく副将の趙備明でした。
関連記事:キングダム887話ネタバレ考察|河了貂は生きていた。カイネはなぜ味方を殴ったのか
関連記事:キングダムのカイネとは?李牧との関係と雁門の過去、史実に実在するのか
この記事の目次
キングダム888話考察|カイネはなぜ河了貂を連れ出さず、本隊だけを先に戻したのか
カイネの前にあった選択肢は、力ずくで連れ出すか、手を引いて立ち去るかの二つしかありませんでした。強引に連れ出せば同士討ちとなり、将軍の地位すら剥奪されます。かといって立ち去れば、暴虐な兵たちが即座に戻ってきます。そこでカイネが選んだのは、第三の道でした。河了貂を外へ出せないのなら、自らが牢の中に入り込む。根本的な解決には程遠く、明日になれば趙忽による過酷な尋問が待っています。しかし、カイネは「今夜を無事に越すための時間」をもぎ取りました。八方塞がりの状況下で、個人の力で打てる最大限の手を打った形です。
一番のミソは、本隊を先に持ち場へ戻したところです。牢に残るだけなら、感情で動いた将軍の話で終わります。ところがカイネは、部下から軍が動けなくなると言われた瞬間に、本隊を展開させる命令を出しました。河了貂のそばに残ることと、万の兵を預かる将軍であることを、両方とも捨てていません。
夜通しの付き添いに近いかもしれません。病院の待合室で、家族の様子を見に行くことしかできない夜。何かができるわけではないのに、席だけは離れない夜です。カイネがやっているのは、そういう種類のことだと思います。
ただ、この時間には期限があります。城外の部隊は早朝には持ち場へ戻る予定で、カイネの保護もそこまでが限度です。朝が来たとき、カイネは席を立てるのか。どうですかね。
キングダム888話レビュー考察|趙備明はなぜ引き下がったのか。李牧と郭開の力関係
趙備明が退いた理由に、軍令も良心も入っていません。部下に説明した言葉は、今は民衆の李牧への支持が高くて郭開の方が弱い、だから耐える、でした。カイネの主張が通った、という話でもありません。政治の風向きが、今日はたまたまカイネに向いていただけです。
裏を返すと、風向きが変わった日には同じ牢で同じことが起きます。趙備明はそれを隠しもせず、将来の報復まで口にしました。
国の宰相であり全軍の総司令でもある李牧が発した捕虜暴行の禁止令が、前線の副将ひとりによる「尋問だ」という屁理屈で握りつぶされてしまう。この描写は、趙軍内部に李牧の号令が届かない空白地帯が存在することを如実に物語っています。
これは李牧個人の統率力の問題にとどまらず、郭開という政敵の専横を許したまま戦争を続けざるを得ない趙国の構造的欠陥です。今宵カイネが強行突破できたのは、民衆や軍内に李牧への信望がまだ残っているからに過ぎません。その政治的均衡が崩れた瞬間、真っ先に粛清の刃を向けられるのは、軍律を無視して敵の軍師をかばったカイネ自身であるはずです。
887話の記事に、こんなコメントをいただきました。
「カイネは逃すと思います。カイネの人としての行動は間違ってないけど、自分の夫を葬る事に日夜知恵を絞っている敵国の軍師を匿う事は危険過ぎないでしょうか。今回の件はいずれ郭開の耳にも入るでしょうし。それから雷の描写、あとで何かに影響するのかなとなんだか気になります」
ありがとうございます。カイネの人としての行動は間違っていない、というところは同じ思いです。ただ、このコメントのとおり、あの行動は李牧にも迷惑をかけることになります。今週の趙備明の、無礼は李牧にも迷惑を及ぼすという牽制が、まさにそれでした。
そこで気になるのが、来週は李牧の回想に入りそうな点です。李牧の権威を使って河了貂を守る道もあれば、先に持ち場へ戻ったカイネ軍の兵が、急いで李牧に伝えている可能性もあります。
ここからは、おとぼけのとんでも予想です。李牧は敵の軍師である河了貂を助けるために無茶をして、それが元で誅殺されてしまう。そして李信は、李牧の仇を取るために、李牧の政敵だった郭開を代わりに倒す。そんな流れになるのではないでしょうか。深読みしすぎですかねぇ。
キングダム888話考察|サブタイトル「戦争」は何を指しているのか
読み終えてタイトルに戻って、しばらく考えました。
「戦争」という言葉は、本編では河了貂の口から出ます。仕方のないことだ、それが戦争だ、と泣きながら吐き出したカイネの問いに答えた場面です。
ここで描かれた「戦争」とは、単に秦と趙の国家間の武力衝突だけを指しているわけではないはずです。
カイネにとって、命を賭して守りたい対象は敵国の軍師であり、刃を向けねばならない相手は味方であるはずの趙兵でした。国家が都合よく引いた「敵と味方の境界」と、血の通った一個人が心の中に引く「大切な者の境界」が激しく乖離してしまう。その不条理と矛盾の総体を、河了貂は「戦争」という一語に込めたのではないでしょうか。
禁じられた暴虐が平然とまかり通り、それを制止した忠義の士が軍律違反として断罪されかける。道義や理性がことごとく反転してしまう極限状態そのものを、原泰久先生は「戦争」という題名に仮託したように思えてなりません。
扉絵の二人は城壁に並んで座っています。本編の二人が並んで座ったのは、牢の壁際でした。読み終えてから扉絵に戻ると、同じ並び方が少し違って見えます。あの扉絵、どう受け取りましたか。
キングダム889話予想|雁門の回想は続くのか。李牧とカイネの出会いはどう描かれるのか
ここからが、待ちきれないところです。本命は、回想がそのまま続く、です。
理由は最後のコマです。妹の死を語ったカイネの言葉に重ねて雁門の襲撃が描かれ、最後に馬上で手を上げる李牧が来ました。この順番で終わっておいて、次の話で牢の現在にすぐ戻るとは思えません。カイネが忘れていたと言った記憶が、なぜ今になって戻ってきたのか。そこを描くには、カイネがどうやって李牧に拾われたのかまで見せる必要があります。
『史記』では、李牧は雁門に駐屯して匈奴の大軍を破った将軍として書かれています。作中の李牧も、北方出身のカイネをずっと側に置いてきました。今週の回想は、その原点に触れる入口に見えます。ただ、赴任した李牧が雁門で何をしたのか、カイネがどの時点で軍に入ったのかは、まだ一コマも描かれていません。ここは予想として書いています。
気になるのは、回想の長さです。1話で終わるのか、数話続くのか。数話続くなら、河了貂の翌日はその分だけ先送りになります。読者は牢の朝を待たされたまま、雁門の過去を見せられることになります。現在の危機を宙づりにしたまま過去を長く描く形は、原先生がこれまでも何度もやってきたやり方です。今回もそれだと思っています。
対抗は、回想が短く終わって翌朝の牢に戻る展開です。この場合、趙忽が戻ってくるところまで889話で進む可能性があります。
もう一つだけ。カイネが河了貂に重ねたのが妹だとして、李牧がカイネに重ねてきたものは何だったのか。回想が続くなら、そこも見えてくるかもしれません。回想、何話続くと思いますか。
キングダム889話はどうなる|河了貂は趙忽の尋問から助かるのか
回想が続くなら答えは先送りですが、いずれ朝は来ます。そのとき河了貂を守れるものが何か、今週の時点で分かっている材料を見ておきたいところです。カイネの保護には期限があります。早朝には城外の部隊を持ち場へ戻す手はずで、カイネ自身も万の軍を預かる将軍です。夜が明けたら、牢に居続ける理由がなくなります。
李牧本人は現在の牢に来ていません。今のカイネがどこまで李牧に報告しているのかも描かれていません。カイネが李牧に使いを出していれば、李牧の側から趙忽軍へ圧力がかかる道はあります。ただ、その描写は今週ありませんでした。
秦側はもっと遠くにいます。信たちは河了貂の生存すら知りません。887話の時点で斥候は出していましたが、今週は秦側の場面が一コマもありませんでした。
こう見ると、翌朝に間に合うのは、カイネが趙忽本人と直接話をつける道くらいだと思います。趙備明は副将で、趙忽は将軍です。趙備明の判断が「今は耐える」だったのなら、上の趙忽が同じ判断をする可能性はあります。李牧の側近に手を出す損得を、趙忽がどう見るか。
おとぼけの読みは、河了貂は死なない、です。ただ、無傷で戻れるとも思っていません。887話で生け捕りに切り替わったときと同じで、助かる理由に優しさが入っていない気がしています。趙忽は、カイネの顔を立てるでしょうか。
みなさんはどう読みましたか
今週の分かれ目は二つあると思います。
一つは、朝が来たとき、カイネは河了貂を置いて持ち場へ戻れるのか。戻ると読む人も、戻れないと読む人もいそうですね。もう一つは、河了貂に妹を重ねていたという説明を、どこまで受け取るか。カイネ本人が似ているわけではないと言っている以上、そこは読む人によって受け取り方が変わるところだと思います。コメントで教えてください。次回の記事で紹介させていただきます。
キングダムライターおとぼけの独り言
忘れていた、の一言が、まだ頭に残っています。
小犬のようについて回った妹のことを忘れるほどつらかった記憶が、牢へ向かう途中で戻ってきました。カイネは河了貂のために走っていたつもりで、途中から誰のために走っていたのか分からなくなっていたのかもしれません。扉絵の城壁に並ぶ二人が、読み終えたあとで少し違って見えました。なんだか、切ないですね。
それでは兄弟たちよ、また木曜にお会いしまっせ!
▶次回予想記事:キングダム889話予想考察|史実の李牧は「臆病者」と呼ばれていた
▶次回記事:キングダム889話ネタバレ考察|李牧の最初の命令は「不戦逃避」
関連記事:【キングダム】河了貂(かりょうてん)は本当にポンコツなのか?検証してみる
関連記事:李牧は、いつ誰にどのように誅殺される?趙の滅亡やカイネのその後を簡単に解説











