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三国志の隠れた名策![韜晦の計]で見る鷹の爪

2024年6月14日


鳥丸族(烏桓族)侵入に頭を悩ます曹操

 

大空を気持ちよさそうに旋回する(たか)。見ていると何だかこちらの心も大きくなるような優美さ。彼らは大空を飛んでいるとき、その力強い脚を小さく小さく折り曲げているのをご存知ですか?

 

そんな彼らも獲物を見つけると、獲物に狙いを定めつつ、徐々に高度を下げていきます。そしていざ、獲物につかみかかろうというその瞬間、その脚をグワッと広げて襲い掛かるのです。上下方向の遠近感に疎い獲物は、脚を小さく畳んで遥か上空を旋回していたかに思われた鷹に突然首元を捕まれて「ギッ」と小さく悲鳴を上げますが、なすすべもなく連れ去られてしまいます。

 

司馬懿と曹操

 

 

そんな鷹の狩りの様子を見た人が「能ある鷹は爪を隠す」という言葉を作ったのだとか。

 

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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韜晦の計

陳平

 

自分の手の内を相手に悟られないように隠すことができるのは、何も鷹だけではありません。人間も自分の身分や本心、才能、その他諸々のデータを隠しておきたい生き物。特に、それほど親しくない相手や、むしろ敵対関係にある相手には自分のことをなるべく隠しておきたいもの。実際、日常生活を営んでいくに当たり大なり小なり誰もがこの「韜晦(とうかい)」を巧みに使って人間関係を円滑にしようと鋭意努力しています。

 

その中でも、特に相手に油断させるために自分を実際よりうんと小さく見せ、いざというときに本領を発揮して相手を打ち負かそうという計略は「韜晦の計」と呼ばれています。そんな「韜晦の計」が使われた名場面が『三国志』にもあるのです。

 

 

 

劉備、雷を恐れる

呂布と劉備

 

曹操(そうそう)に敗れてボロ雑巾のようななりで劉備(りゅうび)の元に転がり込んできた呂布(りょふ)。せっかく助けてやった劉備ですが、留守にした途端、不義理の代名詞・呂布に徐州をまるっと乗っ取られてしまいました。

 

曹操と呂布と劉備

 

兵を集めて奪い返そうとしますが、呂布にあっさり負けてしまった劉備は仕方なく曹操の元へ身を寄せます。いつかは必ず対峙しなければならない曹操に手の内を晒すわけにもいかず、兵の訓練をするでなく、農夫よろしく畑を耕す日々をおくる劉備。

 

劉備

 

これで曹操も私を凡夫だと思うだろう…。しかし、ある日の会食の最中、曹操がこんなことを聞いてきます。

 

「君は天下の英雄といえば誰を思い浮かべるかな?」

 

突然の質問に、その意図も推し量れずにしどろもどりになりながら、「袁紹様でしょうか…?」ととりあえず答えてみた劉備。ところがこれに対して曹操は次のように言い放ちます。

 

劉備と曹操

 

「袁紹など大した器ではない!今、天下の英雄と呼べるものは2人だけ。私とあなただけだ!」

 

この言葉を聞いて、驚きのあまり箸を落としてしまった劉備。同時に、ピシャーン!と落ちる雷。演出ではなく、本当に雷がその瞬間に落ちたのです。

 

曹操に雷が落ちて驚く劉備

 

急いで身を屈める劉備。これを見て、劉備が雷に驚いたのだと思った曹操は高笑い。その時劉備は曹操に自分も天下を狙う者の一人だと見破られたことにドキドキしていましたが、とっさに雷を怖がったふりをして、曹操に「思ったより大したことのない奴なんだな」と思わせることに成功しています。これが劉備のファインプレー・韜晦の計なのでした。

 

 

 

司馬懿、ボケ老人を装う

ボケ老人を装う司馬懿

 

曹丕(そうひ)曹叡(そうえい)と2代にわたって魏を支え続けた司馬懿(しばい)ですが、曹叡の死後、次期皇帝曹芳(そうほう)の補佐を共に託された曹爽(そうそう)にひたすら目の敵にされてしまいます。魏をほしいままに操りたい曹爽は司馬懿を名ばかり名誉職の太傅(たいふ)に任じますが、司馬懿なしで他国とやりあうことはできなかったため、相変わらず司馬懿は軍事権を持たされていました。表向きは対立していないかのように見えた両者でしたが、司馬懿が反対し続けていた蜀漢出兵に曹爽が失敗してからはその争いが表面化。

 

司馬懿

 

 

司馬懿がどんなに忠告しても聞き入れず失敗を重ねる曹爽。それが嫌になった司馬懿は年も年だし病気だしということで引退を決意します。

 

年を取った司馬懿

 

ところが、「あの爺がそう簡単に引き下がるわけがない」と思っていた曹爽は見舞いという名の探りを入れるための使者を出します。目をつけられているなと悟った司馬懿は、見舞いの使者の言葉を何度も聞き間違えたり、薬をダラダラとこぼしてみたりと、テンプレのようなボケっぷりを演じて見せました。

 

曹爽

 

それを聞いて安心しきった曹爽。ついに我が世を手に入れたと大喜びします。ところが、それほど時を待たずして司馬懿は油断しきっている曹爽の背中に突然襲い掛かるのでした、相手を油断させる鷹のような知恵。老いても変わらぬ司馬懿の聡明さには脱帽します。

 

※この記事は、はじめての三国志に投稿された記事を再構成したものです。

 

 

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