三国志に限らず、中国の歴史に度々、登場してくる仙人、人を助けたり、
権力者をからかったり、殺されると相手が死ぬまで復讐するなど、
純粋で子どものような性格の人物が多い感じです。
そんな仙人、皆さんは、どういうビジュアルイメージをお持ちですか?
実は、三国志の時代の仙人は、私達のイメージする仙人とは、姿が違うのです。
この記事の目次
白ひげ、白髪、空に漂う仙人イメージ
さて、皆さんは仙人にどういうイメージを持っているでしょうか?
最近は、封神演義などで、若いイケメン道士、仙人が登場しているので、
少し違うかも知れませんが、昔話のイメージでは、年寄りで、
白ヒゲ、白髪、白い衣服を着て、杖をつき、空を飛ぶ
そういうイメージではないでしょうか?
事実、仙人とは、古くは遷人(せんにん)と書いていたようです。
遷とは、ただようという意味があり、古くは、山の麓にたなびく、
白い雲を仙人が漂っていると見立てたのが元だと言われます。
三国志の時代の宴会の様子では、仙人に翼が生えていた!
しかし、そのイメージは、三国志の時代まで遡ると、
当てはまらなくなります。
当時の墳墓などに描かれたお目出度い宴会の場面では、
宴の出し物に仙人が登場する演目があるのですが、
仙人を演ずる少年には肘と腿に翼が描かれていて、
また大きな耳がついていました。
そう、当時の仙人は、目に見えない不思議な力で飛ぶのではなく、
自分の肘と腿に生えた翼を使い飛んでいくイメージなのです。
死者に祈りを捧げる後漢時代の壁画にも、翼の生えた仙人が
旅大市(りょだいし)営城子(えいじょうし)の1~2世紀の壁画には、
死んだ肉親に祈りを捧げている生者と、同じ場面に埋葬された死者と従者、
そして、死者を迎えに来た天界の老人が描かれていますが、
ここでも、ウネウネとした雲に乗る、肘と腿に翼の生えた人物が、
仙人として登場しているのです。
ここでは、雲、仙人の乗物という定義付けがされてきたようです。
孫悟空のように自在に空を飛ぶわけではありませんが、
ウネウネとした雲に乗って地上に降りて来るという絵を描く事が、
仙人のアイコンになっていったのかも知れません。
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仙人とは別、神が乗る乗物は猛獣
封神演義には、太公望(たいこうぼう)が乗る、四不象(しふぞう)や、
申公豹が乗る白額虎(かくがくこ)という猛獣が描かれていますが、
それも、紀元前2世紀の玉器のデザインとして出てきます。
ここでは、神が跨った豹がうずくまるというデザインになっています。
豹以外にも、神の乗物には、麒麟(きりん)や鳳凰(ほうおう)という動物が存在します。
これらは神の乗物として、使役されていたようです。
仙人とは違い、神は全く人間の姿なので自力で空を飛ぶ事は出来ず、
これらの猛獣の力で、天に駆け上がるとイメージされたのでしょう。
目に見えないミラクルパワーというのは、イメージとしてあったかも
知れませんが、当時の絵画表現では、目に見えないパワーを
表現するのが難しいという事情もあったかも知れません。
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三国志ライターkawausoの独り言
三国志の時代までは、びっくり鳥人間だった仙人が、
一般的なイメージの白ひげの杖をついた仙人になったのか、よく分かりません。
しかし、どうやら、中国史に出て来る神や仙人は、紀元前の昔には、
羽、山羊の角、大きな耳という異形の相だったのが、時代が進むにつれて
獣的なイメージが抜けて、人間化していったようです。
ここには、以前は自然を恐れていた人間が、やがて自然を征服し、
人間中心主義の時代に至るに従い、神や仙人も、
自分達に似せるようになった、という考え方の変化があるようです。
本日も三国志の話題をご馳走様でした。