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冒頓単于(ぼくとつぜんう)とはどんな人?漢帝国の宿敵で匈奴の名君Part.2【完】

2016年5月25日


 

劉邦

 

高祖劉邦との戦い:その1

冒頓(ぼくとつ)は漢の皇帝劉邦(りゅうほう)が大軍を率いて、

援軍に来たと知ると、一つの策を用います。

その策とはあえて撤退し、伏兵が居るところまで漢軍を誘い込み、

漢軍を撃滅するという作戦です。

冒頓は早速、漢軍に攻撃を仕掛けます。

劉邦は漢軍と匈奴軍が激しい戦いを始めると思いきや、突然匈奴軍が撤退を開始。

劉邦は諸将に命じて匈奴軍へ追撃を行います。

冒頓は漢軍が匈奴軍を追ってきている事を確認すると、

伏兵が居る場所に漢軍を誘います。

 

前回記事:冒頓単于(ぼくとつぜんう)とはどんな人?漢帝国の宿敵で匈奴の名君Part.1

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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劉邦との戦いその2:漢軍を白登山に追い込む

祁山、街亭01

 

冒頓は伏兵が居るところまで漢軍を誘い出すことに成功。

その後漢軍に向かって猛反撃を開始します。

劉邦率いる漢軍は匈奴軍の精鋭騎馬隊の反撃を打ち払う事が出来ず、

白登山(はくとうざん)へ逃げ込みます。

冒頓は白登山を重厚に包囲し、漢軍を一人も出させないようにします。

劉邦は白登山へ逃げ込みますが、すぐに兵糧が尽き、絶望的な状況に追い込まれます。

 

陳平の奇策

陳平

 

漢帝国の功臣者で、張良(ちょうりょう)に匹敵すると言われた陳平(ちんぺい)はこの状況を打開する為、

単于の妻妾に大量の賄賂を贈ります。

彼は賄賂と共に手紙を同封させます。

その手紙には「包囲を解くように単于を説得していただけないか。

もし白登山の包囲が解けた時は、さらにあなたへ贈り物を送らせていただく」と

記した手紙を送ります。

単于の妻妾は陳平の策に嵌り、単于に包囲を解くよう懇願。

 

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陳平の奇策により包囲が解かれる

陳平

 

冒頓単于は妻妾の話を聞き、悩みます。

彼は先に降伏させた韓王信(かんのうしん)の配下に別働隊を率いさせて、

合流の手筈を整えていたのだが、その軍勢が表れない事に不信感を募らせておりました。

その為、このまま包囲を続けるかどうか迷っている所に、

妻妾の懇願を聞きます。

冒頓は迷いますが、ついに撤退を決意し、白登山の包囲を解いて撤退。

漢軍も匈奴軍を追撃する余力を持たず、撤退します。

 

漢との和睦

張良 劉邦

 

劉邦は首都である長安に帰還すると、劉敬(りゅうけい)を使者に立てて、

匈奴と和睦を結びます。

しかしその内容は漢にとって非常に不利な内容でした。

漢は匈奴と和睦を結ぶ代わりに、親王の娘を単于の妻に差し出す事と

毎年、家畜や高価な絹・酒やコメなどの食料を差し出す事を条件に

和睦を結ぶことになります。

 

強勢を誇る匈奴帝国

漢帝国の宿敵で匈奴の名君Part.1 01 匈奴族

 

冒頓は漢が匈奴にとって非常に有利な和睦条件を示した事で、

大いに満足し、漢と和睦を結びます。

その後漢から毎年、和睦条件である物資が匈奴の国を潤していきます。

兵は精強になり、経済的は安定し、国力は増大していきます。

さらに匈奴へ亡命してくる、漢の将軍を受け入れ、

漢民族の文化を吸収していきます。

 

呂太后を挑発する

太后

 

冒頓は漢を安定させないため、漢を挑発します。

彼は漢のトップである呂太后(りょたいこう)へ「今匈奴は非常に豊かになっており、

漢帝国を滅ぼすことなど造作もない事だ。

我らは和睦を破棄し、これから漢へ攻撃を仕掛ける所存である。

漢は我ら匈奴の攻撃を止めさせたいなら、来年から、贈り物をもっと増やすように

要求する。」と呂太后を挑発した内容の手紙を送りつけます。

 

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激怒した呂太后は匈奴殲滅の決意を固めるが…

 

 

呂太后は冒頓の手紙を見て激怒し、諸将を集め、

匈奴を殲滅するように命令します。

会議に参加した諸将は呂太后の意見に賛成しますが、

一人の臣下が反対した事で匈奴へ出撃する事が取りやめになります。

その臣下の名を季布(きふ)と言います。

剛直で他人との約束に一度応じれば絶対に裏切る事をしない、

信義に厚い人物です。

彼は会議で匈奴と戦った高祖がいかに大変な目に遭ったかを説きます。

すると呂太后は匈奴へ出撃する意見を引っ込めます。

季布の諫言により、冒頓の策は失敗する事になり、

漢は少しずつ安定し、国力を回復させていく事になります。

 

匈奴と漢の和睦にヒビが入る

 

 

 

冒頓(ぼくとつ)は漢と和睦し、毎年贈り物をもらい国力を増大させておりました。

しかし一つの事件が両国を緊張事態にさせます。

その事件は、匈奴の王族である右賢(ゆうけんおう)が民を引き連れ、

河南地方に南下した時に起きます。

彼は河南地方に南下した時、漢の役人からバカにされる事が幾度も重なっておりました。

その為右賢王は、自らの力を見せつけるため、上郡にある城塞を攻撃。

要塞は、匈奴軍の攻撃により陥落し、右賢王をバカにしていた役人は捕えられ、

殺害されます。

この事件は漢の皇帝である文帝に知らされます。

 

右賢王を撃退する

 

 

文帝は匈奴が和睦を無視して、漢の領土へ攻め込んだことに激怒。

丞相で劉邦と共に楚漢戦争で功績を挙げた名将・灌嬰(かんえい)に大軍を与え、

匈奴軍の討伐に向かわせます。

灌嬰は匈奴の右賢王の軍勢を蹴散らし、長城へ追い払います。

この事件がきっかけで両国の和平にヒビが入り、

匈奴と漢の国境線には緊張状態に陥ります。

 

漢に仲直りの使者を送る

 

 

冒頓は漢との友好関係を修復する為、使者を送ります。

匈奴の使者は、漢の文帝に謁見すると単于である冒頓の言葉を伝えます。

使者は文帝に「漢の皇帝であった劉邦と結んだ和睦の条約にわが方としては非常に

満足している。しかし昨年起きた事件により、

両国の友好な関係にヒビが入ってしまった事を私は憂慮している。

事件を起こした原因はその方の役人が右賢王をバカにしたことが、

原因で起きた事件である。

しかしわが方にも漢の国境を侵入した罪がある事は否めない。

そのため、右賢王を私は罰し、友好関係を再び結びたいと思う。

お詫びとして使者に贈り物を持たせており、受け取って頂きたいと

思う。」と伝えます。

文帝は冒頓の使者の言葉を聞き終わると、使者を丁重にもてなした後、

返礼を持たせて帰します。

 

匈奴との関係について議論

 

文帝は匈奴の使者を帰した後、匈奴との関係について会議を開きます。

群臣達は「匈奴の地をとっても、我らにとっては利益ならないので、

彼らとは友好関係を続けた方が良いと思います。」と意見を述べます。

文帝は彼らの意見を聞き入れ、匈奴との友好関係を修復する使者を発します。

 

漢と匈奴は再度和平条約を結ぶ

 

 

漢の使者は冒頓が居る宮殿に赴き、冒頓は漢の使者と会見します。

漢の使者は「高祖は匈奴と和平を結び、友好関係を築くため、

毎年多くの贈り物を送ってきた。

今回の一連の事件は朕(ちん=皇帝の一人称)

が大赦を行う前に発生した事件である。

今、朕は大赦を行った事で、右賢王が起こした罪は許される事になる。

今後は匈奴側が条約に違反せず、

信義を持って我が国と付き合う事を朕は望んでいる。」と冒頓に伝えます。

冒頓は漢の使者から渡された調印書にサインした後、使者を大いにもてなします。

こうして再び両国の間で和平条約は締結されます。

 

三国志ライター黒田廉の独り言

黒田廉

 

冒頓は匈奴の名君として称えられます。

彼のおかげで匈奴は史上最大の勢力にまで拡大する事に成功し、

漢の高祖劉邦や呂太后など歴代の漢の権力者や皇帝達を苦しめます。

しかし漢と関係を修復した翌年、匈奴の英雄・冒頓単于は亡くなります。

彼の死後、稽粥(けいいく)が跡を継ぐ事になります。

彼は漢から寝返った中高説(ちゅうこうせつ)という人物を厚遇。

稽粥は彼のアドバイスを採用し、漢との国境を越え、侵攻を行い

漢を苦しめていきます。

しかし匈奴の繁栄は長く続く事きませんでした。

漢の武帝の時代、一人の天才的な軍人が出現した事で、

匈奴の領地は少しずつ削られ、しまいには長城以北に追い出される事になります。

「今回の異民族のお話はこれでおしまいにゃ。

次回もまたはじめての三国志でお会いしましょう。

それじゃまたにゃ~。」

 

 

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黒田廉(くろだれん)

黒田廉(くろだれん)

三國志が大好きです。オススメのマンガは曹操を描いた蒼天航路がオススメです。三國志の小説のオススメは宮城谷昌光氏が書いた三國志です。好きな食べ物はマグロ、ぶり、アジが大好きな猫です。

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