キングダム裏話「秦が中華を統一したのは黄金都市があったから」

2020年8月1日

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kawauso編集長(石原 昌光)

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「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務めるほか、紙媒体やWebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者・おとぼけ(田畑 雄貴)

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おとぼけ(田畑 雄貴)

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週刊誌を楽しみにするkawauso様

 

大人気春秋戦国大漫画キングダム、6週連続で連載したかと思えば2週間休みで、次の最新話は8月6日までお預けになりました。

そこではじめての三国志では、漫画キングダムでは描かれない部分を徹底して調べて皆様にご提供します。

今回は秦が中華を統一した原動力になった黄金都市南郡(なんぐん)について解説してみましょう。

では、今回も張り切って行ってみよう、キングダム休載がキターーーーー!!

 

キングダム裏話「秦で一番重要な都市は南郡!」

長安(俯瞰で見た漢の時代の大都市)

 

秦国のもっとも著名な都市といえば咸陽(かんよう)です。

確かに秦の国王が住んでいる場所ですし、大都市ですが、秦に取っては決定的に必要な場所ではありません。都合が悪くなれば遷都(せんと)してもいいわけです。

 

実際、秦国では咸陽ではなく、雍(よう)という土地に長い間首都を置いていた関係から、国王は時々雍に戻って儀式をする事がありました。

内容に納得がいかないkawauso様

 

では、秦にとってここが失われると立ちいかなくなるような重要な都市はどこか?

それが南郡という都市でした。秦は南郡を手に入れる事によって中華統一が可能になったと言っても過言ではないのです。

 

キングダム裏話「楚の王都で黄金郷だった南郡」

白起(春秋戦国時代)

 

元々、南郡とは秦の領地ではありませんでした。

ここは、過去、楚(そ)の王都、郢(てい)と副都、鄢(えん)があった楚の最大の都市だったのです。

紀元前279年、秦はそれまで韓と戦っていた白起(はくき)をわざわざ呼び戻して楚を攻めさせ、漢水の上流から大軍で楚の副都鄢を包囲した上で、蛮水の流れを注ぎこんで水攻めにし数十万の楚兵を溺死させ、兵力を失い丸裸同然になった王都郢に攻め込んで蹂躙、歴代の楚王の墓を焼き払う徹底破壊の上で占領しました。

 

では、どうして秦は韓を攻略している白起を呼び戻してまで楚を攻めさせたのか?

ここが中華で最大の黄金都市だったからです。

 

キングダムネタバレ考察

 

キングダム裏話「臨淄に匹敵する繁栄を誇る郢」

洛陽城

 

この楚の王都、郢は春秋時代から中華一の黄金の産地でした。

当時は、東の大国斉の王都臨淄(りんし)に匹敵すると言われた程で、それは郢が物流の拠点であった事も意味しています。

白起は、郢を抑えて南郡とし、罪人や秦人、魏、趙、漢の住民を強制移住させて繁栄させ、結果的に秦の経済力を強化する事に繋がります。秦が郢を狙ったのは、当時の中華において希少だった黄金を入手する為でした。

 

キングダム裏話「楚の黄金で六国を買収する秦」

キングダム 戦国七雄地図

 

そして秦が楚の黄金を抑えた事は、黄金の力で秦が六国を買収する事を可能にしました。

紀元前235年、呂不韋(りょふい)が失脚した後にやってきた魏の人尉繚(うつりょう)が秦王政に対し、秦の財力を使って六国の有力者を買収し、それによって合従軍(がっしょうぐん)を阻止して、智伯(ちはく)や夫差(ふさ)、直近では斉の湣王(びんおう)のような失敗を防ぐべきだと進言します。

 

この時、秦王は三十万金という大金を尉繚に与えて、六国の有力者を買収するように命じますが、この三十万金とは漢の時代の三十億銭に当たり、漢の時代の国家予算の2/3に匹敵するような金額でした。

日本に例えるなら、60兆円を買収工作に使うという事でしょう。ベラボーですね。

 

これほどの巨額の賄賂を前に、抗えるような六国の要人はいなかったようで、秦が恐れた合従軍も紀元前241年の五カ国合従軍を最後に二度と行われていません。

敗北し倒れている兵士達a(モブ)

 

秦の侵略が激しさを増す中で、どうして六国が連動しなかったのか?

それぞれの国が疲弊していたという事もあるでしょうが、秦の買収により六国が合従軍を嫌悪していた事も大きく影響しているでしょう。

キングダム裏話「李牧の死も賄賂によるもの」

亡くなる李牧

 

戦国策には、秦の徹底した買収工作について、以下のようにあります。

すなわち万金を資(し)し、東のかた韓・魏に游(あそ)びその将相(しょうしょう)に入らしめ、北の方、燕、趙に游んで李牧を殺さしむ。(以下略)

ネズミで人生を変えた李斯

 

最初に秦王に六国の買収を説いた尉繚ですが、その後、始皇帝が恐ろしくなり逃走します。

しかし、買収工作そのものは、李斯がそのまま受け継いで汚れ役を引き継ぎ、買収できる者は買収し、買収に従わない者は刺客を放って殺すというやり方で、敵対者を地道に潰していきました。

後味が悪い話ですが、李牧についても秦について趙を裏切れという誘いを李斯がかけて、それを拒否したから刺客を放ち殺した可能性もありますね。

 

キングダム裏話「最後の合従軍も賄賂で潰れる」

蘇秦(そしん)は合従連衡を行った

 

戦国策によると、紀元前233年、荊(けい)(楚)斉(せい)、燕(えん)、代(だい)の4国が合従軍を組織して秦に反抗しようとした事があるそうです。

それに対し、秦の宮廷では対策に追われましたが、姚賈(ようか)という人物が出てきて、車を百乗、金千斤を工作資金として受け取ると、この4国に盛大に賄賂をばら撒いて、ついに合従軍がうやむやになりました。

 

秦というと圧倒的な暴力で六国を平定したようなイメージですが、同時に楚から手に入れた黄金で六国の要人を買収し、反秦感情が合従軍に結びつかないように気を使っていたのです。

 

キングダム裏話「賄賂で骨抜きになった斉」

敗北し倒れている兵士達b(モブ)

 

紀元前235年から開始された尉繚、そして、李斯、姚賈による買収工作に一番汚染されたのが斉でした。斉では宰相の后勝(こうしょう)が完全に秦に篭絡(ろうらく)され、秦により五カ国が攻撃されても、一切支援する事無く、また秦に対する備えもさせなかったそうです。

漫画においては、秦王嬴政の中華統一の理念に理解を示し、秦との間に不可侵条約を結ぶ斉ですが、実際には賄賂まみれになっていたんですね。

 

キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言

kawauso 三国志

 

漫画キングダムを読んでいても南郡という地名を目にする事はありません。

しかし、紀元前279年に白起が楚の南郡を落とした事が秦の中華統一に決定的に重要だったのです。それは咸陽よりもずっと重要なポイントでした。

論説:南郡の建設と秦の貨幣制度 稲葉一郎

 

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台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。「はじめての三国志」編集長。三国志・中国史を中心に、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を執筆・編集し、当サイトでは4,000本以上の記事を担当。三国志は正史から入ったため、演義を書くときのほうが神経を使うという天邪鬼。故郷・沖縄の歴史に関する勉強会の開催や、ラジオパーソナリティとしての活動も行う。

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