漢王朝内部の内ゲバとも言うべき、外戚の何進と宦官の十常侍の争いにより洛陽に入る大義名分を得た菫卓(とうたく)でしたが、彼にも弱みがありました。それは、このような政変までは予期出来ず、率いてきた手勢は三千に過ぎなかった事でした。
菫卓が辺境で保有していた兵力は20万人にも及ぶ大軍勢でしたが、これをそのまま、引き連れて行ったのでは、叛乱を疑われて洛陽に入る事さえ出来ないでしょう。また、幾ら、異民族、羌族のトップとの話し合いがついているとは言え、その防衛兵を全て連れて行っては万が一の異民族の大規模侵略にも対応できなくなる可能性もありました。
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3千の兵力がギリギリだった
そこで疑われないギリギリの三千の兵力に落ち着いたわけですが、もとより、たった三千の兵では、その辺りの山賊にさえ対抗できません。
ましてや、その事が他の諸候に知られた場合には、「菫卓なにするものぞ」として別の諸候が続々洛陽に入る恐れもありました。そんな事になったら、漢王朝を思いのままに操ろうとする菫卓の目論見は全て崩れてしまう事になります。
そこで菫卓は計略を思い付きます、それが兵力を何倍にも見せる方法です。
董卓のマジック
まず、三千の兵から二千を夜陰に乗じて洛陽城外に裏門から出します。そして、翌朝、何食わぬ顔で正門から二千の兵を入城させます。何も知らない洛陽の人々は、毎日、毎日菫卓の援軍がやってくるので、「菫卓は驚く程軍事力を保有している」と彼を恐れるようになりました。混乱で治安が乱れている洛陽では、言葉よりも圧倒的な軍事力がモノを言いました。
大軍に見せる事でライバルの牽制に成功
菫卓は、その辺りの呼吸を心得ていて、僅かな手勢を大軍に見せる事でライバルを牽制するのに成功していたのです。もちろん、計略がばれる前に、菫卓は、帝を保護している威光を使い宦官に暗殺された何進の兵力を吸収し、袁紹の兵力を取り上げています。
董卓、呂布を買収
また、菫卓の横暴を非難した丁原に対しては、配下の呂布を買収して暗殺させ、呂布と共に、その兵力をごっそりと頂いています。実際の菫卓の兵力が本当は三千だったと周囲が気がついた頃には、菫卓はもう大兵力を保有していたのです。