三国志には、暴虐な悪党が沢山登場します。
しかし、事、性格が悪いという点において曹丕(そうひ)の右に出る人間は、
そうはいないと思います。
曹丕は、ただ殴るとか、ただ殺すではなく、相手のプライドを傷つけて
苦しませて憤死させるという手の込んだイジメをするのです。
それだけにとてもイジリやすく、何度もネタにしてしまいました。
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はじさんは曹丕をネタにした結果
でも、ツイッターの曹丕ファンの方々からは、
「何が憎くて曹丕をディスるの?蜀びいきだから?」と言われてしまい
はじさんスタッフkawausoは反省しました。
そこで、今回は、「ごめんね曹丕、文帝イメージアップキャンペーン」
と題して、ネガキャンを排して、曹丕を称えてみようと思います。
女性の心情を歌えば中華一、曹丕の燕歌行(えんかこう)
曹丕は詩の達人であり、実に沢山の詩を読んでいますが、
その中には、夫の帰りを待ちわびる女性の気持ちになりきり
読んだ歌もあります。
ここで紹介しますが、実にすばらしい歌です。
秋風蕭瑟天気涼 草木搖落露為霜 羣燕辭帰雁南翔 念君客遊思断腸
慊慊思帰戀故郷 何為淹留寄佗方 賤妾煢煢守空房 憂来思君不敢忘
不覚涙下霑衣裳 援琴鳴絃發清商 短歌微吟不能長 明月皎皎照我牀
星漢西流夜未央 牽牛織女遥相望 爾獨何辜限河梁
では、早速、こちらを意訳してみましょう。
今風にポップスにするとこんな意味です。
♪秋風がとっても寒くなったね
草木も葉を落して、露が霜になった。
もうツバメは南に飛んで、
雁が南から飛んできたよ。
月日は巡るのにどうして、
旅に出たあなたは還らないの?
私は、とても苦しいよ・・
あなたは故郷を思ってるの?
なら、どうしていつまでも、
遠くに行ったままなの・・
私はいつも一人であなたの居ない
冷たい空っぽの家を守ってる。
ううん、、私はあなたを忘れたりしないよ。
でも、気づくと、涙で服が濡れる日もあるの
気分を紛らわして琴を引き歌う事もある・・
でも、長く歌い続ける事は出来ないの
寂しくて、涙が声を詰まらせるから
月の光が、部屋の中に満ちて私を優しく照らし
天の川が西に流れて夜は延々と続く・・
織姫と彦星さえ、天の川を挟んで
お互いを感じられているのに・・
あなたは、何の罪があって遠い川辺に
押しとどめられたままなの?
※英語が出来る人は、英訳して歌にして下さい(嘘)
戦争に出て、戻ってこない夫を待つ妻の詩
いかがでしょうか?凄いじゃないですか?
これは、戦争に出た夫の帰りを待つ妻の気持ちで詠んだ詩らしいですが、
上手いですよね、特に、琴を出して歌ってみるけど長くは歌えない、
いつも1人で冷たいからっぽの家で待っているという所が、
kawauso個人は、とてもグッと来るフレーズです。
最後の織姫と彦星でさえ川を挟んで通じあっているのに、
あなたはどこに留められているの?
には、もしかして、夫は戦死したのかも知れない、、
でも、それを認めらない、生きていると思いたい。
何かしらの罪で、ただ、留められているだけだと信じたい
そういう妻の心の葛藤まで表現されています。
kawausoの独り言
こうして見ると、曹丕の詩の才能の豊かさが分かります。
日本でも詩人の紀貫之(きのつらゆき)が土佐日記を
女性に仮託して書いていますが、男性でありながら、
女性の心情を詠うというのは、かなりレベルの高い人物でないと無理です。
どうしてかって、自信満々で書いた女性目線の詩を、
「こんな事考える、女いねーよ、ぷっ」
なんて人に思われたら、はずかちーですからね。
というわけで、これまで散々、貶してきた罪滅ぼしに、
曹丕を全力でヨイショしてみました。
魏ファンの、とりわけ、建安マエストロファンの曹丕ファンの方々、
これで満足していただけたでしょうか?
久々の三国志の話題、ご馳走様でした。
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どうも、kawausoでーす、好きな食べ物はサーモンです。
歴史ライターとして、仕事をし紙の本を出して大当たりし印税で食べるのが夢です。
もちろん、食べるのはサーモンです。