三国志平話
麒麟がくる特集




はじめての三国志

menu

三国志の雑学

【はじめての孫子】第3回:兵とは国の大事なり

鄧禹と兵士




兵士

 

中国の代表的な兵法書『孫子』を解説する「はじめての孫子」第3回目。

いよいよ、『孫子』本文に入っていきます。

今回は最初の章、「計篇」です。

 

はじめての三国志全記事一覧はこちら

前回記事:【はじめての孫子】第2回:どうして『孫子』はビジネスマン必携の書と言われるの?

関連記事:三国志を楽しむならキングダムや春秋戦国時代のことも知っておくべき!

 

 

「計篇」の要点

現実主義曹操

 

・戦争は国家の一大事であるから、その開戦については慎重になるべきである。

・戦争を始める前に考慮すべき5つの基本事項がある。

・敵と味方の優劣を判断するには7つのポイントをチェックすべし。

・戦場では騙し合いを制する臨機応変さが重要になってくる。

 

 

戦争は国家の命運を左右する重大事であるということ

抜き出た曹操

“孫子いわく

兵とは国の大事なり

死生の地、存亡の道

察せざるべからざるなり”

 

『孫子』本文はこのように始まっています。

これを現代文に訳すとこのようになります。

 

“孫子はこう言われた。

戦争は国家の命運を左右する重大事である。

だから、生と死を分ける戦場や、存亡を分ける進路を選択するにあたっては

慎重に良く考えなければならない”

 

戦争というのは国家の存亡に関わる重大な危機なのだから、

戦うにあたってはくれぐれも良く考え、いかにして勝つか、その方策を練らなければいけない。

 

この冒頭の一文こそが、『孫子』という兵法書を貫くテーマとなっています。

 

戦争するにあたって考えるべき5つの基本事項とは?

三国時代の兵器(魏軍合体ロボ) 曹操

 

続いて、孫子は戦争をするにあたり、

敵と味方の優劣を見定めるのに必要な5つの基本事項を上げて説明しています。

 

第一の事項は「道」です。

「道」とは民衆の支持を得るための内政の正しさのことです。

内政が正しく行われ、民衆が日頃から君主を支持していれば、

いざ戦争が起こったときも民衆は君主の命令に従うだろう……孫子はそう説明しています。

 

第二の事項は「天」です。

「天」とは季節や気温など、天候や天文の動きや働きのことを意味します。

いかに「天」に則って戦う時期を決めるかが重要になってくるわけです。

 

第三の事項は「地」です。

「天」と対をなす「地」とは国や戦場の広さや距離の遠近、

地形の高低差や険しさなどを意味します。

地勢を見極め、死地に軍を置かないことが重要ということですね。

 

第四の事項は「将」です。

呼んで字のごとく、これは軍を指揮するリーダー=将軍の資質のことです。

戦況を正しく判断できる頭脳、部下を思いやる心と律する厳格さ、

どんな状況に直面してもくじけることのない勇気や精神力の強さなど、

兵の信頼と忠誠を得るに必要な資質を将軍が持っているかどうかを考えなければならない、

ということです。

 

第五の事項は「法」です。

軍を動かすためには、それを指揮する将軍以外にも必要不可欠なものがあります。

それが「法」です。将軍の指揮権や部隊の配置、

軍を監督する官史の職権を明確に定めた軍法がなければ、

軍を命令通りに動かすことはできません。

 

以上、5つの基本事項は、

およそ軍を指揮するものなら誰でもある程度理解している事柄ではあるけど極めて重要であり、

熟知しているものは勝利し、

なんとなく知っているだけのものは負ける……孫子はそう説いています。

 

具体的に敵と味方の優劣を比較検討するための七計

みんなで魏志倭人伝(夏侯惇、典偉、夏侯淵、許長、張遼、曹操)

戦争を起こすにあたって、まず考慮すべき5つの基本事項を上げた孫子は、

次に敵と味方の優劣を判断するための7つのチェックポイント=七計画を挙げます。

 

1:君主はどちらが民衆の支持を得ているか

2:将軍の能力はどちらが優れているか

3:天と地の利はどちらにあるか

4:軍法はどちらが徹底しているか

5:兵力(数)はどちらが勝っているか

6:どちらの方が兵士の訓練が行き届いているか

7:兵士への賞罰はどちらがしっかりと行われているか

 

この七つのポイントをチェックすることで、

実際に戦う前に勝敗の行方を予測することができると、孫子は説いています。

 

ただし、いくら事前の検討で勝利できると判断できても、

実際の勝敗にはもうひとつ、重要な要素が絡んできます。

 

それは将軍が君主の指揮に従う人間であるかどうか、ということです。

将軍が指揮に従う人物であれば彼を留任させ、

従わないような者であれば辞めさせるべきであると、孫子は説いています。

 

孫子の教えを守れなかった孔明は泣いて馬謖を斬る

諸葛孔明

ここで思い出されるのが、諸葛孔明による第一次北伐における『街亭の戦い』です。

 

孔明は部下である馬謖に軍の拠点である街亭を守備するように命じますが、

その際、水路を守る必要があるから、背後の山の上には布陣しないよう指示します。

 

しかし、馬謖は孔明の指示より自分の判断を優先させ、

水路を守ることより高低差的に有利である(と彼本人は思い込んだ)山の上に布陣してしまいます。

 

蜀軍が山の上に布陣していることを知った魏の将軍の張郃は好機とばかり、水路を押さえてしまいます。

水源を断たれた馬謖の軍は喉の乾きに苦しみ士気が低下、

その隙を突かれて攻撃を受け、結局敗走してしまいます。

拠点を失った孔明も、本軍を撤退させざるを得なくなってしまいました。

 

劉備から生前「馬謖は口先だけの男だから信頼してはいけない」と忠告されていた孔明でしたが、

彼は馬謖の才能を評価し、馬謖が自分の指示を守らない人物であることを見落としてしまいました。

 

もし孔明がもう少し孫子の教えに忠実に従い、

馬謖という人物をちゃんと見定めていれば、

あるいは街亭の戦いの敗北はなかったかもしれません。

 

関連記事:三国時代の故事成語『白眉』と『泣いて馬謖を斬る』

関連記事:成長した張飛、計略で張郃を撃ち破る

 

兵とは詭道なり

孔明 軍師

 

「計篇」の最後に、孫子はこう言っています。

 

“兵とは詭道なり”

 

戦争とは、敵をだますことである、と。

だから孫子は自軍が有利であることを敵に隠し、

敵にさも自軍の方が優位にあるように思い込ませることが重要だと説いています。

 

敵に対しては自軍の情報を隠し、

相手が思っていることを手球に取って混乱させることの重要性(敵が物資を欲しがっていたら、

物資を餌にして敵の戦力を奪う、敵が怒り狂っていたら、

更に挑発して敵を混乱させる等)を説き、

それを敵の情勢に応じて臨機応変に繰り出す柔軟性が必要であるとしています。

 

さぁて、次回の孫子さんは?

尹夫人 曹操 2

 

さて、次回は孫子第2章「作戦篇」です。

なぜ、用兵にはスピードが重要なのか?

そしてなぜ兵站(物資輸送)を重視しなければならないのか?

 

次回もぜひ、お付き合いください。

 

はじめての三国志全記事一覧はこちら

次回記事:【はじめての孫子】第4回:兵は勝つことを貴ぶ。久しきを貴ばず

 

最強の戦略教科書『はじめての孫子の兵法』
はじめての孫子の兵法

 

 




石川克世

石川克世

投稿者の記事一覧

三国志にハマったのは、高校時代に吉川英治の小説を読んだことがきっかけでした。最初のうちは蜀(特に関羽雲長)のファンでしたが、次第に曹操孟徳に入れ込むように。三国志ばかりではなく、春秋戦国時代に興味を持って海音寺潮五郎の小説『孫子』を読んだり、
兵法書(『孫子』や『六韜』)や諸子百家(老荘の思想)などにも無節操に手を出しました。

好きな歴史人物:

曹操孟徳
織田信長

何か一言:

温故知新。
過去を知ることは、個人や国家の別なく、
現在を知り、そして未来を知ることであると思います。

関連記事

  1. 公孫瓚特集:悔しかったら雨を降らせてみろ・その2
  2. 殺害される姜維と鍾会 【二人の歴史家】姜維の評価をした孫盛と裴松之が下した剣閣戦の評価…
  3. 周瑜 美男子 周瑜公瑾の輝かしい功績
  4. 三国志はなぜ日本で人気なの?中国人も驚く日本国民のヒーロー論に迫…
  5. 曹操は褒め上手 郭嘉と陳羣を見習えばいじめが無くなるってホント?
  6. 【日中清廉潔白対決】北条泰時VS諸葛亮孔明
  7. 楽進にクリソツな二世将軍楽綝の最期はかなり悲惨だった!?
  8. 銃は中国で発明されたものだった?「アンゴルモア」にも登場した火薬…

google検索フォーム

過去記事を検索できます

ピックアップ記事

  1. 黒田官兵衛
  2. 株式会社三国志で働く劉備と孔明
  3. 三国夢幻演義バナー 龍の少年

おすすめ記事

  1. 【第3話】戦え!于禁文則ん「曹操救出 黄巾の残党との戦い」 曹操と黄巾賊
  2. 6倍の敵に対して一歩も退かずに渡り合った名将・高橋紹運がヤバイ!
  3. 五丈原の戦いの裏側で活躍した魏の満寵とは?前編
  4. 三国志時代にもダジャレがあった?蜀の王平(おうへい)は異民族から「ヘイ!!OH様」と呼ばれていた
  5. 廖化(りょうか)ってどんな人?蜀漢成立~滅亡まで戦い続けた蜀の将軍
  6. 廃刀令とはどんな法律?武士の特権を奪ったリストラ政策 鄧禹と兵士

三國志雑学

  1. 呉民衆の意見に耳を傾ける顧雍(こよう)
  2. 黄巾の乱に巻き込まれる若し頃の程昱(ていいく)
“はじめての三国志150万PV" はじめての三国志コミュニティ総合トピック
“広告募集"

はじめての三国志 書籍情報

朝まで三国志 三国志最強のワルは誰だ (桃園出版 三国舎)

著:kawauso 価格480円
※Kindle読み放題対応

ピックアップ記事

  1. 城 銅雀台
  2. 騎馬兵にあこがれる歩兵
  3. 眠る于禁
  4. 太平道の祖・張角(黄巾賊)
  5. よかミカンさん はじめての三国志ライター

おすすめ記事

【ネタバレ注意】キングダム547話「矛の嘆き」ネタバレ&レビュー 曹操と夏侯惇 【素朴な疑問】三国志時代はどうやって兵士を集めていたの? そうなの!劉備と孔明は故郷について真逆のスタンスだった 赤鎧を身に着けた曹操 【潼関の戦い】二度目の韓遂との会見が曹操の独壇場だったらしい 三国志ライター よかミカンさん 三国志演義の「卵」登場シーンとピータン豆腐の作り方 袁紹と張り合った袁術が滅亡した原因って一体何なの? 明治政府の教育改革・学制とは? 于禁を虐める曹丕 于禁は虞翻からも厳しいイジメを受けていた?その理由とは?

はじさん企画

“if三国志" “三国志とお金" “はじめての漢王朝" “はじめての列子" “はじめての諸子百家" “龍の少年" “読者の声" 袁術祭り
李傕祭り
帝政ローマ
広告募集
まだ漢王朝で消耗してるの?
HMR
ライフハック
君主論

ビジネス三国志
春秋戦国時代
日常生活
曹操vs信長
架空戦記
ライセンシー
北伐
呂布vs項羽
編集長日記
はじめての三国志TV
“曹操孟徳" “黄巾賊" “赤壁の戦い" “THE一騎打ち" “夷陵の戦い" “kawausoのぼやき記事" “よかミカンのブラック三国志"
“水滸伝"

“三国志人物事典"

PAGE TOP