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【はじめての孫子】第10回:九変の利に通ずる者は、兵を用うることを知る




商鞅

 

はじめての孫子も回を重ねてとうとう10回目。

前章で戦地における臨機応変さが必要であると説いた孫子ですが、

この「九変篇」では、地勢が軍の行動に与える影響について、具体的に説明しています。

 

それでは、さっそく始めてまいりましょう。

 

はじめての三国志全記事一覧はこちら

前回記事:【はじめての孫子】第9回:其の疾きことは風の如く、其の徐なることは林の如く

関連記事:キングダムと三国志の違いって何?時代を追ってみる

 

 

「九変篇」の概要

孫子の兵法 曹操

 

◯軍を動かすにあたって理解しておくべき9つの土地の特性がある

 

◯9つの特性に反する命令は、それが君主のものであっても聞いてはいけない

 

◯軍を指揮するに不向きな5つのタイプ

 

地形の持つ特性を理解せよ

 

いかに鍛えられた兵士によって構成される軍隊であっても、道無き道を進んでいくことはできません。

山や川、湖や海といったさまざまな地形が、

その行軍に大きく影響し、時にその行動を妨害します。

 

軍を臨機応変に動かすためには、

こうしたさまざまな地形の持つ特性を理解しておかなければなりません。

孫子はその性質を9つの項目にまとめ、「九変」と称しています。

 

軍を指揮する者が熟知すべき「九変」とは?

 

(1)足場の悪い土地

 

湿地や沼地のような足場の悪い土地では、兵士は足を取られて行動が鈍くなってしまいます。

そんな場所で敵襲を受けようものなら、臨機応変に対応することなど出来ません。

 

孫子はそのような場所では決して宿営してはいけないと説いています。

 

(2)他の国(勢力)と三方で面している土地

 

戦場となる場所が、自国と敵国のみに接しているとは限りません。

時には、敵対している相手勢力以外の国々とも面した土地で開戦を余儀なくさることもあるでしょう。

 

こんな土地で戦わなければいけない場合、

指揮官はまず敵国以外の諸侯に使節を派遣して友好的関係を築かなければなりません。

そうして敵国を孤立させることができれば、自軍は有利に戦うことができるわけです。

 

「忠臣蔵」で有名な吉良邸討ち入り事件の際、赤穂浪士たちは吉良邸近隣の住人に対し、

仇討ちを行っていると宣言し、近隣住人はことを了承した印として高提灯を掲げたと言います。

もし、何も言わず理解を得ることをしなかったら、

あるいは通報されて仇討は失敗してしまったかもしれません。

周りを味方につけることが重要であるひとつの証左と言えるでしょう。

 

(3)母国から遠く離れた土地

 

「軍争篇」(「はじめての孫子」第9回をご参照ください)において、

国から遠い土地で戦ってはいけないと説いている孫子ですが、

それはあくまでも理想論であり、

時には軍隊を母国から遠く離れた戦地へ送る必要が生じることもあります。

 

そのような場合、孫子は可能な限り短期決戦を心がけ、

長期にわたって軍隊をとどまらせてはいけないと説いています。

もし、戦いが長期に及べば補給困難となって、敗北することは必至です。

 

(4)三方を山に囲まれた土地

 

軍隊が進行できない山を背後に布陣することは、後方からの奇襲を避ける有効な手段といえますが、

両側面までも山に囲まれた土地となると、話は変わってきます。

守りにはより適していますが、それは前方の開けた場所が確保されていればこそです。

 

このような場所に布陣する時は、前方に必ず守備隊を置かなければいけません。

 

(5)三方を山に囲まれ、前方を敵にふさがれた土地

 

上記したような場所に布陣し、なおかつ前方を敵に押さえられてしまった場合、

側面後方の山は防壁から退路をふさぐ障害物に変化してしまいます。

 

こうなってはもう、どうしようもありません。

全力で正面の敵を突破し、逃げる以外に生き残る術はないでしょう。

 

(6)行軍に不向きな道

 

軍隊が迅速に行動するには道を通ることが必要ですが、

中には通ってはいけない道もあります。例えば砂利道のような、

十分に整地されていない道。極端に細くなっているところがあるような道。

 

このような道では、軍の進行速度は低下し、

敵による分断の危機にさらされることになるので、決して通ってはいけません。

 

(7)敵に有利な地形

 

敵が布陣している場所にも注意を払う必要があります。

 

少数の敵がその存在を晒して布陣している場合、注意が必要です。

それは、敵にとってなにか有利な条件がその場所にあるかもしれないからです。

この場合はあえてそこを攻めず、もっと楽に勝つ方法を模索すべきでしょう。

 

第一次北伐の時、街亭の戦いにおいて馬謖が敗北したことによって、孔明は撤退を余儀なくされます。

孔明は司馬懿の追撃を逃れるため、わざと城を無防備に見せることで敵に警戒心を抱かせ、

無事撤退することに成功します。

 

これは孫子を逆手に取った作戦とも言えます。

司馬懿が兵法に通じた人物であればこそ有効な戦法であったと言えるでしょう。

空城も計 孔明

(参考記事:「空城の計って何?門を開けて敵軍をお出迎え?」も御覧ください)

 

(8)攻めてはいけない城

 

「謀攻篇」においても、城攻めは最も愚策と批判している孫子ですが、

中でも攻めてはいけない城というものがあると言います。(【はじめての孫子】第5回)

 

例えば、兵力的には十分攻め落とせるように思えても、

その後維持することのできないような城です。城はただ攻め落とせばそれで済むわけではありません。

再び敵に奪取されないよう、守備のための兵力を割く必要があります。

現有戦力で攻め落とせたとしても、その後維持するための戦力に余裕のない場合は、

その城を攻めてはいけないと、孫子は説いています。

 

また、敵本国を降伏させれば無力化できるような城や、

戦場から遠く戦争に影響を及ぼさないような=攻める必要のない城なども攻めてはいけません。

 

(9)争奪してはいけない土地

 

城と同じく、土地もまた、一旦奪取した後はそこを守備するための戦力を割かなければいけません。

 

水や食糧に乏しい土地は、そこを維持するための労力も余計にかかります。

このような土地は奪ってはいけないと、孫子は説いています。

 

時には君主の命令に背くことも必要?

 

孫子は、軍を指揮統率する者(将軍)は上記の『九変』を熟知し、

それに従って臨機応変に指揮できる必要があると言います。

 

しかし、将軍がそのことを熟知しえても、

その君主までもが同じく九変を熟知しているとは限りません。

時に君主は九変に背くような命令を将軍に与えることもあるでしょう。

 

このような場合、将軍はどうするべきなのか……

孫子は、『時に君命であってもこれを拒否することが将軍には求められる』と断言しています。

 

将軍になるためには不向きな5つのタイプ

 

孫子は将軍として特に不向きな5つの性格のタイプを上げ、将軍の資質の重要性を説いています。

 

1)勇気はあっても思慮にはかける者。

そういうタイプの将軍は自ら無謀な乱戦に飛び込んだ挙句、討ち取られてしまうでしょう。

2)逆に、生き延びることばかり考え勇気に欠けるタイプ。

少しでも味方に不利になると逃げ出そうとして捕虜になってしまうでしょう。

3)短気で沸点の低いタイプ。こういうタイプの指揮官は敵に侮辱されるとすぐに頭に血が昇り、

簡単に計略に引っかかってしまうでしょう。

4)名誉を重んじ過ぎる清廉潔白タイプ。

そういうタイプの指揮官はそこに付け入られ、敵の罠に陥ってしまうでしょう。

5)情に厚すぎるタイプ。兵士をいたわるのは良いのですが、

いたわり過ぎると兵士の世話にばかり意識が向いて、戦局全体を見誤ることになるでしょう。

 

軍隊が敗北する理由には、必ず上記に指摘した指揮官の問題点が影響しているので、

そのことを良く考えなければいけないと、孫子は強く主張しています。

 

三国志ライター 石川克世の次回予告

石川克世

「はじめての孫子」第11回目は「行軍篇」です。

見た目から、敵軍の状態を推察するヒントを孫子が説明します。

水を汲みに来た敵兵がまず水を飲むのはなぜ?

 

それでは、次回もお付き合いください。 再見!!

 

はじめての三国志全記事一覧はこちら

次回記事:【はじめての孫子】第11回:兵は多きを益ありとするに非ざるなり。

 

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石川克世

石川克世

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三国志にハマったのは、高校時代に吉川英治の小説を読んだことがきっかけでした。最初のうちは蜀(特に関羽雲長)のファンでしたが、次第に曹操孟徳に入れ込むように。三国志ばかりではなく、春秋戦国時代に興味を持って海音寺潮五郎の小説『孫子』を読んだり、
兵法書(『孫子』や『六韜』)や諸子百家(老荘の思想)などにも無節操に手を出しました。

好きな歴史人物:

曹操孟徳
織田信長

何か一言:

温故知新。
過去を知ることは、個人や国家の別なく、
現在を知り、そして未来を知ることであると思います。

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