九品官人法(きゅうひんかんじんほう)は悪法?どうして曹丕は採用したの?

2018年1月20日


 

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三国志(ぎ)の時代に制定された人材登用制度「九品官人法」

コネのある人ばっかり有利で上級官僚層が貴族化する原因を作った

悪法です(よかミカン独断)。

そんな悪法を、魏の皇帝曹丕(そうひ)はどうして採用したのでしょうか。

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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九品官人法ってどんな法?

 

九品官人法では、各土地にいるナイスガイをランク付けする係の

中正官(ちゅうぜいかん)というお役人さんが中央政府によって任命されています。

中正官は自分の任地の人物を一品~九品のいずれかにランク付けし、

中央政府に報告します(最上級の一品にランクされる人はめったにない)。

政府はそのランクによって官吏を登用します。

公務員の役職は一品~九品にランク分けされており、例えば中正官に

二品とランク付けされた人物は最初に四段階下の六品の役職につき、

順調にお仕事をこなしていけば最高で二品までは偉くなれる、という制度です。

 



それのどこが悪法なんでしょうか。

 

これから官職につこうという人たちが、なんにも仕事を始めないうちから

中正官の胸先三寸でどこまで偉くなれるかあらかじめ決められているっていうのは、

おかしな法ですね。こんな人材評価方法は、中正官とコネがあったり、

圧力をかける権力があったり、銭の束で中正官の横っ面をひっぱたいたり

できる人たちの思うがままじゃないですか。

その結果、勢力のある人の子弟ばっかりがいい評価を得られるようになり、

しまいにはパパの官位に準じるような形でランク付けされるようになっていき、

上級官僚層の門閥貴族化につながりました。

どんなに有能でも、代々下級官僚の家柄の人は活躍できなくなっちまいました。

こりゃ悪法ですぜ。

 

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曹丕(そうひ)はどうしてそんな悪法を採用したの?

 

九品官人法は、名士の陳羣(ちんぐん)が魏(ぎ)の皇帝曹丕(そうひ)

献策し、曹丕が認可して施行されました。

曹丕が帝位についてすぐの西暦220年のことです。

パパの曹操(そうそう)が亡くなったのもこの年ですね。

曹操は後継者をなかなか決められずにおり、亡くなる三年前にやっと

曹丕を皇太子に決めました。

その時までは、曹丕と、弟の曹植(そうしょく)との後継者争い状態になっていました。

この時、曹丕を応援してくれていた人たちが、司馬懿(しばい)

陳羣(ちんぐん)などの名士たちでした。

曹丕が皇帝になれたのは名士たちに助けてもらったおかげなので、

曹丕は恩を受けた負い目があって陳羣が提案した九品官人法を

却下できなかったのでしょう。

 

名士ってどんな人たち?

 

私が「名士」という言葉を意識し始めたのは渡邊義浩(わたなべよしひろ)先生の著作を

読むようになってからなのですが(弟子でもなんでもないのに勝手に「先生」と呼ぶ)、

先生のご説明をざっくりまとめますと、名士とは儒教的な教養を身につけて名声を得て

高官についてきた階層の人たちです。

九品官人法施行前の人材登用方法は「郷挙里選(きょうきょりせん)」と言って、

魏の前の後漢(ごかん)王朝が儒教重視の政策をとっていたために

「郷挙里選」でも儒教の徳目を重視した人材登用が行われていたので、

高官についてきた階層の人たちは当然儒教の教養を身につけた人たち

だったわけです。そういう人たちが権力を握って魏を牛耳っていたんやね。

 

名士がゴリ押しした九品官人法

 

わたし思うに、九品官人法は、名士たちが自分らの権威を盤石なものとするために

ゴリ押ししたんじゃないでしょうかね。献策した陳羣は名士でしょ?

自分たちが手助けして皇帝になったばかりの、まだ独自の権力を

確立していない曹丕に、これまでの恩をちらつかせて言うこと聞かせて

九品官人法を認可させて、施行されたら現在の自分たちの権力にものを言わせて

中正官に圧力かけて、自分たちのお仲間の子弟ばかりに高いランク付けさせて、

次代以降もずっとそれを続けていけるように画策したんじゃないでしょうかね。

 

三国志ライター よかミカンの独り言

 

歴史シミュレーションゲーム三國志では、九品官人法が施行されると

内政値が上がるバージョンがあります。

世間一般の評価でも、九品官人法が整備されたのは

曹丕の素晴らしい業績であるかのように思われがちですよね。

でも私ぁそうは思いませんぜ。

曹丕はね、後漢の権力層から力を奪うことに失敗したんですよ。

パパの曹操が目指していた能力主義の方針が水の泡。残念!

※この記事における九品官人法批判は、はじ三で準備中の

企画「はじめての九品官人法」とは一切関係ございません。

「はじめての九品官人法」、乞うご期待っす!

 

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よかミカン

よかミカン

三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。 個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。 三国志小説『ショッケンひにほゆ』 【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】 何か一言: 皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。 妄想は妄想、偏見は偏見、とはっきり分かるように書くことが私の良心です。 読んで下さった方が こんなわけないだろうと思ってつい三国志を読み返してしまうような記事を書きたいです!

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