キングダム
三顧の礼




はじめての三国志

menu

はじめての晋

左思(さし)ってどんな人?洛陽の紙価を高騰させたブサメン詩人

孫皓に対して戒めの手紙を書く陸抗(りくこう)





 

洛陽(らくよう)の紙価(しか)を高からしめる」

三国志の次の晋(しん)の時代、左思(さし)という人が魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)の

三つの都を描いた「三都賦(さんとふ)」という文章が名作すぎて、都じゅうの人士が

三都賦を書き写すために紙を買いに走ったから洛陽の紙の値段が上がっちゃったよ、

という故事から、著作が大いに売れることのたとえ。

そんな名作を著した左思ですが、とっても残念なブサイクエピソードの持ち主でもあります。

 

はじめての三国志全記事一覧はこちら

関連記事:曹操の詠った漢詩を分析してみよう。いつのことかわかるかな?

関連:曹植は軟弱ではなかった?皇帝の弟の悲しくも華麗な生涯

 




 

家柄が低く、容姿にも恵まれなかった左思

 

左思、字(あざな)は太冲(たいちゅう)。斉(せい)の臨淄(りんし)の出身です。

パパの左雍(さよう)は地位の低い官吏として勤め始めて、能力を認められて

殿中侍御史(でんちゅうじぎょし)に抜擢されました。

 

殿中侍御史は後漢(ごかん)の時代では禄高が六百石ぽっち、

唐(とう)の時代での官品(かんぽん)がかなり下の方の従七品下ですので、

左思の生きた晋の時代でも

「めいっぱい出世してやっと殿中侍御史っていう程度だから

箸にも棒にもかからない家柄だな」と思われる程度の地位でした。

 

代々儒学を修める家であり、左思も子供の頃から儒学の必修科目である

楽器の演奏と書道を学びましたがあまり上達しませんでした。

パパの左雍は友人に

「おれの若い頃のほうが賢かったよ」と言っています。

外見的には「貌寝」、つまり背が低く顔立ちが醜かったと、『晋書』に記されています。

 

※パパの左雍は最終的には太原(たいげん)の相・弋陽太守(よくようたいしゅ)まで

出世しています。




 

構想十年、「三都賦」を完成させるが評価されず

 

左思には吃音がありましたが、言葉の華麗な修辞にたけていました。

人との交友を好まず引きこもって暮らしていましたが、妹の左棻(さふん)が文才を

買われて(兄同様に文才があったんですね)晋の初代皇帝司馬炎(しばえん)

後宮に召されてから、左思も洛陽に引っ越しました。

 

この頃から「三都賦」の構想があったのか、

洛陽で著作郎(ちょさくろう)の張載(ちょうさい)を訪問し

て蜀(しょく)の様子を取材しています。

また、見識を広めるため秘書郎(ひしょろう)の職につきました。

 

家中の庭からトイレから、いたるところに筆記具を置き、いい句が思いつくとすかさず

メモをするという暮らし。構想十年にして、ようやく「三都賦」が完成しました。

しかし、最初は誰も評価してくれませんでした。

 

日々の生活を工夫で楽しくする『三国志式ライフハック

 

物の真贋の分らぬ輩の目を開かせてやるために有名人からコメントをもらう

 

左思は自分の作品に自信を持っており、「三都賦」が誰にも評価されないまま埋もれる

ことを恐れていました。そこで高名な学者の皇甫謐(こうほひつ)を訪問して読んでもらい、

序文を書いてもらうことに成功しました。

 

また、張載に「三都賦」の「魏都」の部分に注釈をつけてもらい、

劉逵(りゅうき)に「呉都」と「蜀都」の序文を書いてもらいました。

司馬相如(しばしょうじょ)だの班固(はんこ)だのと、いにしえの名文家にたとえながら

褒めちぎってもらい、「三都賦」はようやくヒットしました。

 

爆発的なヒットで紙の値段が上がる

※グラフは出鱈目です。

 

司空(しくう)の張華(ちょうか)が「三都賦」を読んで感嘆し、

「班固や張衡(ちょうこう)のような名文だ。

いつまでも後を引く余韻があり、時が経つほどに新しい」と言ったこと

から大ブレイクし、豪族や貴族が競って筆写しはじめたために、

洛陽の紙の値段が高くなりました。

 

時に、呉(ご)の陸遜(りくそん)の孫の陸機(りくき)

自分でも三都賦のようなものを作ろうと考えており、

左思が三都賦を書いていることを聞いて小馬鹿にして笑い、

弟への手紙で「田舎者が『三都赋』を書いているそうだが、

古紙の再利用で酒甕のふたにされるのがオチだろう」と書いていましたが、

左思の「三都賦」を見て驚嘆し、どこにも手を加える余地がないと思い、

自分の賦を書くことを諦めました。

 

……ええ話やん。ここで終わったらええんちゃう?

と思いつつも、ここで終わらないのがよかミカンだ。

 

お待ちかね、ブサイクエピソード

 

三国時代とその前後の有名人の面白話集『世説新語(せせつしんご)』には、

美男子の潘岳(はんがく)のエピソードと並んで左思のブサイクエピソードが

記されています。

 

潘岳は容姿が美しく顔つきも素敵でした。若い頃、弾弓を挟んで洛陽の通りを行くと、

行き会う女性たちは手に手を取って彼を取り囲み、果物を投げてきた(気になる異性

に果物を投げるのは古代中国の愛情表現)ため、馬車いっぱいに果物を積んで

帰りました。

左思は超絶ブサイクでした。潘岳のまねをして街をゆくと、おばあさんたちがこぞって

唾を吐きかけてきたため、くたびれはてて帰りました。

 

唾というのは、お化けに吐きかけるものです。

イケメン潘岳には果物が、ブサメン左思には唾が飛んできたのですね。

訳文で「超絶ブサイク」と書いてある部分、原文では「絶醜」と書いてあります。

 

 

三国志ライター よかミカンの独り言

 

最後に左思の「三都賦」のさわりの部分だけでも鑑賞したかったのですが、

紙幅の都合上割愛します。

『文選(もんぜん)』に載っているので読んで下さい。(気軽に言う!)

電子媒体だから紙幅とは言いませんか。電子でブレイクしても紙価を高からしめないんですね。

サーバーを重からしめる、ですか。

 

「三都賦」もいいですが、私は左思の「嬌女詩(きょうじょし)」が好きです。

自分の娘たちの様子を愛情の籠った目線から生き生きと描写している詩で、

あれを読んだら左思のことちょっと好きになっちゃいます。ブサイクでも。

 

左思は名門の出でもなく容姿もすぐれずしゃべりも苦手で、

渾身の賦を作るのに十年もかけちゃう不器用な人で、やっと完成した作品もなかなか評価されず、

それでも自分の作品を信じてなりふりかまわず売り込みに行ったというど根性の持ち主でした。

そんな生き様。やっぱりちょっと好きになっちゃいます。ブサイクでも。

 

はじめての三国志:全記事一覧はこちら

関連記事:【はじビアの泉】現在の漢詩は曹操が造った?文化人曹操の功積

関連記事:はにゃ?これ名詩なの?三国時代の詩が難解すぎる件

 

■古代中国の暮らしぶりがよくわかる■

 




 

よかミカン

よかミカン

投稿者の記事一覧

三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。

個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。

三国志小説『ショッケンひにほゆ』

【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】

何か一言:
皆様にたくさん三国志を読んで頂きたいという思いから わざとうさんくさい記事ばかりを書いています。

妄想は妄想、偏見は偏見、とはっきり分かるように書くことが私の良心です。

読んで下さった方が こんなわけないだろうと思ってつい三国志を読み返してしまうような記事を書きたいです!

関連記事

  1. 【諸葛亮のノアの方舟計画】長坂での別行動は劉備軍温存?
  2. 蜀は古代から独立王国だったって知ってた?
  3. 楊貴妃と玄宗が愛を育んだ温泉地華清池によかミカンが行ってみた
  4. 周瑜、孔明、劉備、曹操 それぞれの列伝・正史三国志 かつて日本で大流行したカリスマコメント付き三国志が存在した!
  5. 【出身州別】三国志キャラの性格診断 第四回:幽州(ゆうしゅう)、…
  6. 【よかミカン紀行】甘寧がブイブイいわせてた重慶ってこんな街!
  7. 儒者に騙されるな!黄巾の乱は義挙だった?
  8. 徐庶 【徐庶ママ酷すぎ】息子の評価が軽くグレるレベル

google検索フォーム

過去記事を検索できます

ピックアップ記事

  1. 明智光秀 麒麟がくる
  2. 田畑政治 いだてん
  3. 女と金
  4. 真田丸 武田信玄

おすすめ記事

  1. 【意外】日本人のほうが三国志を原文で読めるって知ってた? 李儒と三国志
  2. 「刀狩り」とは何?豊臣秀吉が行った有名な政策とその目的とは? 豊臣秀吉 戦国時代
  3. 実は笑い上戸のちっこいオッサン? 『曹瞞伝』に見る曹操像 笑う曹操
  4. 【はじめての孫子】第12回:卒を視ること嬰児の如し、故にこれと深谿に赴むくべし。
  5. 【三国志入門者向け】三国志の魏・呉・蜀を建国した君主っていったい誰?
  6. 三国志の著者・陳寿のミステリー 後編:三国志はどうやって完成したの?

三國志雑学

  1. 劉備と4人の妻
  2. 龐統
  3. 泣く子も張遼
“はじめての三国志150万PV" はじめての三国志コミュニティ総合トピック
“広告募集"

はじめての三国志 書籍情報

朝まで三国志 三国志最強のワルは誰だ (桃園出版 三国舎)

著:kawauso 価格480円
※Kindle読み放題対応

ピックアップ記事

  1. 劉備とサンタクロース
  2. 張魯
  3. セイリュウ刀と蛇矛 張飛

おすすめ記事

餃子を食べれば耳たぶが生えてくる?中国のお正月を分かりやすく紹介 曹嵩 曹嵩(そうすう)はどこの誰なのか?徐州大虐殺の切っ掛けにもなった曹操の父親 考える諸葛亮孔明 蜀を制圧したばかりの劉備軍をまとめるために孔明が打ち出した二つの方針とは? 鮮卑族は敵?味方?くっついたり離れたりする異民族を解説 孔融 孔融梨を譲る!いちばん小さな梨を取った孔融の兄弟愛 三国志の魏、呉、蜀で頭の良い軍師は誰だ?ランキング化するよ! 赤壁の戦いに曹操軍が敗北した原因って実は火計じゃなかった!? 【8月の見どころ】8/27公開予定:本当は嫌なヤツだったかも知れない五丈原の費禕に迫る

おすすめ記事

  1. 河井継之助とはどんな人?近代日本を進めた改革者 幕末 大砲発射
  2. 三国時代の意識の高い役人たちが持ち歩いた七つ道具とは
  3. 第12話:袁術くん「傾聴」を孫堅から学ぶ 袁術
  4. 曹操の徐州大虐殺の真相には諸説あり?
  5. 図解でよくわかる夷陵の戦いと趙雲の重要性
  6. 【祝】 山崎賢人主演で漫画「キングダム」実写化!キャスティングを大胆予想
  7. 「月刊はじめての三国志2月号」1月25日(金)に出版決定
  8. 【お知らせ】はじめての●●を追加しました

はじさん企画

袁術祭り
李傕祭り
帝政ローマ
広告募集
まだ漢王朝で消耗してるの?
HMR
ライフハック
君主論

ビジネス三国志
春秋戦国時代
日常生活
曹操vs信長
架空戦記
ライセンシー
北伐
呂布vs項羽
編集長日記
はじめての三国志TV
“曹操孟徳" “黄巾賊" “赤壁の戦い" “THE一騎打ち" “夷陵の戦い" “kawausoのぼやき記事" “よかミカンのブラック三国志"
“西遊記"

“三国志人物事典"

PAGE TOP