初期の歴史シミュレーションゲーム三國志の世界観における最強武将・呂布と最弱武将・曹豹。この二人、三国志演義のなかでは婿と舅という間柄です。
最強と最弱という でこぼこコンビ。このお二人の馴れ初めはいったいどういうものだったのでしょうか。三国志演義より前に書かれた「三国志平話」に興味深い記述がありました。
歩兵隊長・曹豹、颯爽登場!
「三国志平話」における曹豹の初登場シーンは虎牢関の戦いです。都で権勢を振るい、傍若無人な振る舞いの目立っていた董卓に対し、諸侯が「反董卓連合」を結成して董卓軍と対峙した戦いです。董卓の懐刀でバケモノレベルの武勇を誇る呂布に対して、連合軍はたじたじ。盟主の袁紹が「誰か呂布と戦う者はおらぬか」とたずねます。
そこで颯爽と名乗りを挙げたのが、我らが曹豹先生。徐州太守陶謙の配下で、歩隊将という肩書きです。「私が呂布と戦い、呂布を捕らえて参りましょう!」勇ましい発言に喜ぶ諸将。曹豹先生、最弱武将なのに大丈夫なんでしょうか。すごい自信です。
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呂布との決戦
かくして呂布との決戦に臨むことになった曹豹。決戦の描写はひどく簡単でして、先ほどの勇ましい発言に諸将が喜んだという記述に続き、こう書いてあります。
上馬対陣 吕布捉曹豹 (馬に上りて対陣す。呂布 曹豹を捉う)
どうやら瞬殺だったようですね。馬に乗って向かい合うやいなや呂布にひっつかまったかのような書き方です。二時間足らずで敗残兵が陣営に戻り、呂布が一合で曹豹を捕らえたと報告しました。盟主の袁紹がこれを聞いて驚いていると、またも他の者から報告が入ります。
「呂布が曹豹を釈放しました!」
えらく簡単に釈放したものですね。雑魚すぎていらねえやと思ったのでしょうか。陣営に戻った曹豹は、諸将にこんな話をしました。
「呂布の鋭鋒は当るべからざるものだ。呂布はただ十八鎮の諸侯を捕らえるのを待つばかりだ」
これを聞いて諸将たちはみな不安にかられました。自分がやられたからって、相手の強さを強調して自分への追求の目をそらし、その結果 味方の動揺を招くという、ヘタレの曹豹先生。憎めません。
お手紙一本で呂布を呼びつけることができる仲
曹豹の次の登場シーンは、徐州の留守を預かっている張飛に鞭打たれる場面です。三国志演義ではここが初登場になっていますよね。お酒なんて飲まずに一生懸命徐州を守らなければならないはずの張飛が、お酒を飲んで酔っ払っています。三国志演義では、張飛が曹豹に酒を無理強いして、断った曹豹に張飛が腹を立てて鞭打ち、恨みに思った曹豹が娘婿の呂布に連絡をして徐州を奪わせます。
三国志平話ではいきさつが少し違っていまして、前の徐州太守の陶謙が張飛の兄貴分の劉備に徐州を譲ったことに対して、曹豹はもともと不満を抱いているという設定です。
徐州の留守番をしている張飛が毎日酒びたりでまともに政務をみないため、曹豹がいさめると、張飛は逆ギレして曹豹を鞭打ちました。これを恨んだ曹豹が娘婿の張本という人に手紙を託し、呂布のところへ手紙を届けさせました。それを受けて呂布が徐州に攻め寄せ、曹豹が城門を開けて呂布を引き入れ、呂布に徐州を奪わせました。
三国志演義では呂布が娘婿、三国志平話では張本という人が娘婿で呂布へのメッセンジャ-。こういう違いはありますが、いずれにしても、呂布と曹豹は手紙一本ですぐに意を通じることのできる仲だったのですね。
曹豹と呂布はいつの間に仲良しに?
三国志演義では何の前振りもなしに「娘婿」ということになっていますが、三国志平話では虎牢関で敵同士だった二人。いつの間に仲良しになったのでしょうか。
それについてはどこにも書かれていませんが、虎牢関で意気投合したのだと考えるとちょっと面白い気がします。弱いくせに挑んできた曹豹を呂布が馬上から片手を伸ばしてひょいっとお持ち帰りして、陣営に連れ帰って少しお話ししてみたら、武力も気性も正反対すぎて互いに相手のことを面白い人だと思って仲良くなった。こんな馴れ初め、ちょっぴり素敵じゃないですか!?
三国志ライター よかミカンの独り言
三国志演義の婿と舅という間柄も面白いですね。人中の呂布と讃えられた最強武将が、ちんちくりんの最弱武将を舅どのと呼んで敬う。いい絵です。最強の呂布が最弱武将の娘さんを下にも置かずにちやほやする姿なども、想像するだに面白いです。呂布と曹豹、この最強と最弱の絆が気になってしょうがないです。最近の歴史シミュレーションゲーム三國志では、曹豹、最弱じゃないんですけどね……。
【参考文献】
翻訳本:『三国志平話』二階堂善弘/中川諭 訳注 株式会社光栄 1999年3月5日
原文:维基文库 自由读书馆 全相平话/14 三国志评话巻上(インターネット)
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