大人気春秋戦国時代漫画キングダム、現在は趙峩龍の主である藺相如の中華統一の遺言が話題になっています。
一方で中華統一なんか秦の昭王の時代から六大将軍とかがいて、各国を切り取っているんだから、秦にとっては改めて言われる程の事ではない。
藺相如じゃなくても、七国をまとめて中華統一を目指した武将はいたに違いないそんな意見も見受けられました。
ですが、そのような意見は秦王政が目指した中華統一と、それ以前の殷や周の統一を混同しているのだと思います。
ここでは、秦王政が目指した中華統一とそれ以前の中華統一がどう違うのかを解説してみたいと思います。
キングダムファン向け:キングダムに関する全記事一覧
関連記事:キングダム598話ネタバレ予想vol2「次に飛信隊に死者が出る戦場は?」
この記事の目次
キングダム599話ネタバレ予想 廉頗が口にした中華統一とは
中華統一のキーワードについては、すでに山陽攻略戦で廉頗が口にしています。
王騎の矛を継いだという信に対して、本気でかつての信の六将や、三大天を超える大将軍を目指すなら
これまで六将や三大天が成し得なかった大業、中華の統一を成し遂げ伝説を塗り替えてみろと発言したのです。
こうしてみると、中華統一なんか廉頗みたいな脳筋っぽい将軍さえ口にするんだからどこが凄いのか分からないという意識にもなるでしょう。
廉頗は藺相如とは刎頸の友なので、かつて中華統一について語り合った可能性もありますが、それでも廉頗の考える中華統一と
秦王政が考えている中華統一には大きな隔たりがあると思います。
キングダム599話ネタバレ予想 藺相如の考える中華統一とは?
藺相如は中華統一について、まだ時期尚早というコメントを残しています。
それは、秦の六大将軍がブイブイ言わせていた時期、漫画に限って言えば現在の秦より強い時代の秦に対してでさえそういう認識なのです。
どうして、そういう認識になったのでしょうか?
そこには、ただ戦争が強いだけでは中華は統一できないという藺相如の認識があるのだと考えます。
秦の昭王の時代の中華統一とは、単に昭王が六大将軍を使い武力により六国を従わせて秦が殷や周に成り代わり中華に君臨するという意味です。
ところが、そんな統一は結局、武力の源泉である六大将軍が死ぬか、推進力になっていた昭王が死ねば元の木阿弥になってしまいます。
実際に、六大将軍が次々に戦死、病死し昭王が死んだ途端に、あれほど強かった秦は退潮期に突入しました。
藺相如の言う時期尚早とは、それを意味しているのです。
「確かに六将は強い、しかし、それだけでは足りぬ」というのが藺相如の時期尚早の真意でした。
キングダム599話ネタバレ予想 中華統一とは王を滅ぼす事
藺相如や秦王政が考えている中華統一とはその前の周の統一とは違います。
周は殷の紂王を滅ぼした周の武王が、その時に手柄を立てた太公望や、弟の周公旦や、各地の諸侯に
それぞれ公・侯・伯・子・男の爵位を与え同時に領地を与えて自治を認めました。
太公望は斉の土地を与えられ、周公旦は魯の土地を与えられます。
燕の建国者は、召公奭という人で殷を滅ぼすときに手柄がありました。
趙や魏や韓は、元々あった超大国、晋を乗っ取って三分割して出来た国ですがその晋を建国したのは、周の成王の弟の唐叔虞でした。
楚に関しては、周が任命したものではなく勝手に王を自称したりしたのでちょっと除外ですが、周の中華統一とは自分の為に働いてくれた
兄弟親類や部下に土地を与えて自治を認め事実上の「王」に封じる事で達成されました。
しかし、こうして、周によって土地を与えられた実質上の王達が未来永劫
「ははぁー周王様ありがたやーいつまでも忠誠を尽くします」
とはならなかった事は、キングダムを見ると分かります。
紀元前770年に暗君だった周の幽王が犬戎族の侵攻により殺害され周が遷都した辺りから、周辺国は弱体化した周を侮り
好き勝手に周辺に攻め入り領土の拡張を開始したわけです。
それが500年続いた事から春秋戦国時代になるわけです。
秦王政は、「周が親類縁者や部下に土地を与えて自治を認めたのが間違い」だと断じて六国の王を全て滅ぼす事を決めました。
周と秦は真逆で周は部下に土地を与えて「王」とし自治を認めたのに対し秦王政は各地の王を滅ぼし、部下も王にはしないと決めたのです。
キングダム599話ネタバレ予想 中華統一は皇帝一人による専制
秦王政は、六国を滅ぼした後には、王ではなく官を置くとしています。
官とは役人で、数年間土地を統治すると人事異動で他所に移ります。
こうすれば、官が何十年も土地に居ついて、土地の豪族と縁組したりし勢力を築く事を阻止する事が出来ます。
さらに、官は自分の好き勝手に土地を統治する事が許されません。
統治は、秦王政が制定した法律に従って行われます。これが狭い意味での法治主義です。
史実においても漫画においても、この法を定めるのは李斯でしょう。
役人はかつての王のように、独自に法を定める事も何十年も一つの土地に留まる事も出来ず、ただ皇帝の代理として数年毎に土地を渡り歩くのです。
こうすれば、皇帝以外に権力が集まる事もなく反乱は起こらないというのが秦王政や藺相如が考える中華統一でした。
キングダム599話ネタバレ予想 滅ぼされない為に必死になる六国
しかし、すでに権力を握ってしまった六国にとっては秦王政の中華統一プランは悪夢以外の何者でもありません。
やっと掴んだ王の地位が秦によって脅かされ負けたら滅ぼされるのです。勢い、秦に対する六国の抵抗は史上最も熾烈になります。
藺相如は、だからこそ中華統一の剣は誰よりも強くないといけないと断言し、その任に負えないものは殺せと藺相如に遺言したのです。
中華統一の道は血にまみれていて、それでも中華は統一を欲しているその血みどろの中で無意識のうちに中華統一に邁進する将軍達は、
国は違っても同じ同志だと藺相如は達観してしまったわけです。
このように考えると藺相如の中華統一は、ただ喧嘩が強いヤツが束の間、天下を束ねるという事とは次元が違う事が分かります。
キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言
始皇帝によってやり遂げられた中央集権制は、皇帝以外の領地支配者、「王」を滅亡させる事で達成されます。
その後の中国では、国が乱れると各地に王や皇帝が乱立し、統一の時には、皇帝専制になるというサイクルが確立します。
つまり、始皇帝の統一以来、周の時代までの封建制は時代遅れとして常に否定され続けたのです。
中国の統治体制は、最期の清朝まで始皇帝の考えた中央集権制で引き続き統治された事を見れば、いかにその中華統一が
高い先見性を有していたかが分かります。
前回記事:キングダム599話ネタバレ予想「藺相如の二つ目の遺言を大予想」
キングダムファン向け:キングダムに関する全記事一覧
関連記事:キングダム598話ネタバレ予想ガチリアルに漫画の流れを予想する