蜀の大敗北と言えば夷陵の戦い、諸葛亮ですら止められなかった戦いです。
しかしその始まりは樊城の戦い、関羽が敗北して斬首された戦いですが、この戦いではあの有名軍師、諸葛亮孔明は何をしていたのでしょう?
今回は樊城の戦いでは殆ど出番がない、諸葛亮の動きを探っていきたいと思います。
樊城の戦いでの諸葛亮・演義では
樊城の戦いと言うと関羽のイメージが強く、実際に色々な意味で最後まで大活躍しますが、三国志演義に注目するとここでしっかりと諸葛亮の活躍も書かれています。
演義の諸葛亮と言うと奇策の連発をする神がかっている軍師であり、ここでもその凄まじい戦略眼を見せてくれる…と思いきや、実は単純極まりない作戦を打ち立てるのです。
その作戦とは「敵の機先を制す」というもの。
当時、荊州の北部は魏の領地であり、ここにある樊城には魏の将軍の一人、曹仁が守っていました。
曹仁は優秀という言葉では収まらない才覚を持った武将であり、今までにも呉の周瑜が攻めてきた時にも見事樊城を守り抜いています。その樊城を関羽にいきなり攻撃させることで、敵を動揺させてその勢いのまま攻め上がっていく…ということですが、ここで驚きなのは作戦ではありません。
諸葛亮は呉と魏の同盟を知っていた?
なんと諸葛亮は、この時点で呉と魏が裏で同盟を結んでいることを知っています。なので二国が手を組んで攻撃してくる前にこちらから打って出ようという判断。
どうして諸葛亮がこの二国の同盟を知っているのか?というと実は間者を放っており、そこからこの事実を知っていたということになっています。
情報は力、特にこの時代だからこそ事前にできるだけの情報を集めておくのは常識であり、力そのものです。
しかしこの記述が出てくるのはあくまで演義のみ。
当然ながら正史では諸葛亮が樊城の戦いで作戦を立てている訳でもなければ、この時点では誰も呉と魏の同盟を知ってはいません。あくまで諸葛亮と言う存在の凄さを強調するための演出、と言えるでしょう。
正史三国志では諸葛亮は、樊城の戦いにノータッチ?
正史では諸葛亮の記述は、樊城の戦いには見られません。ここで樊城の戦いを少し振り返ってみましょう。
樊城の戦いが起こるのは荊州。荊州は山に囲まれて平原を持たず、他の国と戦いにくい蜀にとって重要な土地です。その荊州にある樊城を守っているのは曹仁、この武将の凄さは当時ならだれでも知っていること。
しかもこの樊城を落とすことで魏の中心部へ、最短アクセスで喰らいついていけることができるようになります。実際に樊城が落ちるかもしれないと思った曹操は遷都を考えたほどです。この重要な戦いを関羽だけに任せ、他の援軍も送らずにやらせています。このことを考えると、あまりに不用心すぎます。最初こそ呉と一緒に戦うと同盟を結んでいましたが、だからと言って用意が少なすぎるとは思いませんか?
諸葛亮は十分に用意をして、リスクを最低限にする戦いをする正統派の軍師です。その諸葛亮がこんな戦をしようとするでしょうか?これらのことを総合して考えると、諸葛亮は樊城の戦いにはほぼ関与していなかったと思われます。
諸葛亮の手の及ばない土地で起こった戦い
しかし実際に戦うとなると本来は太守である劉備に相談しなければいけません。ですが劉備に相談すると諸葛亮にも話が行きますから、もっと諸葛亮の手も及んでいたことでしょう。つまり結論から言うと、諸葛亮の手が及ばない、関羽の独断で戦いを始めたのではないか…と予想します。
関羽は漢中の戦いに参加できず、蜀の五将軍筆頭とされながらも長年荊州の防衛をさせられて手柄を挙げられることがありませんでした。だからこそ樊城、襄陽を落として魏の喉元に食らいつき、手柄を挙げたかったのではないかと思います。
結果こそ皆さんの知っている通りであり、そしてここから蜀の運命は坂を転げ落ちるようになっていくだけでなく、その後の諸葛亮の苦労にも繋がって行くことを考えると、やはり樊城の戦いは三国志の中でも大きく運命が変わる瞬間の戦いであると思います。
三国志ライター センの独り言
筆者としては、諸葛亮は樊城の戦いには関与していなかったのではないかと思います。
樊城の戦いでの敗北はあまりにも不用心、不十分すぎる準備と相まって、諸葛亮らしくない戦いであるからです。
対して関羽の他者に対する態度、高すぎるプライドの性格から考えると、この戦いの結果はあり得ることだと思うのですよね。
そんな風に戦いの内容や勝敗、事前準備の周到さから各武将の性格が分かるのも三国志がただの歴史のまとめではないという面白さであり、魅力であると思います。皆さんもその戦いに参加している武将たちを見ながら、もう一度三国志の戦いを振り返ってみて下さいね。
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