三国志で随一の武勇を誇った「天下無双」の男、呂布。
2度までも義父を殺し、裏切りを重ね、放浪の日々をよぎなくされていた呂布は、劉備が統治していた徐州を奪い、ここでようやく一国の領主となったのでした。
しかし、この大きな一歩こそが、自らを追い詰める一歩に他なりませんでした。愛馬の赤兎馬とともに戦場を所狭しと駆け回った呂布が、どのような最期をむかえたのかを紹介します。
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徐州占拠
兗州での曹操との戦いに敗れた呂布は、徐州の太守だった劉備の保護を受けました。しかし、『三国志演技』ではそこに曹操の意を含んだ朝廷からの勅命が劉備のもとに届き、袁術を討伐するように言い渡されます。
劉備は義弟の張飛に、「酒を飲まない、腹を立てない、兵士に暴力をふるわない」という言いつけを与えて留守を任せて、袁術討伐へと向かいます。ところが張飛は3つの約束をすべて破ってしまいます。
酔った張飛は、酒を断った曹豹に激怒し、殴りつけるという大失態をしでかします。曹豹は、従兄の呂布のもとへ身を寄せると、徐州を襲うなら今だと進言。
陳宮の勧めもあり、呂布は下邳を攻撃すると、劉備の妻子を捕虜にして、あっさりと手中に収めたのでした。
劉備、曹操を頼る呂布
妻子を人質に取られた劉備は、おとなしく呂布に降伏します。下邳の支城である小沛に劉備を入れ、呂布は徐州刺史を名乗ります。呂布は袁術から攻められた劉備を助けたりもしますが、曹操と袁術との関係を改善させると小沛を攻撃し、そこも自領とします。
追い落とされた劉備が助力を求めたのは、曹操でした。このときすでに袁紹を倒していた曹操は、精強な30万の青洲兵を自軍に入れ、中原に大勢力を築いていました。
謀反を起こされる側に
裏切りを重ねてきた呂布が、今度は自分が部下の謀反にあう番となります。『正史三国志』では、劉備から下邳を奪った同じ年に、ある軍勢にその役所が襲われます。
攻撃をしたのは、なんと反乱を起こした部下の郝萌。
城門が堅かったため、城は落ちず、呂布は厠の天井から妻とともに脱出し、高順の陣に逃げ込みました。
郝萌は部下の曹性に裏切られて片腕を失い、さらに高順の攻勢にあって討ち死。曹性に事情を聞くと、郝萌は袁術にそそのかされて下邳を攻撃したと説明した上、さらに共謀者がいると言います。
それは誰かと問いただす呂布に、曹性はこう答えます。
「共謀者は陳宮です」
その場に居合わせた一同の目が、一斉に陳宮に向けられます。当事者の陳宮はというと、赤面していました。どうやら事実だったようです。結局、この件について陳宮は責任を問われていません。呂布としては、有能な陳宮を失うわけにはいかなかったからなのかもしれませんね。
曹操、下邳を包囲する
郝萌の反乱はなんとか鎮圧し、劉備を小沛からも追い出した呂布でしたが、198年にとうとう曹操の軍勢に下邳を囲まれてしまいます。籠城戦に持ち込まれて、得意の騎馬攻撃も使えず、ただただ消耗していく呂布軍。
打開策を見いだせない呂布と軍師陳宮に対する諸将の不満が募っていきます。冬のある日に、侯成、魏続、宋憲は陳宮を縛り上げて、曹操軍に投降してしまいます。
それでも呂布は残った配下とともに、場内の白門楼で奮戦しますが、もう力が及ばないことを悟ります。武勇の人物らしく、敵軍に突っ込むかと思いきや、彼は楼から下りるとおとなしく捕縛されたのでした。
劉備が助命に異を唱え、処刑された呂布
正史では捕縛された呂布は次のように描かれています。曹操の前に引き出された呂布は、「縄目がきつすぎる。少し緩めてはくれまいか」と頼みますが、「虎を縛るのだからそうせざるをえないだろう」と曹操は答えます。
さらに呂布は「あなた様が歩兵を率い、呂布めに騎兵をお任せくだされば、天下の平定は容易になしとげられるでしょう」と自分を部下にするよう説得します。有能な武将には目がない曹操。一瞬、本気で呂布の案を考えます。
しかし、そこに割って入ったのが劉備でした。
「曹操様、この呂布めが丁原殿や董卓殿を裏切ったことをお忘れですか?」
「お前こそが信用ならない奴ではないか!」
これは、劉備が公孫瓚や袁紹、陶謙、呂布、曹操と次から次へと庇護してくれる人を変えてきたことを指摘したのでした。五十歩百歩な感じはしますが。それでも劉備の言葉で我に返った曹操は、呂布を殺すことを決意。
かつて曹操の軍師だった陳宮とともに、呂布は下邳で処刑されました。
三国志ライターたまっこの独り言
呂布の人物としての評価が低い理由には、度重なる裏切りに加えて、見苦しい死に方であったことも理由の1つなのかもしれません。
実に人間臭い武将だったのでしょうが、三国志の中で最強の武将なだけに、ちょっとがっかりな死に際だと、私も思ってしまうのです。
参考
『三国志人物外伝 亡国は男の意地の見せ所』 坂口和澄 平凡社新書
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