タイトルでも少し触れていますが、今回のテーマは荀彧とその死因とも言われている空箱です。荀彧は曹操の偉業に驚くほど貢献した優秀な人物ですが、その最期は謎に包まれています。
そしてその死因として、曹操から贈られたと言われる「空箱」があります。今回はこの空箱の逸話と合わせて、荀彧の最期に何があったかを少し考えて見たいと思います。
「荀彧 空箱」
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荀彧の死に至るまで何があったのか?
まずは荀彧の死の直前に何があったのか、それをもう一度確認してみましょう。
212年に曹操は孫権征伐に赴きました。この際に曹操は軍の慰労に荀彧を派遣してくれるように頼んだので、荀彧は後から合流します。三国志演義では色々と画策する荀彧ですが、正史を見てみると後方支援担当の政治家、蜀の諸葛亮のように働いていて、軍に同行するのは珍しいことです。しかしこの後に病気になって寿春に残り、そのまま亡くなりました。
この唐突な死から荀彧は良く最期に付いて論争されています。良く言われているのが曹操が空の箱を贈り、その箱から自分は用済みと言われたことを察した荀彧は自殺したとも……または以前に反乱に加担する手紙を受け取っており、それが露見して曹操に自己弁護をして煙たがれたとも言われ、この件は謎に包まれているのです。
荀彧は曹魏の功臣ではなかったのか?
荀彧の最期に付いて、荀彧は曹操と揉めていたとも言われています。荀彧はあくまで漢の臣下であり、曹魏を作ろうとする曹操とは対立していた説ですね。また荀彧は曹植と親しかったので曹丕とも不仲であった……という説もあるにはあります。
それを裏付けるように挙げられるのが、曹操廟の二十五功臣。これは曹操、曹丕の亡くなった後に行われたものですが、簡単に言うと建国に貢献した家臣たちを表彰しよう!というものです。そしてこの二十五功臣に荀彧は入っていない……これはあの最期に関係があるのでは?という一つの仮説ですね。
荀彧は確かに曹操に貢献していた!
と、ここまで挙げておいて何ですが、荀彧は曹操の家臣として貢献度はかなり上位です。正史三国志を見てみると分かりますが、列伝されている人数を見てみると魏の多さは他二国よりも遥かに多いです。魏には後漢末期の人間も含まれて入るのですが、なんとその数約180名。
比較すると蜀が約70名、呉が約100名であり、その中身の記録についても魏の多さは追従できないほどになっています。そしてこの魏の列伝、ずらりと並んだ曹操の家臣たちの一割以上が荀彧が推挙してきた人間なのですから、大変な貢献度でしょう。
曹操の飛躍を支えたのは、荀彧の人脈と言っても過言ではありません。また前述した二十五功臣ですが、賈ク、許チョ、于禁も入っていないのでどの辺を功臣、としたのかの基準があいまいに感じるのは否めませんね。そして何より、有名な逸話とは言え荀彧の空箱に関しては信ぴょう性がない、とも言われており、現代に至っても荀彧の死の原因は分かっていないのです。
荀彧に対する様々な評価
また荀彧というのは非常に評価されていた人物でもあります。陳寿も荀彧の才能と見た目をやたら褒めていますし、裴松之も「荀彧と賈クなんかと一緒の巻にまとめるのはおかしいだろ!」と言っているほど。ただし二人とも暗に荀彧は心から曹操に仕えてはいない、ということを匂わせてはいるのです。
ここから推測されるのは当時としても荀彧は自殺があり得る、曹操に追い込まれたのでは?漢王朝と曹操とで板挟みにあっていたのでは?と思われていたということです。もう少し突っ込むと曹操への批判材料として荀彧の死が利用された……とも考えられます。
個人的には荀彧は曹操に仕えたいという思いと、漢王室への忠誠と板挟みにあり、そこに過労働もあっての病死……諸葛亮と同じような結果もあり得るのでは、とも思いました。ただ色々な記録を追っていくと荀彧は誰からも褒められていて(曹丕とも普通に楽しく話したりしている)、そういう気持ちの良い人物であったのは確かなのだとも感じましたね。
三国志ライター センのひとりごと
筆者の個人的なイメージではありますが、荀彧は「面白い」人物であると思います。漢王室に仕えていたのか、曹操に仕えていたのか、曹操に仕えているとするならばどこまで付いていく気持ちでいたのか、荀彧はその最期も相まって、謎が深まるばかりです。
そういう想像ができることこそが、荀彧という人物の面白さだと思うのです。もし曹操が箱を贈ったなら、そこには何が入っていたのでしょうか。本当に空だったのか、何か入っていたのか、それとも箱を贈ってはいないのか。それを知るのは、今となっては荀彧のみなのですね。
参考文献:魏書荀彧伝
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