中国の歴史において、馬は最も重要な家畜のひとつでした。時には畑を耕す家畜として、時には軍事力の一部をなす軍馬として用いられてきました。そこで今回の記事では、そんな中国における馬について、現代の中国にはどのような種類の馬がいるのか、中国の在来馬というところに焦点を絞って調べてみました。
現代中国における馬
現代の中国においては、中国政府による賭博への規制が厳しいため、香港・マカオを除けば中国本土で競馬は行われていません。そのため、中国での馬産は砂漠や草原地帯での遊牧民による放牧が中心となっており、主に砂漠・草原地帯での移動手段や食用として用いられています。
現代中国における馬産の中心は、内モンゴル自治区と新疆ウイグル自治区であり、ともに乾燥気候下で農業に向かず、歴史的に見て草原地帯での遊牧が盛んな地域になっています。
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中国在来馬とは?
現代の中国で飼養されている馬は、ヨーロッパからもたらされたアラブ種やサラブレッド系のほか、「中国在来馬」とでも呼ぶべき中国特有の品種が存在します。その中でも、伊犁馬・河曲馬・三河馬は「中国三大名馬」と呼ばれており、国家や自治体による保護の対象となっています。次項からは、この「中国三大名馬」について詳しく見ていきたいと思います。
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伊犁馬
伊犁馬は新疆ウイグル自治区に位置する伊犁川流域で生産されている馬です。体高は約148cmほど、体重は410kgほどと、サラブレッドにも匹敵する大きな馬格を持つ品種です。
伊犁地方は乾燥した砂漠が広がっており、夏は高温になり、冬は厳しい寒さと降雪に見舞われる地域です。伊犁馬もそのような伊犁地方の厳しい自然環境に適応した強靭な足腰を持っています。
伊犁馬は持久力とスピードを併せ持った稀有な品種であり、1000mを1分10秒・1600m(およそ1マイル)を2分ほどで走る(サラブレッドは芝1000mをおおよそ50秒台後半、芝1マイルを1分30秒台で走る)一方、一日に80〜120kmを走破できるほどのスタミナを持っています。
さらに、伊犁馬は自分の体重とほぼ同じ400kg程度の荷物を曳くことも可能であり、そのパワーも卓越したものを持っています。現在、伊犁馬は新疆ウイグル自治区を中心に約10万頭が飼育されており、遊牧民の移動手段や農耕馬として出荷されるほか、食用にもされています。
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河曲馬
河曲馬は、青海省・甘粛省・四川省の境界をなす青蔵高原を原産地とする馬です。「河曲」という名は、この馬の原産地が、黄河の上流において黄河が大きく北にカーブするところに程近いことからその名が付けられたといわれています。
河曲馬は体高が約138cm前後、体重390kg前後とやや小ぶりな体格であり、頭が大きく胴が短いというずんぐりした体形をしています。河曲馬は体格が小さいこともあり、ほかの品種に比べて短距離のスピードには劣るものの、長距離を走破できるスタミナには長けています。さらに、河曲馬が生息する青蔵高原は標高3000〜4000mにもなり、酸素の薄いこうした高山に適応した高い心肺機能を持っているのが特徴です。
また、河曲馬は1頭の牡馬と10〜20頭の牝馬、そして仔馬からなる群れを形成する特徴があり、生活する際にはほぼ群れを離れることはありません。これは、狼などの肉食獣から身を守るための習性だと考えられています。
一方、群れの牝馬を巡って牡馬同士が争うこともしばしばあり、普段は温厚な河曲馬も牝馬を奪い合う際には激しい闘争本能をむき出しにすることもあると言われています。
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三河馬
最後は三河馬についてご紹介します。三河馬は内モンゴル自治区フルンボイル市の特産として知られており、モンゴル高原の在来馬とロシア馬の血を引くと言われています。この三河馬は体高150cm、体重450〜500kgとサラブレッドに匹敵する雄大な馬格が特徴的な馬です。
内モンゴルの草原で放牧されている三河馬は大自然の中でのびのびと飼養されており、中国政府の保護動物に指定されていることもあって厳しく保護されています。
馬にとってこの上なく素晴らしい環境である中国最大の草原で放牧された三河馬は温厚な性格である一方、豊富な栄養状態から体力にも長けており、とりわけ長距離を走破する持久力に優れています。
三河馬の速度は1000mを1分7秒程度とサラブレッドよりも短距離の走力は劣りますが、100kmを7時間程度で走りぬくスタミナを持っており、大草原を駆けまわる遊牧民にとっては理想的な馬となっています。
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三国志ライター Alst49の独り言
いかがだったでしょうか?
今回は知られざる中国の在来馬についてご紹介いたしました。モンゴルや中央アジアと同様、大草原の広がる中国は世界的な馬の産地としても知られています。広大な中国には、限りなく広がる大地に適応した様々な馬がいまなおいきづいているのですね。
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