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更にもう一つ「肉の柔らかさ」
そしてここでもう一つ、蜂蜜を肉料理に使った理由を考察してみました。それは「やわらかさ」です。皆さんは自家製の鳥ハム、良く知られる所ではヘルシーな鶏むね肉を利用した鳥ハムを食べたことは、もしくは作ったことはあるでしょうか?
この鳥ハムのレシピには基本的にお肉に砂糖、もしくは蜂蜜を塗り込みます。「えっ」と思われるかもしれませんが、こうすることでパサつきやすい鶏肉が柔らかく、美味しく仕上がるのです。
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蜂蜜の効能
一体どうしてかと言うと、まず糖には「親水性」があります。簡単に言うと水分と仲良くしやすい性質ですね、砂糖が保存していると固まるのは、この性質によるものです。このため肉の内部に浸透した糖分が、肉の保水性を高め、料理に使うとしっとり、柔らかく仕上がるのです。
更に火を通すことでカラメル化すると、肉の表面が覆われて旨味も逃がさず閉じ込めることができます。なので、蜂蜜を料理に使うというのは化学的にもプラスなポイントということになりますね。
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蜀の地
さて、動物は脂がのっていない、つまり痩せているとどうしても肉質が固くなります。調理すれば肉の水分が飛び、更に固くなって食べにくくなるでしょう。なのでそういう蜀の土地の動物の肉質を補うために、蜜や飴を使うことを蜀の土地の料理人は考えたのではないでしょうか。
そもそも蜀は立地からして外から物資を運ぶのも大変ですし、これが悪ければ代用を、という訳にもいきません。そういった条件の悪さが生み出した料理人の叡智、更に言うと蜀の土地の特色。これを曹丕は詔によって部下たちに伝えた……のかも、しれませんね?
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三国志ライター センのひとりごと
筆者は鶏肉が大好きなので鳥ハムは良く作ります。しかし砂糖をまぶさずに作ってみると、不思議とパサパサ。最初はそういうものか……と思って調べてみると、親水性という化学の領域であったか……と反省。
しかし三国志の時代には「親水性」というものは発見されていなかったことでしょう。それを考えると蜀の料理人たちはその土地で、旨味が薄く、固い肉を何とか美味しくしようと頑張っていたのでは、なんて考えてしまいました。
そういうバイタリティと食の追求性の高さは、魏と違って余り国土に恵まれていなかったから、と思うと、当時の人々の暮らしに何となく触れたような、そんな気がした筆者でした。
ちゃぷり。
参考文献:太平御覧
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