戦国武将の理想の上司ランキング、というのをメディアでしばしば目にしたことはありますが、三国志の理想の上司ランキングはあまり見たことがありません。それならば、本場中国ではあるに違いないと思い、知り合いの方数人に尋ねてみたのですが……
中国人の友人に好きな武将を聞いてみた・・・
なぜか私の周りには「趙雲」と答える人が続出。……みなさん、顔で選びましたよね!?サンプル数が少なすぎて、あてにならず、すみません。
そこで、普通に想像してみると、一番に名前が挙がりそうなのは、諸葛孔明、そして劉備あたりな気がします。特に、本人はいたって凡庸でありながらも、数々の英雄を従えた劉備は、理想の上司の名前にふさわしいのではないでしょうか。
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四川省の観光地『武侯祠(ぶこうし)』
かつての蜀の都であった四川省には、現在、三国志関連の遺跡はほとんど残っていません。その中で、あえて言えば、ここは外せないというのが『武侯祠(ぶこうし)』です。ここは、武侯すなわち諸葛孔明が祀られているやしろです。敷地面積は約3万7千平方メートルというので、かなり広大です。
この広い敷地内の最奥に諸葛亮殿があり、その前座に劉備殿があります。劉備の方が主君のはずですが、諸葛孔明の家に居候している感じです。また、この武侯祠には、劉備の陵墓の恵陵もあります。
墓にまで居候する劉備
お墓まで、諸葛さん宅に居候です。観光客のほとんども、目当ては諸葛亮殿であり、前座の劉備殿やまして陵墓などは、素通りする方も……。完全に主役は諸葛孔明、脇役が劉備の配置になっています。
しかし、当の劉備なら、これを見ても「いいよ、そんなの気にしないし」と笑顔で言ってくれるような気がします。劉備が三顧の礼で諸葛孔明を迎えたとき、あまりに年若く、実績もまったくない孔明を、劉備がやたらと重宝することに対して、義兄弟の関羽と張飛は難色を示しました。
すると劉備は、「俺にとって孔明の存在は、魚が水を得たようなものなんだ。だからみんな、文句を言わずに認めてくれ」と言うのです。堂々と皆の前で開き直られては、関羽も張飛もぐうの音も出ませんでした。劉備の人柄をよく表しているエピソードだと思います。ヒーロー凡庸説というのがあります。
実際に歴史を動かしたとされる英雄たちは、実は平凡な人で、ただ人を惹きつけるカリスマに優れていたという説ですが、劉備こそが、そんな人物だったのではないでしょうか。
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