歴史書である「三国志」(正史)をもとにした小説「三国志演義」。
「三国志」にはもちろん主人公という人は存在しませんが、「演義」では明確に「劉備」が主人公としての活躍を見せています。歴史的には勝者とは言い難い劉備がなぜ「三国志演義」の主人公に選ばれたのでしょうか?
この記事の目次
成り上がり!貧乏な環境で育った劉備?
小説の主人公には成り上がりがつきものです。劉備は正史三国志によると「漢の中山の靖王劉勝(漢の武帝の弟)の子孫」とされ、漢の皇室の血をひく者、とされています。
しかし、劉備の父は地方の身分の高いとは言えない役人であり、劉備が小さいころに亡くなってしまいました。その為、女手一つで育てられ、草履や筵などを売って暮らしていていました。当然、裕福な家庭ではありませんでした。
そんな劉備が将来は国の主となるのですから、まさに成り上がりの小説の主人公にはピッタリだったのではないでしょうか。
一方ライバルとされる曹操の父親は大金を朝廷に献金し、高い身分を得たとされる人物でその息子も裕福に育ったことは想像できるでしょう。これも「貧乏人」と「金持ち」の対比として劉備の主人公さを引き立たせています。
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人望があった劉備
正史によると劉備は「人に対しては謙虚で、喜怒を顔に表さなかった」とされています。そんな人柄を慕い、挙兵しようとした劉備のもとに多くの若者が競って彼の配下になっていきました。
大した身分でもない人物が挙兵できるほどの人材を集めることが出来たというならば、小説の主人公として活躍させたいと「演義」の作者が考えるのも無理はないかもしれません。
正史三国志のエピソードに、劉備が平原の役人を務めていたときに刺客を放たれたのですが、何も知らない劉備が刺客を手厚くもてなし、その刺客が感動したということもありました。それほど人を惹きつける魅力があったのでしょう。
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