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孔明は、藤甲を見て火に弱いと見抜く
敗れた蜀ですが、藤甲を持ち帰る事に成功します。孔明は、この鎧を一目みて、「これは水にも打撃にも強いが、油を塗る事で造られているから火に弱い」と見抜きます。そして、新兵器の地雷火(じらいか)を造り出す事に成功するのです。
新兵器 地雷火とは?
地雷火は、私達が考える地雷とは違い、木箱の中に、爆薬を詰めたもので、外から火を付ける事で引火して爆発するという仕組みになっていました。
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孔明、魏延(ぎえん)と馬岱(ばたい)に計略を授ける
孔明は魏延と馬岱を呼び、計略を授けます。それは、わざと敗北して退却を繰り返しながら兀突骨を盤蛇谷(ばんだこく)におびき寄せるというものでした。二人は孔明との打ち合わせ通りに、藤甲兵にぶつかっては敗走、ぶつかっては敗走を繰り返します。兀突骨は、すっかり蜀兵が弱いと侮り二人が逃げる方向に、追撃を繰り返します。
そして、馬岱と魏延が退却して十五回目、、今度は本格的に敗走した二人を兀突骨は見失います。しかし、目前の盤蛇谷には、蜀軍が放置したとみられる食糧と財宝が満載されていました。兀突骨は、怪しいとも思わず、全軍で盤蛇谷に殺到して、戦利品を奪いあいます。その中には、黒い柩のような箱に入った地雷火もありました。
兀突骨「なんじゃい?こりゃあ」
その時、大きな岩が、幾つも上から降り注ぎ、盤蛇谷の出入り口は完全に塞がれてしまいます。
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兀突骨と烏戈国の将兵、焼き殺される
ようやく、罠に掛かったと知り慌てる兀突骨ですが、もう手遅れです。崖の上には蜀の伏兵が現れ、火矢で地雷火に狙いを付けていました。
「はなてーーーーー!!」
無数の火矢が降り注ぎ、それは地雷火にも命中しました。地雷火は、炎を吹き上げて爆発、藤甲を着ている兵士は、その火が鎧に引火して次々に火ダルマになります。谷底は阿鼻叫喚の地獄絵図になりました。こうして、兀突骨と烏戈国の将兵、三万人は数時間で焼死して全滅したのです。
孔明、自分がした事に恐怖する・・
孔明は、焼け死んだ烏戈国兵の断末魔の様子を見て恐怖しました。
孔明「敵とは言え、惨い殺戮をしてしまった・・私はこの報いで長寿する事は出来ないだろう・・」
三国志演義は、この伏線で五丈原で病死する孔明を暗示しています。
兀突骨は、全くのフィクションなのか?
兀突骨は、後漢の尺では276センチ、魏や晋の尺では289・2センチという考えられない巨人であるとされています。では、このような巨人は実在しないのか?というとこれが実在したのです。
実在の巨人、ロバート・ワドロー272センチ
1918年から1940年まで生きた、アメリカ人のロバート・ワドローは、その医学的な見地から疑いようがない身長としては世界一の272センチという人類で一番高い身長を記録しています。後漢の尺でいうと、兀突骨より4センチ低いだけです。彼の場合には、自然な巨人ではなく脳下垂体腫瘍の持病があり通常は成人したら止まる、成長ホルモンが過剰分泌された事が原因だと言われています。それに急激に伸びすぎた身長のせいで、副木が無いと歩く事も困難でしたし免疫力も低下して何度も病気に罹っています。その死因も、副木が皮膚に擦れた部分が炎症を起した事が原因でした。一般にロバート・ワドローのような巨人は長生きできない事が多いようです。
「生前非常に温厚で、誰からも愛された人物と知られている。
彼の飛びぬけた長身ぶりを疑った野次馬に足を何度も小突かれて大声で怒鳴ったこと以外怒ったことがなかったという」
(引用元:wikipedia ロバート・ワドロー)
巨人症により大きくなった人が歴史には実在した
現在も、過去にも、巨人症のような病気により成長ホルモンが停止せず、体が大きくなり続ける人達は存在しました。日本でも江戸時代に、生月鯨太左衛門、(しょうげつ・くじらたざえもん)釋迦ヶ嶽雲右エ門(しゃかがだけ・くもえもん)のような力士に2m越えの巨人が存在していましたし、その身体的な特徴から、彼等の逸話は眉唾からリアルなものまで事欠きません。そんな人々の巨人ならではの伝説に尾ヒレがついていき、三国志演義では、南蛮の巨人、兀突骨のような存在が造り出されたのではないでしょうか?