三国志演義において、曹操(そうそう)は関羽(かんう)の死後現れるようになった亡霊に悩まされ健康を損ねたとされています。死んだ関羽の亡霊が現れるとはいかにもフィクションのようにも思えますが、どうやらこの記述、医学的には意外に正確であるようです。
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曹操が患ったとされる病気とは?
曹操が患ったとされる病気は史書などの表記から、おそらく脳腫瘍であったとされています。三国志演義では、名医・華佗(かだ)から頭の切開手術を勧められた曹操は怒り、華佗が関羽のケガの治療をしたことから、彼が関羽の手の者であり自分を害しに来たのだと妄想、華佗を拷問の末殺してしまいます。
実際に華佗が曹操の病気を脳腫瘍であると断定していたかどうかは定かではありません。また、脳腫瘍は現代の医学でも外科的な手術で治療することが難しく、脳腫瘍を治療できたかどうかは疑問です。
曹操が被害妄想を抱いたのは脳腫瘍のせいだった?
この三国志演義の記述を医学的に見ると、曹操が脳腫瘍を患っていたことを示しているように見えます。脳腫瘍は出来た部位によって、さまざまな精神的症状を起こすことが知られています。
これは脳の中にできた腫瘍がその部位の脳細胞を圧迫・刺激し起こるもので、例えば前頭葉に生じた腫瘍が躁状態を引き起こすこともあるようです。
曹操の持病とされた頭痛も脳腫瘍の典型的な症状であり、つまり、史書と演義の双方の記述が、曹操の病気が脳腫瘍であったことを示していると言えるでしょう。
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脳腫瘍が引き起こすもうひとつの症状:幻覚
脳腫瘍が引き起こすもうひとつの症状として幻覚があります。一言に幻覚といっても、腫瘍の生じた部位によってさまざまな症状に分かれるようですが、脳腫瘍の幻覚症状として有名な事例に“ドッペルゲンガー”があります。
ドッペルゲンガーは自分とそっくりな人間と出会うという現象で、その『もうひとりの自分』を見てしまった人は死ぬと言われています。一般的にはオカルト的な現象と思われがちですが、実は医学的にこのドッペルゲンガーが発生する仮説が存在します。
脳腫瘍が側頭葉と頭頂葉の境界領域に生じた場合、自分の身体を認識する感覚が失われて自分が身体から乖離しているように感じられることがあり、このことが『もうひとりの自分を見た』=ドッペルゲンガーという現象として自覚されるというのです。
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