シールズの国会前デモや強行採決で話題になった、
安全保障関連法案、いわゆる安保法案ですが日本の防衛に必要という人と、
いやアメリカの戦争に巻き込まれる!という人で意見が二分しています。
鋭く、日本社会に目を向けている『はじめての三国志』では、この安保法案を
三国志に例えて解説しようと思います。
この記事の目次
そもそも、安保法案って何なの?
安保法案とは、正式には、安全保障関連法案といい、実は1つではなく、
新しく造られる「国際平和支援法案」と自衛隊法の改正など、
10種類の法律の改正案をパッケージしたものです。
主な内容としては、集団的自衛権を認める事や、自衛隊が活動できる範囲や
武器の種類を増やす、有事の際に国会で自衛隊出動に関する議論時間を短縮する、
在外邦人の救出や、米軍艦船の防御を可能にするなどです。
安保法案を三国志で例えると・・
強引ですが、三国志で安保法案を例えると
強大化する曹操(そうそう)の魏に対抗する為に、
呉蜀軍事同盟と考えていいでしょう。
その軍事同盟の中には、呉軍が攻撃されたら劉備軍が救援する事や、
魏が攻めてきたら、宮中での議論をすっ飛ばして、即座に
双方に援軍を派遣するなどの取り決めがあるとします。
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安保法案のメリットは?
安保法案が制定された背景には、高まる隣国、北朝鮮や、
中華人民共和国の日本への武力攻撃のリスクに対応する為があります。
これまで、日本では集団的自衛権を有しているが行使できない
という憲法上の縛りがあったので、在日米軍がいても、共に
戦うという事は出来ない状態にありました。
安保法案が可決すれば、世界最強の米軍と自衛隊が共同して、
北朝鮮、中国の脅威に対抗でき、日本はより安全になるというのです。
さらに、これまで日本は平和憲法による縛りで、お金は出しても
兵力は出せないという状態にあり、アメリカとしては、
日本にお金だけでなく、兵力や輸送面でも協力してほしいという要望があり
このアメリカの声に日本政府が応えたという側面もあります。
安保法案を三国志に例えると・・
この日本の立場は、劉備軍にあてはめると分りやすいです。
劉備と孫権の同盟とはいえ、事実上、曹操と戦えるのは孫権だけで、
長坂橋の戦いで兵力の大半を失った劉備は、周瑜(しゅうゆう)の船団にくっついて
見ているのが精いっぱいでした。
そこは、孫権からすれば不満で、
「俺達だけ血を流すのは不公平だ」と思うのも仕方ないでしょう。
そこで、劉備も、じゃあ、無傷の関羽(かんう)の水軍を手伝わせますとか、
張飛(ちょうひ)も出しますとか、そう言って孫権の機嫌を取るわけです。
安保法案の問題点とは?
これまでの話を聞くと、特に問題もなさそうな安保法案ですが、
一方で、アメリカ軍に引きずられ、日本と関係ない戦争にまで、
巻き込まれるのではないか?という意見もあります。
それが、法案に盛り込まれた存立危機事態という条文の、
曖昧な内容なのです。
「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、
これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び
幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」
上記のような状態に日本が陥った場合に、新しい安保法案では、
自衛隊は武力行使も防衛出動も出来るとされています。
でも、この文言では、そもそも我が国と密接な関係がある国とは
どこを指しているのか、それによって、どうして日本の存立が
脅かされるのか?という基準がとても曖昧なのです。
この条文を忠実に実行するなら、同盟国のアメリカが、
アメリカ本国でテロリストに攻撃されても、日本の総理が、
「これはわが国の存立の危機であり、国民の生命、自由、
幸福追求の権利が根底から覆される明確な危険がある」
と宣言すれば、自衛隊をテロリストの本拠地と見なされる土地まで、
場合によっては、地球の裏側まで派遣できてしまいます。
何故なら、アメリカ本国には日本の企業も資産も日本人もいますし、
彼ら、日本国民の生命と自由と幸福追求の権利が、例えば、
テロリストによるアメリカ本国への攻撃で、根底から覆された
と認定できるからです。
三国志に例えると・・
この曖昧な条文を、三国志に例えると、
劉備が孫権との同盟を良い事に、好き勝手に曹操の領地を荒らしておいて、
「これは、蜀呉同盟に基づいて行った」と言ったようなものです。
孫権にしてみれば、「おいおいウチは関係ない!」ですが、
やられた曹操にしてみれば、孫権の言い訳など聞きません。
「劉備に取られた領土は呉から奪う」と兵力を出すでしょう。
日本政府の場合も、アメリカに加担して参戦すると、
テロリストにより敵とみなされ、
日本国内でテロが起きる可能性もあります。
このような事態を防ぐには、ただ、蜀呉同盟ではなく、
細かい部分まで取り決めて、法律を定める必要があるのです。
三国志ライターkawausoの独り言
安保法案については、全否定と全肯定ばかりが聞こえてきますが、
実際には、どちらも正確ではありません。
安保法案は、集団的自衛権を認めて、アメリカや同盟国と、
自衛隊が共同で軍事作戦を展開する上で必要ではありますが、
同時に、法案に縛りをきっちり設けて、相手に引きずられない
しっかりした内容にしないと、日本と関係ない戦争にまで
巻きこまれてしまうという事なのです。
そういう意味で、この安保法案には大きな問題があると
kawausoは思います。
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